mixiユーザー(id:18419990)

2023年02月09日02:28

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イノベーションのジレンマ@読書感想文

 副題が振るっている「技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」。え?イノベーションって良いことじゃないの?と思い読んでみることにした。
 なんのことはないイノベーションをした企業ではなく、された企業が滅ぶのだ。そんなのよくあることだ。読むのやめようかな?ボンクラ巨大企業が滅んだのさ。
 だが読み進むにつれ、そうではない事が書かれている。
「偉大な企業はすべてを正しく行うが故に失敗する」

 本書ではイノベーションには2種類あるという。持続的イノベーションと破壊的イノベーション。
 持続的イノベーションは優良企業いやボンクラ企業でなければ常に行われているものだ。顧客や投資家の意見に真摯に耳を傾け自社の製品をより良いものにする。私のようなボンクラ末端従業員ですら小さなイノベーションはしたかも知れない。このイノベーションには大小あり大きなのは本当に革新的で凄い。ただしこれらのイノベーションが巨大企業を滅ぼすことはない。

 問題は後者の破壊的イノベーションの方である。桶狭間の戦いのように巨大企業が新興企業の躍進によって滅ぼされる。コンピュータといえば今やIBMでなくアップルだし、小売業でいえばデパートでなくディスカウントストアだ。
 私は本書を読むまでイノベーション=革新的なこと、程度の認識でしかなかった。本書は破壊的イノベーションを詳しく定義している。
 すなわち、性能が低くて既存のユーザー(顧客)からの支持は得られない。だが性能が低い代わりに他の利点がある。小型である事や使いやすい事、信頼性や価格の安さ。大手優良企業は顧客を大事にするから、このような製品には手が出せない。その間に新興企業が、このような製品を必要とする顧客を見つけ新しい市場を見出す。破壊的イノベーションにも同時進行で持続的イノベーションが存在する。性能が低かった製品も他の利点を併せ持ったままで性能が上がる。やがて大手優良企業を脅かすレベルまで性能が上がると、もう新興企業からの攻撃をかわす事は大手優良企業にはできなくなっている。すでに新興企業には大手優良企業が持っていないノウハウを色々持っているのだ。

 本書ではハード・ディスク業界の事例を豊富に紹介しているが、私らしくやはり本書で紹介されているバイクの事例にしよう。
 ホンダがアメリカに進出しようとした。既にスーパーカブで日本では実績がある。アメリカではハーレーを代表とする大排気量大型バイクが売れているから、そんな製品を開発して売ろうとした。アメリカのバイクディーラーは見向きもしなかった。
 アメリカ駐在社員は移動用にスーパーカブを持って行った。この苦境を紛らわす為に休日アメリカの野山をスーパーカブで走り回った。するとそれを見たアメリカ人が「その小さなバイクはどこで売っているのだ?」としつこく訊かれ、仕方なく特別輸出せねばならなかった。そこでホンダは新しい市場を見つけた。バイクディーラーから無視されるのならばスポーツ店に販路を見出す。ホンダはアメリカでオフロードバイクメーカーとして躍進する。
 オフロードバイクは性能でいえば低い。馬力もないしスピードも出ない。だがハーレーで野山を走れるか?ハーレーもこのホンダの躍進を黙って見ていたわけではない。ハーレーもオフロードバイクを発売したがディーラー(顧客)から拒否され、やむをえず撤退した。私はそれを画像で見たがあまりにも希少なので今はプレミアがついている。
 その後、日本のバイクメーカーは持続的イノベーションで性能でも他国のバイクを凌駕し世界のバイク業界を席巻したと言えよう。

 本書の著者クレイトン・クリステッセン氏は経営学者で本書も経営者向けではあるが、そうでない者にも示唆に富んでいて応用できる。素晴らしい書である。
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