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2019年11月02日00:09

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鏡のない世界 292




不思議の国には
今も一つも
鏡がない。


自分がどんな
姿形をしているのか
自分だけが
分からない


美しい娘に
心を奪われたけれど
娘の目に
私はどう見えているのだろうか


やがて
娘は
美しい男に
心を奪われた


私は自分の容姿は
分からないけれど
美しい男より
美しくないのだけは
理解できた



とある絵描きに
私は自分の似顔絵を
書いてもらう事にした


絵描きが書いてくれた男は
私の思っていた姿とは
まるで違っていて、
私は怒りのあまり
絵描きを
殺してしまった。


とっさの事で
慌てて逃げてしまったばかりに
残された私の似顔絵は
国中に指名手配される
似顔絵に変わってしまった


私は森に逃げ込んで
騒ぎがおさまるまで
隠れようと思った


国中、大捜査が行われ
私に似た男が2人
処刑台の前に連れてこられた


森の中から
様子を伺っていたけれど、
私は自分の容姿を
もう一度見てみたいと思ってしまい
うっかりと、
処刑台の前に出てしまった


私と同じ顔をした男達が
苦痛と恐怖と絶望に満ちた表情を浮かべ
順々に処刑台から悲鳴を上げる
私は自分が処刑されるような
なんとも言えない気持ちで
その様子を眺めていた


最後に自分の順番になった
最後に何か言いたい事がないか
処刑人に尋ねられた


「何故、私は美しく生まれて来れなかったのだろうか!美しく生まれてこなかったばかりに、こんな目に合う事になってしまった!私の父と、母のせいだ!!今度、生まれ変わる事ができたなら、絶対に美しい顔に生まれきてやるからな!!」
私は今まで出したことがないような
1番大きな声で、そう叫んだ


処刑人は
哀れな生き物をみるように
「生まれ変わる事ができたなら、今度は、世界一醜い顔で生まれくるんだな」
と言って、自分の顔を覆っていたものをとった。


それはそれは、今まで見た事のある顔の中で、群を抜いて、とても酷い顔だった。
私は、初めて、自分の顔がとても恵まれていた事に気がついた。
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