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2021年09月07日15:27

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買ってくるぞと勇ましく(@開高健)

 昨日、マイミクさんから「郷里からすだちが送られてきたので、お裾分けということで送りました」というメールをいただいたので、本日の午前、隣町のスーパーへお魚を求めに原付バイクで。しかし、1週間乗らなかったためエンジンのかかりが悪くて、30回くらいキックしてようやく始動した。原付の不具合よりはまだ自分のほうがマシだ、と思うことにする。
 開高健のエッセイ集『開口閉口』の中に「買ってくるぞと勇ましく」という小品があって、(たぶん)茅ヶ崎の仕事場に越した開高が奥さんと半別居ゆえ、さらに近所にラーメン屋やトンカツ屋がないため、自炊することとなり、近所のスーパー(「たまや」で、たぶん今もある)に行って買い物をするというだけの話なのだが、比喩も含めてめちゃ面白い。すき焼きの材料を求めに行ったはずが、甘塩酒の切り身だ、ラッキョウの瓶詰めだ、蕎麦ダシの瓶だ、それにハイビスカスの鉢植えまで買ってしまい、主役であるすき焼きの材料は余分のゴタゴタのなかに隠れて見えなくなってしまった。<まるで、細部に念を入れるあまりに主題が稀薄になった小説みたいである>と書かれてあった。
 買い過ぎの対応策として、余分なお金を持っていかず2000円をポケットにねじ込んで出掛けるとか、どんな誘いにも乗らないぞ、わかったなと自分に念を押して<買ってくるぞと勇ましく家を出ていくのである>。そしてこの作戦が成功すると、<シテヤッタワイ>と開口は喜んでいるのだが、こういう無邪気なオッサンというのは実に愛らしい。
 私は今日もちゃんと財布を持っていった。
 すだちをぎゅっと絞って美味しくいただける魚は……、と思いながら鮮魚売り場を歩くと、サンマやアジがまずあって、次に大ぶりなカマスが目に入った。カマスは丸のままのと、開いたものの2つがあって、後者が生サンマなんかより美味しそうに見えたので、結局カマスを1パック、ちょっと先の干物コーナーでアジの干物もレジカゴに入れた。あとはほぼ家から消えてしまったお米、夜のおやつ用の饅頭、明日の昼用にポークウインナー、レジ横にあった不二屋のホームパイ。お米を5キロ買ったので残年ながら2千円を大きく超えたが、最低限の買い物になった。
 さあ、今日も張り切って翻刻を。
 と意気込んでいるものの、なんか興が乗らず、まだ今日はこれからだというのに日記なんか書いてお茶を濁している俺。お天道様に申し訳ないと思わないのか、と責めてみるのだが、懶惰な性格は持病なので、どうしようもない。
 まだ今日は8時間半もある。なんとか態勢を立て直したい。

追記
 で、日課であるラズリの散歩に出たら、2軒先にお住まいの作家が血栓をとる手術を無事終えて退院されていて、庭を掃いていらっしゃったので立ち話をする。
 コロナ患者を次から次へと受け容れている湘南鎌倉総合病院は入院部屋が足りなくて、もう少し様子見をするほうがいいのに3泊4日で出されたという。部屋を出たらすぐに消毒と掃除が入り、追い立てられたと。一般病棟では手術待ちの患者が陸続しているらしい。
 元気に戻られた様子に励まされる。

 さらに夕飯を食べ始めた午後6時半。ひとりの女性が本を携えてうちを訪ねて来た。「九条の会」のメンバーで、以前、鎌倉史に興味があると訊かれて「はい」と答えたら、「私、10年ほど前に女性史を聞き取り調査をした上で書いたのよ。いつかその本、あげるわね」と言われたのだった。
 なにぶんご高齢のかただ。既に日が暮れている。彼女の家まで普通に歩いて30分ほどか。申し訳なく思うとともに、こういう粘り強さに感心し、なにごとも面倒くさがってちゃダメだよな俺、などと鼓舞された気分になった。
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