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2023年07月02日15:43

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映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』作品レビュー

映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』作品レビュー

 ご存じハリウッドを代表する冒険活劇シースの第5作。シリーズ第1作の「レイダース」から実に42年。演じるハリソン・フォードは今年で81歳!
 タフガイ。それが冒険家で考古学者でもあるインディ・ジョーンズのイメージです。だがもはやタフでいることは難しそう。シリーズ最後というこの5作目で、ヒーローは自らの老いに、どう決着をつけるのでしょうか。
 けれども劇中のインディは意気軒昂。まさに老骨を“牛追いムチ”で打ち奮い立つのです。痛々しい姿は見たくない、と思うのは杞憂。人生1OO年時代に希望が持てる勇姿でした。

 冒頭は第2次大戦末期。ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)が持つ強大な力を秘めた「運命のダイヤル」を巡って、インディとナチスとの戦いが展開します。爆発、銃撃戦、格闘。走る列車の上で延々と続く激しいアクション。フォードもミケルセンも若くて驚きました。CGで若返ったというのですが、違和感は少かったです。鳴り響くレイダース・マーチは、改めて聴いても軽快で新鮮。何度聞いてもわくわくさせられますね。 
 時は流れ、1969年。年相応にだらしない裸体をさらし、老いたインディが登場します。妻は出て行って独り暮らし。朝のコーヒーにドボドボとウイスキーを注ぐ。独りだとこうなってしまいがちで、思わず共感しました。若き日とのギャップが残酷です。大学教授を引退する彼を、若い女性(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)が訪ねてきます。彼女はヘレナ。冒頭でインディとともにナチスと戦った友人の教授バジル・ショー(トビー・ジョーンズ)の娘です。父が研究していた運命のダイヤルを探していたのでした。

 ここからはアクションのつるべ打ち。インディ、ヘレナ、そして屈強な手下を引き連れたフォラーが、ダイヤルを奪い合って壮絶なチェイスを繰り広げます。米ニューヨークからモロッコ、そしてイタリア・シチリア島まで。車やバイクはもちろん、馬、船、果ては飛行機も使って。
 ここでフォードが老いを感じさせない活躍を披露。古き良き楽天的なヒーロー像はそのままに、激烈なチェイスシーンでスリルとユーモアを振りまくのでした。
 
 1作目の「レイダース」公開から40年以上。CGの進歩や編集のうまさもあって、フォードの動きは往年とほぼ変わらないように見えます。アクションは派手で激しく、テンポは速く感じられました。しかし、かつては目まぐるしいほどだったスピード感は、もはやありません。どこかのんびりしているのです。それがレトロな味わいとなっていて、むしろ好ましく魅力的に感じられました。

本作はシリーズの集大成的作品でもあります。ヘビの代わりにウナギの群れが襲うなど、過去のシリーズの名場面や設定が、形を変えて再現されています。セルフパロディーが楽しいところ。そしていつも通り、終盤はトンデモSF風になっていくのです。
 インディの行く手に人知を超えたオカルトやSF的な出来事が待ち受けるのもこのシリーズの魅力ではあります。けれども今回はとびきりスケールのでかいクライマックスを映像化。そして集大成として、いつもと違うのは、老いに決着をつけなければならないことでした。タフガイは選択を迫られるです。冒険か日常か。ロマンか現実か。過去か未来か。ラストには意外なほど、胸を打たれました。
 なにしろインディが生涯をかけて研究してきた歴史上の偉人に直面して、究極の選択を迫られるのです。まさにフォード版インディの有終の美を飾るにふさわしい幕引きとなりました。男はタフでなくても、生きていけるのですね。

 最後に、「トップガン マーヴェリック」のトム・クルーズとは異なり、フォードは老いを率直にさらけ出す在り方なのです。その人間味こそが素晴らしいと思います。序盤の、“若くなった”彼が示すCG技術にも驚かされますが、我々が喝采を送るのは生身で頑張るフォードの姿です。デジタル加工による映像の万能化か進むほど、むしろ俳優のアナログな唯一性が、映画らしさの重要な生命線となってくるのではないでしょうか。

 エンディングで奏でられるレイダース・マーチが、きっとご覧になる皆さんの老後の励みとなることでしょう。

公開日 :2023年6月30日[2]
上映時間:154分
https://www.disney.co.jp/movie/indianajones-dial


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