2カ月に1度の病院詣で

　夏に翳りが出始めた頃から蜘蛛の活動が活発になって、家の周りは蜘蛛の巣だらけだ。不用意に歩こうものなら、頭と言わず顔と言わず蜘蛛の巣がべっとりつくっ付いて気持ちが悪い。手で拭っても上手く取れないくらい蜘蛛の糸って弾力があって粘性も多少備わっている。しかし母親が「朝の蜘蛛を殺してはいけない」とのべつまくなし言っていたこともあって、その教えはいまだ守っている。というか、母親のナンセンスな教えの中で今も破っていないのはこれくらいか（笑）。
　蜘蛛はお釈迦様の使いということもあって、夜に出会った蜘蛛も殺さない。そもそも女郎蜘蛛みたいな女性を好ましく思っている。しかし女郎蜘蛛みたいな女って、どういう女だ？　残念ながら出会ったことはない。
　今日は朝、メシ抜きでかかりつけの病院へ。定期的な血液検査と、それとは別に胃薬と睡眠薬を処方してもらうためだ。血液を採り、薬の処方箋を出してもらって会計を待っている間、暇なものだから待合室の血圧計で測定してみたら、最高血圧が101だった。ごはんを食べていないと低血圧になり、歩くのもしんどいくらい体調が思わしくなくなる。書店の最下段棚にある本の背表紙を見たあとに立ち上がると目眩がする、という因果な体質。
　昼から夕刻までずっと原稿の校正をしていた。まったく同じことをいったい何年やっているんだ、俺。来る日も来る日も一本道を漫歩しているだけの日々。
　途中で版元の編集者に今後の進行についての相談メールを書く。15分で親切な提言が書かれた返信があって、希望が湧いて来る。
　仕事がらみを利用して岡山と香川を旅行したが、無目的な旅を5カ月間していない。
　昨夜遅く、安い観光ホテルチェーンで、日にちや行き先さえ決めないまま、一人泊で空いている部屋を探していた。
　ホテルの無機的な一室で、タブレットに入っているしょうもない映画を、しょうもないなあなどと呟きながら観たい。そもそも無為な人生を送っているのだが、更なる無為な時間が欲しくて仕方ない。