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2019年12月31日21:41

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意外なところで田村隆一の名を聞く

 昨日の午後2時過ぎ、家から5分のカフェへ行った。
 秋が始まる頃、カフェの家人から「仔犬を飼ったので見に来て見に来て」と誘いの電話があった。ウツ状態の私は軽やかな顔を取り繕って訪ねる気にならず、延び延びになった。
 入院する1週間ほど前に犬を連れて散歩している道でに出くわしたので、言い訳がましく「体調が悪くて、来週から入院することになっているので……、ごめん」と謝って別れた。
 行ってみると小晦日なので客はおらず、まずは6月齢になったワンコと10分ほど遊んだのち、ご主人と長々話すことになった。
「痛かった?」と訊かれた。
 そんな話はなしだよ、聞くほうもいやでしょ。
 病気のつらさや手術の痛みを延々と訴えられたら、代金を請求しにくくなる。そんなふうに思ったので、「もっと明るい話を振ってよ」と言ったら、「タバコを我慢するのがたいへんだったでしょう。止められた?」と尋ねられる。
 それがさ、手術の翌日から病院を脱走して吸ったんだ、と答えると、笑われた。
「ああ、思い出すねぇ……。うちの隣に居酒屋XXがあったんだが、詩人のえーと、名前なんだっけ、有名な……(田村隆一? と言ったら)……そうそう田村さんは清川病院に入院していたとき、毎日、XXで呑んでいたね」などと昔話をされた。
 点滴台をがらがら引きずりながら病院を抜けだして川の畔へ行き、水面に佇む鴨を見ながらの一服というのは生きているリアルが感じられました、などと、似非詩人の私はのたまう。
「ダメじゃない。入院をいい機会にしたらよかったのに」とまともなオヤジ台詞を吐かれたので、「そういう克己心が備わっていれば、俺はひとかどの人物になっていたよ」と返す。
 あのね、裏口が閉まる夜9時前、ナースステーションの仕切り台が臍くらいの高さなので、その下を匍匐前進して抜けだしてその日最後の一本、という習慣になったんだよ、と言うと手を叩いて爆笑された。私は関西人なので、上沼恵美子みたいな笑わせ方がDNAに刷り込まれている。術後に匍匐前進なんてできるわけないやろ(爆)。
 ふたたびワンコと戯れてみた。歯の生え替わり時期でもあって、やたら噛みつかれて、これがめちゃ面白い。人慣れしているのでがぶりと噛むわけではなく、テニスボールを咥える強さの噛み方だった。計20回くらい噛まれたところで、会計を求めた。
 奥さんが主人のほうを見て「いいの?」という顔をしたが、「いいからいいから。退院したら来ようというのが私の目標のひとつだった」と言って、5百円を渡した。
 夜、偶然手に入れた『遍歴放浪の世界』(紀野一義著)という本を読み始めた。昭和42年刊のNHKブックスで、級数がめちゃめちゃ小さい。さらに内容が難解。
 本に線を引いたりメモったりするのは普段、あまりしない。が、久しぶりに線を引き、要点を抜いてみたり単語を丸囲みしたりの読書になった。近々、論文らしきまとまった文章を書くつもりなのだが、この本からスタートだ。
 
 とうとう大晦日を迎えた。
 2時間くらい丹念に掃除をした。こまごまとした雑事もこなした。
 この時間、昔ほどではないにせよ世間一般では紅白歌合戦でも見ながら、ミカンでも食べながら1年を振り返ってたりしているのだろうか。
 私はたぐい稀なニポン人で、生まれてこのかた紅白歌合戦を通しで見たことが一度もない。最長20分くらいは見たことがあって、北島三郎が紙吹雪が舞う舞台で「♪祭りだ祭りだ祭りだ」と唄っている勇姿を見て、イイネって思ったりもするのだが、そもそも見る習慣がない。中学高校時代はこの時間勉強にいそしんでいたし(ウソ)、高校3年からの7年間はそもそもテレビ自体がなくて見ることができなかった。生活習慣が定着していく時期に馴染みがまったくないようなアイテムは、その後よほど必要があったり興味深いモノ以外は、やっぱり無縁なままである。
 年賀状を書かなかったせいなのか、新たな年が始まるという気持ちがイマイチ湧かない。毎年、午前零時前に初詣に行くのだが、今夜はその時間、安静にしてベッドに横たわるつもりだ。うちの周りはお寺だらけで、あちらこちらから除夜の鐘が聞こえてくる。しばらく鐘の音を聞いたら薬一粒を服んで寝よう。
 来年がいい年でありますように。
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