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2023年05月05日20:30

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鎌倉プライド

 若き日の池田満寿夫が春画を描いて出版社に持ち込んだ、というのはあながち根拠がないわけではなさそうだ。昨夜の午後11時から1冊の本を読み始め、明けて午前1時半に読了。読んだのは、戦前から戦後に亘って艷本や風俗画の研究書を軸に幅広く出版活動を展開したA書房創始者・坂本篤の伝記『艷本狂詩曲』。そのなかで池田の名前が一箇所出ていた。彼が描いた「春画」は世に出ることがなかった、という。
 A書房はかなり前に閉じたが、社屋はアパートに建て替えられていて、坂本の娘が住んでいたという。彼女がご健在なら、ひょっとして池田作の春画が残っている可能性もある。

 5月5日子どもの日。マルクスの誕生日。
 朝日の投稿欄「声」には子どもや青年の投書が載っていて、11歳の小学生が「給食費の無償化」を訴えていた。文章と論理の巧みさに舌を巻く。
 午前中、本を返却しに図書館へ。道路には他府県ナンバーのクルマが多数溢れている。飛驒や神戸や群馬といったナンバープレートを見ると、観光客をカモにした不味いB級グルメに引っかからないで、などと良識的鎌倉市民の私はつい思ってしまう。タピオカドリンクが流行り始めたらあちらこちらでタピオカドリンクが売られ、やれソフトクリームだ、やれイチゴ飴だ、やれベルギーワッフルだ、などとドブ川の泡みたいな店が出来ては消えていく。
 今日こそ図書館で本を借りるのをやめよう。借りては返す借金地獄のようになってしまい、強迫観念に囚われそうだ。テーブル周りには購入本が堆く積まれているんで、本の山を少しでも低くしたい。
 帰り道、家の近くまで来て、出掛けに目撃した男性がまだ作業を続けていた。うちの近くは道路の左右が未舗装で、クルマの往来が激しかったり大雨が降ったりしたら、そこに凹凸ができる。彼は低くなった箇所に土を埋めて平らにする手作業をしていたのだった。
「あなたは道路の業者ですか? それともボランティアで?」と尋ねてみたら、「ボランティアというほどのものではありませんが、そこのマンションに住んでいて、いい暇つぶしに道を補修しています」と答えた。そして一拍置いて「私、あなたを知ってます。ボーダーコリーを散歩させているのを見て」と言われたので照れてしまった。
 うちの周りだけなのか、鎌倉市全体に言えるのかわからないが、道路や植え込みのゴミ拾いをしたり、側溝のドブさらいをしたり、草むしりをしたりする市民は存外多く、私も時々お寺を掃除している。今月は市民有志の海岸清掃も複数回あるし、森林ボランティアによる山の手入れもおこなわれる。都会ではあまり見られない自治意識が強く、たぶんこれは鎌倉プライドが根底にある。一回性の観光客はまず知らないことだろう。いや、こんな裏事情など知らなくてよく、せいぜいが海をあまり汚すではないぞ、小魚にマイクロプラスティックが蓄積してそののち人間の身体に悪影響を与える負の連鎖になってしまうから、程度の基礎知識はあって欲しいけど。

 午後からはプロレタリア文学を黙々と読んでいた。作家のご遺族に手紙を書かなければいけないから。手短にまとめたいが、そうかと言って勉強の痕跡が少し滲む程度の誠実さも見せなければいけない。さじ加減がとても難しい。何百回書いても、相変わらず慣れない、苦手だ。
 夕方のニュースを見たら、拉致問題被害者の会がワシントンでアメリカ政府高官に陳情し、「早期解決に向けて支援を! 親世代が次々と亡くなっているので」と訴えていた。
 私は拉致被害者家族の会に対して違和感がある。自民党の各総理に「一刻も早く取り戻したい」などと訴えかける気持ちは十全にわかるものの、日本が明治維新後、朝鮮半島を徐々に侵略し、1945年までに何百万人の朝鮮人を蹂躙し殺害し苗字や人権まで奪ったという歴史を一顧だにせず、ネットに溢れるヘイト発言に心痛める様子もなく、ただただ拉致された家族を返せ、となんとかの一つ覚えのように訴えるだけだ。もし本気で両国間の交渉を再開させ、我が子我が姉を帰国させたいのであれば、少なくともいまのような薄っぺらい訴えを改めるべきなのでは? テレビカメラの前で主張すればするほど、北朝鮮は逃げて行く。これは日本人全体に言えることで、要は歴史認識が甘い、というか、不勉強過ぎる。イジメた側は過去のイジメなど覚えていないが、イジメられた側はずっと覚えている。
 大正時代から昭和に入った頃のプロレタリア文学を読んでいると、ついこのような見方をしてしまう(苦笑)。
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