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2023年06月18日21:08

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ポペットバルブ制御の蒸気機関車達

蒸気機関車末期に各国で試されたポペットバルブ仕様の蒸気機関車、、もし蒸機があと20年延命出来たとしたら主流になり得たのだろうか、、

とりあえず、ポペットバルブとは自動車のエンジンなどに使われているタペットとバネを組み合わせてバルブを開閉する機構で、バルブタイミングは主にカムで制御される。蒸気機関車のエンジンは初期には滑り弁、後には大概ピストン弁で吸排気を制御していた。この場合吸排気の関係はフィックスでエネリギー利用の効率は最適化出来ない。ポペットバルブの利点は吸気と排気を独立して制御出来る点で、エネルギー効率を大幅に高める事が可能。但し、製造とメンテナンスコストは高くなる。

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南アで既存の蒸気機関車の燃焼排気系を最新理論に基づいて改造し、大きな成果を上げた英国人ワーデールは、1990年頃から英国で2Cテンダー機の新設計を実現させようとしているが、彼はポペットバルブに対しては懐疑的らしい。実用の見地からメンテナンスにかかる時間とコストを重視すると、ポペットバルブによる高性能化は割に合わないという考えらしい。英国型のカプロッティ・ポペットバルブは大半の機構を密閉して、蒸気機関車が使われる環境(煤煙とかでキタナイ)でも十分な実用性を確保出来ているので、設計とマテリアルの選択次第でメンテナンスはピストンバルブに匹敵するレベルにまで行けると思うんだが、、そのためには試作を重ねる必要があるだろう。だから蒸気機関車のバルブ機構を改善するのは時間切れで終わってしまったといえる。

ポペットバルブ機構はドイツ(プロイセン)鉄道でも1900年代前半からレンツ式が試用されてきたが、機構設計の未熟さとコスト高で通常の運用には向かないというのが一般的な論調だった。それでもオーストリアやオルデンブルクの鉄道ではレンツ式ポペットバルブ機構を大々的に取り入れた。
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オーストリアの114型と214型、1928年製。

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ニューヨークセントラル鉄道のS2型,1946年製。S1型と同設計でバルブ機構だけポペットに変更した機関車。

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英国LNER鉄道P2型。グレスレー設計ということになっているが、実際の計画はアシスタントだったブリード(後にサザン鉄道の主査に)。現在0から新たにレプリカの製造が進んでいる(既にLNERのA1を新製して運用している)。イギリスはそういった小回りの効くハイレベルな企業が多い。ポペットバルブは最新のノウハウで設計される。
https://www.a1steam.com/prince-of-wales/home

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英国国鉄の71000型。これは1954年製。設計の不備で計画通りの性能を発揮出来なかった。1962年に廃車。スクラップされる前に愛好家グループが買い取り、長い長いレストアが始まるが、シリンダは既に廃棄されていたので新製。その際マテリアルと設計を変更、更に製造上の間違いだった灰箱を現設計に戻し、レストアされた機関車の蒸気発生能力は30%向上し、この機関車は英国で最もパワフルな機関車となった。今でもスペシャルトレインの運用に就いている。良い模型があったら絶対買っていたな、、

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英国BR標準機クラス5のカプロッティ・ポペットバージョンは1956年に30両生産され(量産ですね)、非常に好成績を収めた。

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前回話題にしたペンシーT1型。

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フランスの蒸気機関車設計者シャプロンも好んでポペットバルブを使用した。フランス人は複雑な設計構造を好む傾向があるように思われる(特にドイツ人と比べて)。

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この項の最後に、米国チェサピーク・オハイオ鉄道のL2a型。この機関車は米国の鉄道最後の旅客用蒸気機関車。フランクリン・ポペットバルブ仕様で極めて高価だったが、5両生産されたので試作とは言えない。5年の運用でディーゼルに取って代わられた。

模型はPFM/フジヤマ製(1987)。ホレボレするような素晴らしい模型。バルブ制御のシャフトも回転する。
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