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2020年08月31日09:36

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スーヴェニール

あの子と別れたあとそのまま家には戻らずに、丘のてっぺんを過ぎた所のバス停の中に入った。ヘナヘナとベンチに座る。まだ足が笑ってる。体中が震えている。
紙袋を膝の上に抱えて空を眺める。胸に抱きかかえるモノがあって良かったよ。これがなければ私は崩れてしまう。

あの子が会いに来てくれた。嬉しかった。
リボンを返された。少し寂しくなった。あの子はすべてを断ち切っていなくなろうとしているんだ。
友達ならだいじょうぶ?ずっと切れない?そう思う?

あたしは人のために何もできない。何もしてあげない。
それでも友達なら近くにいることができると思っていた。何もいらないから、ただそばで見ていたかった。

セミの抜け殻をポケットに入れて持ち歩いているの。夏にたくさん拾って、いくつも集めてある。別れ際にいたずらで頭につけてやったら面白いと思った。それだけなんだ。
後ろに回れば良かったな。前からいったのがよくなかった。あの子の首から後ろに手を回して髪の毛にくっつける場所を探したけれど、よく見えなくて。まるで抱きしめるような体勢になって、髪が触れてあの子の腕が背中に来て、そしたら、
このままでいたいと思ってしまった。
離れたくないと思った。
あの子が「なんで?」と聞いた声の振動が胸から響いてきてへんな気分になった。なんでじゃないよ、お前だよと思った。「お礼だよ」と言って、そのまま肩を抱き続けていた。すごく長い時間に感じた。

恋をしているわけでもないのに、良くないよな。この間すごく反省したばかりなのに。
あの子が何も気付いていなければいいな、ただセミの抜け殻をみつけて、なあんだこれか、と思ってくれたらいいな。

きっとあたしずるいのよ。好きでもないのに振り回してしまう。私なんかの近くにいたらいけない。さっさと離れたほうがあの子のためにはいいんだ。親友になんかなれないんだ。あたしはひとりでいるのがいいんだ。

余計なことばかりしているのかな
ただ近くにいたいのが、そんな悪いことなのかな、

ああそうか、あたしあの子が好きなんだ。
多分恋とは違うけど、ずっと離れたくないからあの子と友達になりたいんだ。これからずっと永遠に、会いたい時にはいつでも会える、親友になりたいんだ。

多分、あたしにその資格はないんだけど。



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