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2023年05月15日14:09

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おにまい

GW直前、映画好きの友人から1枚のディスクが送られてきた。

何処へ行っても人だらけで割高なGWは服や布団の入れ替えと大掃除週間と決めているので、休憩がてらディスクを再生してみると、中身はほぼ女の子しか登場しないTVアニメ。

アニメに偏見はないので面白そうなタイトルがあるととりあえず録画して冒頭は眺めているが、昨今の作品は「紙芝居+安価な出来合いCGの組み合わせ」と言うか、真面目にアニメを制作している人たちが見たら怒り出しそうなものばかりなので、掃除の続きに戻ることにした。

しかし映画や美術展等々、彼が推薦するものにハズレはなかったことを思い出し、とりあえずそのまま見続けたところ、今回も期待を裏切ることはなかった。

まず肝心の動き、単に自然で滑らかというだけでなく、バレエのパドブレに例えると、うまい人はピッチが細かいだけでなく足首もしなっているが、その「しなり」に相当するモーションがちゃんと表現されているのには驚いた。首を傾げる時の角度やタイミング、表情の変化も緻密に計算しているようで、さらにアニメらしいデフォルメも加えられている。モブたちも個別に動いているところは、舞台の隅でもきちんと演技をしている群舞や、大砲に群がる水兵の動きを忠実に描いた宮崎アニメに通ずるものがある。

カーテンの隙間から差し込む光と埃のチンダル現象も再現され、パステル調の背景は一見シンプルだが、よく見ると細かいところまで描かれている。主人公には毎回異なる服を着せ、それに合わせて髪型も変えるなど、スタッフのマニアックなこだわりを感じる。(笑)

演出へのこだわりも随所に感じられ、たとえば妹が風邪をひく話では、その前の回、映画を観に行く話でエアコンが効きすぎていると妹に語らせるなど(他の登場人物たちは気にしていない)、すでに彼女の体調はいまひとつという伏線が張られ、美容室に行く話では、美容師さんトークの中に近所のカフェのおすすめパフェの名前が出てくるが、その後のクラスメートたちとカフェへ行く話ではさりげなくそれらが登場する。

またお兄ちゃんが椅子に座る時、最初の頃は膝が大きく左右に開くなど、女の子という見た目とは真逆の男仕草が随所に描かれているが、いつの間にか膝を合わせて座るようになるなど、精神的にも女性化が進行していることを何気に表現している。

*新しい発見がありました。(笑)
イカ腹
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ギャグのテンポとその見せ方も絶妙で、妹とのかけ合いにはつい笑ってしまった。彼女はお兄ちゃんを更生させるためいろいろ仕掛けてくるのだが、策がうまくいった時のニヤリ顔が、声優さんの上手な演技もあってツボにハマる。(笑)

声優さんといえば、「トトロ」のお父さん声について某カントクは自然な演技を求めた的な言い訳をしていたけれど、日常であんな不自然なしゃべり方をする人はいないわけで、声優を生業とする人たちに失礼だ。それはともかく、この作品の声優さんたちは場面の雰囲気を的確かつ自然に表現し、タイミングや間の取り方はさすがプロ。独特なしゃべり口調のお兄ちゃんはどんな人がやっているのだろうとプロフィールを調べてみたら、意外にも美人系のお姉さんだった。(笑)

ちなみに物語は、優秀な妹が「2年間も外に出ず」「いかがわしいゲーム三昧」な日々を送る「引きこもりのクズニート」な兄を更生させようとする話で、ジャンル的には子供たちのゆるい日常を描いた癒し系の作品。「おにまい」は略称で、正式なタイトルは「お兄ちゃんはおしまい」。

せっかく更生させようとしているのになぜ「おしまい」かと言うと、飛び級で大学生(理学研究科応用生物化学コース)になった妹の「お兄ちゃん改造計画」は、怪しげな「薬」で兄を女性化かつ年齢も巻き戻し、人生をやり直させようというもので、学生の頃から優れた妹に引け目を感じていた兄は、女性化に抵抗感を覚えつつも「本来の自分のポジションはここ(兄ではなく妹)」と居心地良く思い始めてしまうため。

いい歳をしたおっさん向けの作品ではないけれど(笑)、丁寧に作られた良心的なアニメと久しぶりに出会えたことは友人に感謝したい。
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