1週間前、新聞で唐突にカシミール問題に関する記事が載っていた。
<インド政府が、ジャム・カシミール州で70年続いていた自治権を奪い、直接統治を始めた。地元との話し合いもなく、唐突に大統領令を出し、与党が多数の国会で憲法を改正した。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14137277.html>
昨日の夕刊では国連安保理に於いて緊急理事会が開かれた、とあり、今日の朝刊では中国がインドを非難したものの議長声明には至らなかった記事が載っていた。
私はチベットや新疆ウイグル自治区などの政治問題になんらの見識もないのだが、たった一つ、「国家に支配されていない人々」「国籍どころか住民票さえない人々」の大集団、ゾミアに妙な感心があって、カシミール自治区がゾミアの西限とされているため、心配になった。寝た子を起こすな、という気持。こういう報道から思わぬ展開にならぬとも限らぬ。
あらためて「ゾミア」について説明すると、ベトナムの山間部あたりからラオス、中国、タイ、さらにインド東部にまたがる多言語・多民族・多習俗の「非」・国民をゾミアと命名し、人口は1億人を超えるとされている。
21世紀になってなお、統合されていない地域というか民族が地球上に存在しているのか? ゾミアは、(失礼ながら)、40年前に学んだ文化人類学で、その時点からさらに30年も前に調査・研究対象となった未開部族を知ったときと比べ物にならないくらいの驚きだった。
私は昔から日本人でいることが時々面倒くさくなることがあって、そういう時はかつて山の中を流浪していた「サンカ」を想ってみたり、未開人の村で生まれてそこからも逃避する変な男になってみたいというような夢想を繰り返した。なので初期の丸山健二が描く文字通りの孤独な男に惹かれたり、今なら「ゾミア」の一員として生まれ落ちたら自分は何者だろうかと考えてみたりもする。
そうだ、去年、NHKスペシャルで「アウラ〜未知のイゾラド 最後のひとり」というドキュメントは感慨深いものがあった。アマゾン川の奥地に住む部族でとうとう最後の一人になってしまった男が、アウラだ。
アマゾンの奥地に物質文明から切り離された部族がいる、というのなら、理解できる。
が、東西2千キロ近くのエリアに1億人の無国籍者が住んで暮らしているというゾミアが事実であれば、それはヒマラヤ山脈に雪男がいるという以上の驚きであろう(どんな人でも)。
インドはカシミール自治区をそっとしておいて欲しい。中国は中国でウイグル自治区と同様の支配をしないで欲しい。
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