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2020年08月24日22:13

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最初の3ヶ月 6 (作成中)

帰りに待ち合わせている訳ではないので、ヨッチンを見かけない時には何日も見かけなくても不思議ではない。学校の中で見かけたとしても、用がない限りこちらから声を掛けることもない。ああいるな、と思うだけだ。
別に用事なんか無いもんなあ。向こうから来れば無視はしないけど。いや、来なくていいよ、来たらまた面倒くさいからな。

2学期の委員決めで保健委員になった。月一回あつまって会議をする。アルボースを詰め替える。ポスターを貼り替える。積極的な人がさっさとやってしまう。私はついて歩くだけ。
掃除の時間はホウキ係を取られてしまって、やることがない。机をいくつか運んでみたりする。雑巾でそこらを拭くふりをする。花瓶の配置を直してみる。
体育の時間は、やたら二人組にさせられるのが困る。途方に暮れていると他の二人組の所に強引に入れられるか、誰かが休んでいて余った人をあてがわれる。やりにくくさせてごめんな、友達の仲を引き咲いてごめんな、私なんかとやりたくないよな。おまけに下手くそで全然練習にならなくてごめんな、とその場に消えたくなる。
なにもしない、なにもできない、どうしたらいいか分からない、という、普通の日常を過ごしていた。

昼休み。ご飯を食べて渡り廊下で眺めていると、お腹が痛くなってきた。ここのところずっとこう。食べたら痛くなる。元々お腹が弱いんだけど、最近はトイレに行ってもおさまらなくて。授業中に急に行きたくなったりするんだよな。授業中そのことしか考えられなくなる。
保健委員になったので保健室の場所は覚えている。そこに行けば薬くらいもらえるんだろうな。
でも、まあいいや。そこまでしなくても。それより早く帰りたいと思った。

まだ一月も経っていないんだから、うまくいかないのはあたりまえ。友達なんかいなくてもいいから、学校で上手にやっていけるようになりたい。この体育祭が終わったら、普通の日々になる。そうすれば少しはやりやすくなるに違いない。

午後をなんとかのりきって、やっと下校時間になった。今日も準備があるのだけど「お腹が痛いので帰らせてください」と言うとすんなり帰らせてくれた。お大事に〜と言われた。ちょっとラッキーと思いつつ罪悪感。痛いのは本当なんだけど、これくらい我慢するべきなんかもしれない。もしかしたら皆にも仮病と思われてるかもしれないな。 

3組の教室の窓をふと見た時に、ひとり机に向かってぼんやりしている小さい後ろ姿が見えた。何やってるんだろ。ノートを広げた上に小さい折り紙を畳んだり広げたり、と思ったらギュッと握りしめて机の右上に置いた。両ひじをついた上に頭をのせた時「あれ、」気付かれた。
気付いてないテイで通り過ぎようとすると「おいおいおい、絶対気がついてるだろうが」と呼び止められた。
仕方ない。教室の入口のところまで戻った。
「なんか用事?」「なんもない」「声ちっさ」「普通だよ、ところで何してるの?」「居残り」「残って折り紙してんの」「ちゃう、作文、夏休みの宿題の」「え?もう今日20日だよ」「ほっといたら出さんで済むかなーと思ったんだけど、月末がコンクールの締切だから絶対今日中には書け言われた」「あんたひとり?」「…まあそうみたいだな」「あは、ははは、ダメじゃん、ははは」「笑わんでもええし」
「まあ、ね、あたしは転校だったから夏休みの宿題なくなってラッキーだったわ」変なツボに入って笑いが止まらなくなってしまった。く、苦しい。「笑いすぎ」「あたしは笑い上戸なんよ」「それ酒癖の話じゃない?」「そうなん?」「いつもそんなに笑ってたっけ」「我慢してるのよ」笑った顔が気持ち悪いってさんざん言われたからね、前の学期で。喋らないのに笑って写真に写るのが怖いとかさあ。「いつも笑ってたらいいのに」「こんな笑ってたら変やろ」「まあ、それはそうか」「うん」
「じゃあな、頑張ってな」「もう帰るの?」「うん、準備はあるんだけど、お腹痛くて帰るって言ったから」「え、だいじょうぶ?薬のんだ?」「あ、だいじょうぶだいじょうぶ、じゃあね」
教室を出て、笑った顔のままなのを消して自転車置き場に急いだ。早く、ここを立ち去らなくちゃ。
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