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2020年01月20日10:58

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★会話は、表情筋。(メルマガくん:01/20号)

 山手線の中では、車椅子や乳母車を置ける「フリースペース」に立つのが好きです。広々としているからです。もちろん、必要としている人が来れば、すぐに場所を譲ります。
 「フリースペース」に1人立ちながら、モーリス・ブランショの『事後的に 永遠の繰り言』を読んでいます。
 西洋系の旅行者の集団が乗り込んできます。60歳前後の男女、10人くらいの集団です。私は、周りをすっかり集団に包まれてしまいます。
 隣に立った背の高い男性が私の本を見て、英語で、「フランス語の本を読んでいるんですね。(本の表紙の文字を読み上げる)『アプレ・ク』、モーリス・ブランショ、ですね。面白いですか」と話しかけてきます。これがきっかけで、集団の人たちと会話が始まります。

 私たちはバンクーバーから来たカナダ人で、(仲間の女性のほうを示して)そうそう、こっちの女性は、フランス語を話す人だ。
 こんにちは(ボンジュール)。
 日本に来た目的は?
 雫石にスキーに。
 雫石のほかは?
 盛岡、昨日はかっぱ橋道具街、今日はこれから、国立競技場。
 ところで、(日本人の)あなたは、英語とフランス語と日本語を話すのですか。
 いいえ、日本語だけですよ。
 あはは。
 なんで、フランス語も話せるの?
 40年前、パリに住んでたから。
 
 なんて、山手線の2駅の間、わずか5、6分ですが、英語なのかフランス語なのか日本語なのか、とにかく会話のパスを回します。語学はサッカーのパス回しと同じです。反射力です。私は英語は話せないはずなのですが、英語も使っているような気がしてきます。実際のところ、ほとんどは無声で、顔の表情だけで話すのが、私の外国語会話術です。表情筋が大活躍。つまり、話しているふり、なんです。
 では、お元気で(ボン・ジュルネ)。
 乗り換えの駅で、どっと降りていく10人の集団に、笑顔で声をかけます。
 「フリースペース」で、1人残された私は、ブランショに戻ります。
 あ、乳母車のお母さんが乗ってきた。
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