弱い者いじめ

　今を去ること2週間前、アマゾンでiPhoneの手帳型ケースをポチった。シンプルで安価な中国製だ。購入した翌日の25日に現地から発送され、商品が届くのは10月5日予定とのこと。しかし待てど暮らせど届かない。
　昼すぎに郵便配達があったが、やはり届いていなかった。むっとした私はアマゾンの注文履歴を辿って、販売者に「到着予定日はとっくに過ぎている。いつ届くのか、明確に答えよ」というメッセージを送ったところ、夕方、返事が届いた。

＜こんにちは。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
注文書は発送確認済みです。
海外発送は2週間ぐらいです。休日には何日間か遅れる。
小包は10月6日に貴国に着きました。もう5日間待ってください。
よろしくお願いします。ありがとうございます。 ＞

　いったいいつ届くんだ（苦笑）？
　しかし、一方で、自分の度量のなさに対してわずかばかりの懸念を感じた。値段が値段だけに安い船便を使い、日本でもメール便以下の安価な配送方法なのだろう。大した金も払わないのに求める要求は高い、というのはユニクロやトヨタといったブラック企業と同様の暴君に似ていると反省したのだった。
　晩ご飯を食べてお気に入りに登録しているTwitterを読んでいたら、神奈川新聞の記者がこんなツイートとともに自分の書いた記事のURLを載せていた。

「当たり前の権利を求めているのに今の政権や自治体には届かず、まちなかで声を上げるだけで危害を加えられないか恐怖を覚える状況だ」。公による排除という「官製ヘイト」は扇動効果も与える恐怖も大きい。メディアが真っ先に批判し、やめさせなければ。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-200363.html

　朝鮮学校に対する補助金が打ち切られて何年が経つのだろう。
　拉致問題やミサイル実験などで朝鮮民主主義人民共和国に対する批判と差別はいっそう強くなった。
　そもそも朝鮮学校はほぼ日本の教育カリキュラムと同じである。いま調べてみたら、たとえば高校2年生の理系クラスは以下のとおり（1週間のコマ数）。
朝鮮現代史　２
社会　２
国語　５
数学　５
物理　３
化学　２
日本語　４
英語　４
体育　２
情報　１
　たぶんウヨクら差別者たちは「朝鮮現代史」と「国語」（朝鮮語）で引っかかるだろうが、朝鮮学校は朝鮮語を学んで欲しい韓国人生徒が数多く在籍していて、母国語を学ばせたいのだし、現代史を教えないというのは世界広しと言えど日本くらいなものである。
　そもそも日本の高校は、受験に特化したカリキュラムか、数学や理科を軽視する低レベルのいずれかで、むしろ朝鮮高級学校のほうが文科省の方針に合っているくらいだ。
　私は高校時代から学校で（教科書で）教わる日本史に疑問を感じていた。奈良から明治までは誰が権謀術数に長けていたかをただ順繰りに説明を受けるだけで、しかも天皇の支配が強かった時代は兄が弟を殺害しただの、亭主（天皇）の嫁が反乱を起こしただのと、少し客観的に見たら血で血を争う歴史。さらに平安末期あたりから明治に入るまで、天皇はいつのまにか消えている。あ、時の権力者に逆らって島流しにあった天皇とか、天皇を退位したのに上皇として天皇をないがしろにした、ということは習った。
　藤原道真が左大臣か右大臣かを問うようなも試験問題ばっかりで、たとえば平安末期の日本がどれくらい荒んでいたのかはかろうじて「この頃末法思想が流行ってました」と習っただけ。虐げられた農民が「逃散」や「一揆」をたびたび起こしているのに、なぜか大河ドラマに取り上げられる主君はどいつもこいつも人情味溢れていて、藩の未来を見通す立派なお方、というのが、なぜか正史になっている。米などの凶作で納める年貢米がないのに取り立て、反抗する農民を容赦なく切りつけた大名が500年後には英雄になっているのも気に食わない。
　坂口安吾の「堕落論」は天皇制を斜め45度から批判し、さらに「忍苦」や「道徳」や「武士道」や「靖国」といった封建的日本精神をぼろくそに嘲笑するエッセイなのだが、その通りだと思う。
　朝鮮学校の歴史教育がどういう内容か知らないが、少なくとも私が小学校から高校まで受けた歴史の授業はきわめて視界が狭いもので、さらに高校では3学期の終わりになってようやく国際連盟の脱退となった→やがて太平洋戦争を迎える→日本国憲法発布まで試験が出るのであとは教科書（山川だった）を完全に暗記しておくように、で終わり。本来ならいちばん重要な歴史教育が、時間切れで終了してしまった。
　朝鮮学校の教師は年収が300万円程度で、しかも給料遅配がたびたびあるという。補助金を切ったのはただの弱い者いじめでしかない。
　弱い者いじめが得意で、強い者にひれ伏すというのは、日本の伝統なのかもしれない。