ぼくの高校時代は、お昼ご飯は自宅から持参したお弁当でした。
・・・そして或る日のお弁当が画像のような代物だったのです。
細長い木箱に入った鰻の蒲焼弁当。しかも蒲焼一枚丸ごと。
この弁当を机上に広げて食べるには、相当の覚悟と勇気が必要でした。
他のクラスメイトたちは、高校生らしくふつーの弁当を食べているのに、ぼくだけこの大きな蒲焼弁当だったのですから。
目立つといえば、これほど目立つものもない。
ぼくは恥ずかしさから、長い蒲焼が見えづらいように自分の躰で木箱を覆うようにして食べました。
ぼくの母は働き者で、子供への愛情が半端なく、息子へのしつけは厳しいけれど、優しいところもある尊敬できる人だとは思っていました。でもこの弁当の一件でもわかるように少しというか、かなり変わったところのある人で、母の常識は世間一般の常識とは随分違っていた、と今でもぼくはそう思っています。
ぼくはこの『鰻の蒲焼弁当』の一件から学校には弁当を持って行かなくなり、お昼時間には学校周辺の食堂に通うことになりました。
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