これから熊野へ行ってみようという方のために、いくつか書籍をご紹介いたします。
熊野に関する本は山のように出ていますが、「世界遺産熊野古道」的な写真付きの本は、私が見た限りではこれが一番と思いました。
◆『世界遺産 熊野古道を歩く 紀伊山地の霊場と表詣道』楽学ブックス 文学歴史 3
田中昭三/編 2008年
ちょっと古いかもしれませんが、かゆい所に手が届くスグレモノ。新刊で買えます。
何か一冊買うなら、これ。
そして、現場持ち歩きには、何と言っても「街道マップ」シリーズ。
ここからPDFファイルをダウンロードできますが、「中辺路」「紀伊路」などに入ってから地図を選ぶので、ビギナーにはわかりづらいかも。
とにかく何も考えずに全部ダウンロードして、すべてを手元に置いてみるべし。
◆
https://www.wakayama-kanko.or.jp/plan-your-trip/model-courses/route-map/
東京の人は、有楽町の和歌山アンテナショップへ行けば好きなだけもらえます。
現地にもあってよさそうなものですが、南紀白浜空港にはなかったような・・・。意外と手に入れづらいかもしれません。
熊野古道を実際に歩いて詳しくガイドしてくれるのは、
◆ 宇江敏勝『世界遺産熊野古道』新宿書房 2004年
小辺路、中辺路、大辺地を、最初から最後まで歩きながら解説してくれる本。
炭焼きの家に生まれ、中辺路に住まい、山の仕事をしながらガイドもしている著者ならではの、地に足のついた紀行。
熊野古道についてよく知りたいという方には、格好のガイド。
この3つで、熊野古道の旅はとても充実したものになると思います。
あとは皆さんそれぞれの興味に従って、つっこんでいただければ。
ご想像の通り、熊野は深掘りし甲斐のある土地です。
以前ちょっと触れましたが、私は書店でたまたま見つけたこのマニアックな本が気に入りました。
◆ 桐村英一郎『「熊野山略記」を読む』はる書房 2021年
熊野に移り住んだ元ジャーナリストが、熊野三山に伝わる古文書『熊野山略記』を現代の言葉で解説しながら、おもしろエピソードを抽出して紹介してくれます。
熊野にそこまでの興味を持たない人にはお勧めしませんが。
◆ 中世の熊野と、伝説に興味があれば、お近くの図書館で『一遍上人絵伝』、そして小栗判官照手姫に関する書物を漁ってみたらおもしろいと思います。
これらはガイドブックにも多少の引用はあると思いますが、エピソードをばっちり頭に入れておけば、現地での解説板なんかを読んですぐ理解できると思います。
日記の中で触れませんでしたが、熊野権現と出会ったという一遍上人の物語は、これぞ中世という雰囲気満々で面白いです。
◆ 私が熊野方面に興味を感じだした最初の頃に読んだのが、辻原登の小説『許されざる者』。
大正時代、新宮に実在したアメリカ帰りの医師を主人公に、資産家の娘、僧侶、ヤクザの女親分、関西を代表することになる実業家、京都大寺院の門主、被差別部落民、雑誌記者、旧藩主など、そのほとんどにモデルのある人々が織りなす物語。
これを読んだだけで、いつか新宮を訪れてみたいと思う人は多いはず。
◆ いやいや、熊野といえば南方熊楠でしょう!という方。
私はまだ熊楠本をほとんど読んだことがないので、よければ何か紹介してください。
ただ、彼の「神社合祀に関する意見」は、以前に読みました。
明治政府が、従来の神社をばんばんまとめて一つの村に神社一つにせよ、と命じたことを大問題とし、そんなことは絶対にしてはならぬ!と一気呵成に書いた意見書で、これがなかったら熊野はどうなっていたか・・・。
青空文庫にも収められていますので、古道を歩く方は読んでおいていいと思います。
◆ いやいやいやいや、熊野といえば中上健次でしょう!という方。
熊野の被差別部落を舞台にした半自伝的な作品群で知られる中上健次を携えて熊野をほっつき歩く、という文学青年的な旅もよさそうです。
彼の作品をいつか我が読書会のテーマにしたいと思っていますが、目下のところ読んだことがあるのは、河出書房新社の日本文学全集に入っている『鳳仙花』などだけです。
次に読むなら、『枯木灘』か『岬』かなぁ・・・。
◆ 最後に出すのは、やはり、くじら。
C・W・ニコルの『勇魚』、伊東潤の『鯨分限』は、ともに太地の鯨取りが主人公の「男の小説」でした。
伊東潤は、いつか『巨鯨の海』も読んでみたいなぁ。
メルヴィルの『白鯨』は、そのうち読書会やります。
桐村英一郎や宇江敏勝の本は、興味の対象がバッチリ被っているので、折をみてほかの著作も読んでみたいと思います。
というわけで、なんだか「僕はこんな本を読んで熊野を旅した」みたいになっておりますが、切り口の無数にある熊野について、どんなところから斬りこんでいったかの一例と受け取っていただければと思います。
次回は、熊野で出会った「あいつら」の写真をいくつかご紹介して、この果てしない連載にピリオドを打とうと思います。
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