mixiユーザー(id:11073381)

2020年08月18日01:23

45 view

ハンブルク空襲

僕の最年長のガールフレンド?だったハナは今年亡くなったが、昔からよく戦争の話を聞かせてくれた。彼女はハンブルク・アルトナ区の育ちで、父親はそこで本屋を営んでいた。祖父母はハンブルクから40kmほど離れた村に住んでいた。もともと週末は頻繁に列車で祖父母の許へ通っていたが、空襲が続くようになるとそれは毎週末になった。父親は40近いというのに戦争に駆り出されてしまったので、店を維持していくのは母親とハナの仕事になった。常に空襲の不安に晒されながら14歳の少女は歯を食いしばって何とか日常を維持していた。警報が出て防空壕へ逃げ込むのも日常だった。

そんな中、英空軍と米空軍はハンブルクを壊滅させるための計画を作成する。オペレーション・ゴモラ。ドイツ有数の大都市を管滅させて市民に続戦の無意味を知らせようという意図もあったようだが、英国にとってはドイツのロンドン爆撃に対する復讐でもあった。ハンブルグが選ばれたのは、有数の大都市という他にも英国からほとんど海上を航行出来て地上からの対空砲火を逃れることが可能という点も大きかった。

何日にも及ぶ無差別爆撃でハンブルグは実際に壊滅する。暑くて乾燥した夏だったので全てが燃え尽きた上に、熱風が起きて外気温は1000℃に達し、外にいた人間は蒸発するように燃えた。祖父母の家からハンブルクが真っ赤に燃えているのをハナは見ていた。大きな爆撃がある、という噂は町中に広がっていたらしい。焼夷弾を含めた様々な爆弾がミックスで使用され、都市機能を完全に破壊した。極めて冷酷精密に考え出された作戦だった。

ハナが街に戻るとハンブルグは瓦礫の山だった。まだ焼け焦げの屍体があちこちにあり、荷車にはそういった屍体が積み上げられていた。

ほとんどの防空壕は役に立たなかったらしい。爆風で上の建物は吹っ飛び、高温の燃焼ガスが侵入して肺が焼け、酸欠で死んだり、水道管が破壊されて熱湯になった水が流れ込み防空壕の中の人は釜茹でになったりした。また、熱でミイラ化した人が山積した防空壕もあった。

戦争というのは人間の愚かさを晒け出す。

そういえば、ハナの母親は敬虔なクリスチャンでバイブル・スチューデント(今のエホバの家)に属していた。このグループはキリスト教徒のなかで唯一公に戦争反対を唱えていため、この母親もなんども警察にしょっ引かれ、拘置所になんども入れられたという。非常に温厚で優しい人だった。


2 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年08月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     

最近の日記

もっと見る