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2019年08月01日05:08
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和歌浦日帰り紀行３ 玉津島神社 ／ 奠供山
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７月28日日曜日は、妹背山から三断橋を渡って本土へ戻りました。
妹背山の対岸には芦辺屋と朝日屋の跡があります。
芦辺屋と朝日屋は、慶安２(1649)年に初代紀州藩主徳川頼宣(ﾄｸｶﾞﾜﾖﾘﾉﾌﾞ)の生母養珠院(お万の方)が妹背山に日蓮宗妹背山海禅院を創建した際、頼宣が対岸に設けた御茶屋でした。
明治時代には「あしべ屋」と呼ばれる三階建ての料亭・料理旅館となり、多くの文人墨客で賑わいました。明治34(1901)年には南方熊楠(ﾐﾅｶﾀｸﾏｸﾞｽ；1867〜1941)がロンドン留学中に親交を持っていた孫文(1866〜1925)とここで再会しています。
あしべ屋は昭和62(1987)年に廃業して建物は解体されてしまいました。
あしべ屋跡には芭蕉句碑が立ちます。松尾芭蕉が貞享５(1688)年に和歌浦を訪れた際に詠んだ句で、天保４(1833)年に第10代紀州藩主の大納言徳川治宝(ﾊﾙﾄﾐ)の命により句碑が建立されました。
「行春(ﾕｸﾊﾙ)を わかの浦にて 追付たり」
続いて玉津島神社〔村社〕へ赴きました。
https:/
西暦200年に三韓征伐を終えた神功皇后は、翌年、筑紫で人皇第15代応神天皇を出産した後、遠征中に大和を制圧していた忍熊王(ｵｼｸﾏｵｳ)の乱を紀の川を遡上して撃滅しましたが、その際、紀伊国で信仰を集めていた女神である稚日女尊(ﾜｶﾋﾙﾒﾉﾐｺﾄ)に加護を祈り、政権掌握後、神威に感謝して玉津島神社を創建したと伝えられます。以後、当地は景勝の地として知られる様になり、第37代斉明天皇・第41代持統天皇・第42代文武天皇・第45代聖武天皇・第48代称徳天皇・第50代桓武天皇…と多くの行幸が成されています。
神亀元(724)年、当地に行幸した聖武天皇は、人皇第19代允恭(ｲﾝｷﾞｮｳ)天皇の皇女とも妃とも伝えられ、和歌の女神とされた衣通姫(ｿﾄｵﾘﾋﾒ)を神功皇后と共に玉津島神社へ合祀しました。平安時代初期には歌人として名高い左近衛権中将在原業平(ｱﾘﾜﾗﾉﾅﾘﾋﾗ；825〜880)や小野小町(825?〜900?)が参拝したとの伝承もあります・
その後、第58代光孝天皇〔位；884〜887〕の夢枕に衣通姫が立って「たちかへり またもこの世に 跡たれむ 名もおもしろき 和歌の浦波」と詠んだ事から歌枕として有名になり、大宰権帥菅原道真(845〜903)・権大納言藤原公任(ﾌｼﾞﾜﾗﾉｷﾝﾄｳ；966〜1041)・関白太政大臣藤原頼通(992〜1074)・右大臣藤原宗忠(1062〜1141)・権中納言飛鳥井雅永(ｱｽｶｲﾏｻﾅｶﾞ；15世紀前半)・権大納言飛鳥井雅親(ｱｽｶｲﾏｻﾁｶ；1416〜90)等の錚々たる面々が当地を訪れています。
ところが、明応７(1498)年の巨大地震に伴う大津波で一帯は大きな被害を受けた模様で、社殿は失われて春秋二期の祭祀も廃絶してしまいました。
しかし、天正13(1585)年に紀州征伐を行った権大納言羽柴秀吉が訪れてから再び景勝地として注目される様になり、慶長５(1600)年に浅野幸長(ｱｻﾉﾖｼﾅｶﾞ)が和歌山藩主となると社殿の再興を実施、元和５(1619)年に権大納言徳川頼宣が紀州藩主となると本格的な社殿整備が行われました。寛文４(1664)年には春秋二期の祭祀も復活しています。この結果、文人墨客の間で有名になり、林羅山(1583〜1657)・貝原益軒(1630〜1716)や先に触れた松尾芭蕉(1644〜94)等も来訪しています。
明光浦(ｱｶﾉｳﾗ)十景では《玉津春暁》として選定されています。
拝殿です。
本殿です。
小野小町袖掛の塀です。元ｶﾚの在原業平から玉津島の風光明媚さを聞かされていた小野小町が訪れた際に小袖を掛けたと伝えられる塀を復元したものです。
境内には「和歌の浦状」が立っています。藤原公任の寛弘６(1009)年の歌詩書・藤原頼通の旅行記・藤原宗忠の『中右記』・貝原益軒の貞享４(1687)年の旅行記等を引用して崎山楠左衛門父子が記した『和歌名所記』を江戸の仙鶴堂が版木にした物で、寺小屋の手本として広く書き写されて有名になりました。
「昨日は長閑(ﾉﾄﾞｶ)に候まゝ近隣の衆中会誘引(ｼｭｳﾁｭｳｱｲｲｻﾞﾅﾋ) 白地にたちいでわかの浦辺へまかり越候 先ず�眈焦恵祺阿砲靴个蕕�憩い夫(ｿﾚ)より旧跡を心静かに一見せばやとて 猊口石(ｹﾞｲｺｳｾｷ)を見て行けば 萬劫(ﾏﾝｺﾞｳ)ふるや亀遊岩(ｷﾕｳｶﾞﾝ) ちとせをちぎる鶴立嶋(ｶｸﾘｭｳﾄｳ) うちすぎ行けば養珠寺(ﾖｳｼｭｳｼﾞ) みねに峙(ｿﾊﾞﾀﾞ)つ妙見堂 恵(ﾒｸﾞﾐ)も殊に有明の月にみがける玉津島 衣通姫(ｿﾄｵﾘﾋﾒ)のあとたれて小松の院の御願所(ｺﾞｶﾞﾝｼｮ)なり 拝殿には御寄進として狩野興甫(ｶﾉｳｺｳﾎ)か歌仙の絵に当御代公家衆(ﾄｳﾐﾖｸｹﾞｼｭｳ)の御筆(ｵﾝﾌﾃﾞ)を一々(ｲﾁｲﾁ)拝見いたしつゝ 潮みちくれば田鶴(ﾀﾂﾞ)なきわたる芦辺(ｱｼﾍﾞ)の茶屋にこしかけて 向ひをみればそのむかし小野小町と業平の契りをこめし妹背山 渚(ﾅｷﾞｻ)にさらす布引の松にかゝれる藤代や 二番の札所紀三井寺 塩焼(ｼｵﾔｸ)甫(ｳﾗ)のその景趣(ｹｲｼｭ)三國無双の勝地なり さて夫(ｿﾚ)よりも西の方(ｶﾀ)しほがまの社(ﾔｼﾛ) 不老橋ゆけば程なく下馬の橋 轟(ﾄﾄﾞﾛ)く とうち渡り 御靈(ｵﾀﾏﾔ)の宮に参詣して 御社(ｵﾝﾐﾔｼﾛ)を伏しおがみ 麓(ﾌﾓﾄ)にくだり 天満宮を拝礼し 浦辺に立ちいでながむれば寄せて歸らぬ片男波 沖の浪間に数(ｶｽﾞ)みえて浮世をわたる海人小舟(ｱﾏｵﾌﾞﾈ) いかにこがるゝ浜千鳥 あはれを催(ﾓﾖﾎ)す折柄に日も入相(ｲﾘｱｲ)のことなれば 夕(ﾕｳﾍﾞ)を送る遠寺(ｵﾝｼﾞ)のかねほのかに聞之申候 夫(ｿﾚ)より人々打連れて西浜通を立歸り候へば 最早(ﾓﾊﾔ)夜陰(ﾔｲﾝ)なり申候 とかくは筆に盡(ﾂｸ)しがたくこそ候へ かしこ」
境内には枯死した根上松が展示されています。15世紀まで和歌山市中心部は紀の川西岸に連なる砂丘だったため、松の根元の砂が風雨によって流されて根元が露呈した特異な姿をした松が生じ、根上がり松と呼ばれていました。大正時代には天然記念物に指定された根上松が８本あったんですが、７本が枯死してしまいました。
本殿右手から奠供山(ﾃﾝｸﾞﾔﾏ)へ登る道があります。
奠供山は玉津島を構成していた六つの島の一つで、標高は35ｍです。神亀元(724)年、当地に行幸した聖武天皇はこの地からの景観の美しさに感動し、この風致を永遠に維持する事を命じて守戸と呼ばれる監視役を配置させています。
この行幸に供奉(ｸﾞﾌﾞ)していた歌人山部赤人(ﾔﾏﾍﾞﾉｱｶﾋﾄ)の長歌が『万葉集』巻六の917番として収録されています。
「やすみしし わご大君(ｵﾎｷﾐ)の 常宮(ﾄｺﾐﾔ)と 仕へまつれる 雑賀野(ｻﾋｶﾕ)ゆ 背向(ｿｶﾞﾋ)に見ゆる 沖つ島 清き渚に 風吹けば 白波騒き 潮干(ｼｵﾌ)れば 玉藻刈りつつ 神代(ｶﾐﾖ)より 然そ尊き 玉津島山」
続いて、反歌二種が918番と919番になっています。
「沖つ島 荒磯(ｱﾘｿ)の玉藻 潮干(ｼｵﾋ)満ち い隠(ｶｸ)り行かば 思ほえむかも」
「若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴(ﾀﾂﾞ)鳴き渡る」
こちらは参議藤原麻呂(ﾌｼﾞﾜﾗﾉﾏﾛ；695〜737)と推定される藤原卿(ﾌｼﾞﾜﾗﾉﾏｴﾂｷﾐ)の歌で、巻七の1222番に収録されています。
「玉津島 見れども飽かず いかにして 包み持ち行かむ 見ぬ人のため」
他にも和歌浦を詠んだ万葉歌は多いですが、殆どは「詠み人知らず」です。
巻七 1215
「玉津島 よく見ていませ あをによし 奈良なる人の 待ち問はばいかに」
巻七 1217
「玉津島 見てしよけくも 我れはなし 都に行きて 恋ひまく思へば」
天平神護元(765)年の称徳天皇行幸の際には、南浜に「望海楼」が営まれ、七日間の滞在が成されましたが、紀州藩の儒学者仁井田好古(ﾆｲﾀﾞﾖｼﾌﾙ；1769〜1848)は「望海楼」を奠供山の南麓の市町にあった物とし、文化10(1813)年に好古が撰文した望海楼遺址碑〔和歌山市指定文化財〕にはその事が刻まれています。
望海楼遺址碑は、元は奠供山麓の市町川沿いに建てられていましたが、明治33(1900)年に明治天皇が観艦式のため和歌浦に来臨された際、御召艦の装甲巡洋艦浅間から良く見える様に鄭供山山頂に移されました。
また、天保３(1832)年に仁井田好古が撰文した奠供山碑〔和歌山市指定文化財〕が本殿右手に保存されています。
奠供山の名が古い祭式に由来する事が記されています。
天保２(1831)年か翌年には元紀州藩主の権大納言徳川治宝(ﾊﾙﾄﾐ)が奠供山の整備を行い、山上に拝所を建てています。
明治43(1910)年には旅館望海楼が奠供山に観光用エレヴェーターを開設し、翌年には夏目漱石も乗っていますが、僅か５年で廃止されてしまいました。なお、漱石は大正２(1913)年の『行人』で、このエレヴェーターを「所にも似ず無風流な装置」と評しています。
奠供山は妹背山よりも標高が高いので眺望は見事です。
新和歌浦方面です。
片男波方面です。
紀三井寺・名草山方面です。
不老橋とあしべ橋(新不老橋)です。
《続く》
妹背山の対岸には芦辺屋と朝日屋の跡があります。
芦辺屋と朝日屋は、慶安２(1649)年に初代紀州藩主徳川頼宣(ﾄｸｶﾞﾜﾖﾘﾉﾌﾞ)の生母養珠院(お万の方)が妹背山に日蓮宗妹背山海禅院を創建した際、頼宣が対岸に設けた御茶屋でした。
明治時代には「あしべ屋」と呼ばれる三階建ての料亭・料理旅館となり、多くの文人墨客で賑わいました。明治34(1901)年には南方熊楠(ﾐﾅｶﾀｸﾏｸﾞｽ；1867〜1941)がロンドン留学中に親交を持っていた孫文(1866〜1925)とここで再会しています。
あしべ屋は昭和62(1987)年に廃業して建物は解体されてしまいました。
あしべ屋跡には芭蕉句碑が立ちます。松尾芭蕉が貞享５(1688)年に和歌浦を訪れた際に詠んだ句で、天保４(1833)年に第10代紀州藩主の大納言徳川治宝(ﾊﾙﾄﾐ)の命により句碑が建立されました。
「行春(ﾕｸﾊﾙ)を わかの浦にて 追付たり」
続いて玉津島神社〔村社〕へ赴きました。
https:/
西暦200年に三韓征伐を終えた神功皇后は、翌年、筑紫で人皇第15代応神天皇を出産した後、遠征中に大和を制圧していた忍熊王(ｵｼｸﾏｵｳ)の乱を紀の川を遡上して撃滅しましたが、その際、紀伊国で信仰を集めていた女神である稚日女尊(ﾜｶﾋﾙﾒﾉﾐｺﾄ)に加護を祈り、政権掌握後、神威に感謝して玉津島神社を創建したと伝えられます。以後、当地は景勝の地として知られる様になり、第37代斉明天皇・第41代持統天皇・第42代文武天皇・第45代聖武天皇・第48代称徳天皇・第50代桓武天皇…と多くの行幸が成されています。
神亀元(724)年、当地に行幸した聖武天皇は、人皇第19代允恭(ｲﾝｷﾞｮｳ)天皇の皇女とも妃とも伝えられ、和歌の女神とされた衣通姫(ｿﾄｵﾘﾋﾒ)を神功皇后と共に玉津島神社へ合祀しました。平安時代初期には歌人として名高い左近衛権中将在原業平(ｱﾘﾜﾗﾉﾅﾘﾋﾗ；825〜880)や小野小町(825?〜900?)が参拝したとの伝承もあります・
その後、第58代光孝天皇〔位；884〜887〕の夢枕に衣通姫が立って「たちかへり またもこの世に 跡たれむ 名もおもしろき 和歌の浦波」と詠んだ事から歌枕として有名になり、大宰権帥菅原道真(845〜903)・権大納言藤原公任(ﾌｼﾞﾜﾗﾉｷﾝﾄｳ；966〜1041)・関白太政大臣藤原頼通(992〜1074)・右大臣藤原宗忠(1062〜1141)・権中納言飛鳥井雅永(ｱｽｶｲﾏｻﾅｶﾞ；15世紀前半)・権大納言飛鳥井雅親(ｱｽｶｲﾏｻﾁｶ；1416〜90)等の錚々たる面々が当地を訪れています。
ところが、明応７(1498)年の巨大地震に伴う大津波で一帯は大きな被害を受けた模様で、社殿は失われて春秋二期の祭祀も廃絶してしまいました。
しかし、天正13(1585)年に紀州征伐を行った権大納言羽柴秀吉が訪れてから再び景勝地として注目される様になり、慶長５(1600)年に浅野幸長(ｱｻﾉﾖｼﾅｶﾞ)が和歌山藩主となると社殿の再興を実施、元和５(1619)年に権大納言徳川頼宣が紀州藩主となると本格的な社殿整備が行われました。寛文４(1664)年には春秋二期の祭祀も復活しています。この結果、文人墨客の間で有名になり、林羅山(1583〜1657)・貝原益軒(1630〜1716)や先に触れた松尾芭蕉(1644〜94)等も来訪しています。
明光浦(ｱｶﾉｳﾗ)十景では《玉津春暁》として選定されています。
拝殿です。
本殿です。
小野小町袖掛の塀です。元ｶﾚの在原業平から玉津島の風光明媚さを聞かされていた小野小町が訪れた際に小袖を掛けたと伝えられる塀を復元したものです。
境内には「和歌の浦状」が立っています。藤原公任の寛弘６(1009)年の歌詩書・藤原頼通の旅行記・藤原宗忠の『中右記』・貝原益軒の貞享４(1687)年の旅行記等を引用して崎山楠左衛門父子が記した『和歌名所記』を江戸の仙鶴堂が版木にした物で、寺小屋の手本として広く書き写されて有名になりました。
「昨日は長閑(ﾉﾄﾞｶ)に候まゝ近隣の衆中会誘引(ｼｭｳﾁｭｳｱｲｲｻﾞﾅﾋ) 白地にたちいでわかの浦辺へまかり越候 先ず�眈焦恵祺阿砲靴个蕕�憩い夫(ｿﾚ)より旧跡を心静かに一見せばやとて 猊口石(ｹﾞｲｺｳｾｷ)を見て行けば 萬劫(ﾏﾝｺﾞｳ)ふるや亀遊岩(ｷﾕｳｶﾞﾝ) ちとせをちぎる鶴立嶋(ｶｸﾘｭｳﾄｳ) うちすぎ行けば養珠寺(ﾖｳｼｭｳｼﾞ) みねに峙(ｿﾊﾞﾀﾞ)つ妙見堂 恵(ﾒｸﾞﾐ)も殊に有明の月にみがける玉津島 衣通姫(ｿﾄｵﾘﾋﾒ)のあとたれて小松の院の御願所(ｺﾞｶﾞﾝｼｮ)なり 拝殿には御寄進として狩野興甫(ｶﾉｳｺｳﾎ)か歌仙の絵に当御代公家衆(ﾄｳﾐﾖｸｹﾞｼｭｳ)の御筆(ｵﾝﾌﾃﾞ)を一々(ｲﾁｲﾁ)拝見いたしつゝ 潮みちくれば田鶴(ﾀﾂﾞ)なきわたる芦辺(ｱｼﾍﾞ)の茶屋にこしかけて 向ひをみればそのむかし小野小町と業平の契りをこめし妹背山 渚(ﾅｷﾞｻ)にさらす布引の松にかゝれる藤代や 二番の札所紀三井寺 塩焼(ｼｵﾔｸ)甫(ｳﾗ)のその景趣(ｹｲｼｭ)三國無双の勝地なり さて夫(ｿﾚ)よりも西の方(ｶﾀ)しほがまの社(ﾔｼﾛ) 不老橋ゆけば程なく下馬の橋 轟(ﾄﾄﾞﾛ)く とうち渡り 御靈(ｵﾀﾏﾔ)の宮に参詣して 御社(ｵﾝﾐﾔｼﾛ)を伏しおがみ 麓(ﾌﾓﾄ)にくだり 天満宮を拝礼し 浦辺に立ちいでながむれば寄せて歸らぬ片男波 沖の浪間に数(ｶｽﾞ)みえて浮世をわたる海人小舟(ｱﾏｵﾌﾞﾈ) いかにこがるゝ浜千鳥 あはれを催(ﾓﾖﾎ)す折柄に日も入相(ｲﾘｱｲ)のことなれば 夕(ﾕｳﾍﾞ)を送る遠寺(ｵﾝｼﾞ)のかねほのかに聞之申候 夫(ｿﾚ)より人々打連れて西浜通を立歸り候へば 最早(ﾓﾊﾔ)夜陰(ﾔｲﾝ)なり申候 とかくは筆に盡(ﾂｸ)しがたくこそ候へ かしこ」
境内には枯死した根上松が展示されています。15世紀まで和歌山市中心部は紀の川西岸に連なる砂丘だったため、松の根元の砂が風雨によって流されて根元が露呈した特異な姿をした松が生じ、根上がり松と呼ばれていました。大正時代には天然記念物に指定された根上松が８本あったんですが、７本が枯死してしまいました。
本殿右手から奠供山(ﾃﾝｸﾞﾔﾏ)へ登る道があります。
奠供山は玉津島を構成していた六つの島の一つで、標高は35ｍです。神亀元(724)年、当地に行幸した聖武天皇はこの地からの景観の美しさに感動し、この風致を永遠に維持する事を命じて守戸と呼ばれる監視役を配置させています。
この行幸に供奉(ｸﾞﾌﾞ)していた歌人山部赤人(ﾔﾏﾍﾞﾉｱｶﾋﾄ)の長歌が『万葉集』巻六の917番として収録されています。
「やすみしし わご大君(ｵﾎｷﾐ)の 常宮(ﾄｺﾐﾔ)と 仕へまつれる 雑賀野(ｻﾋｶﾕ)ゆ 背向(ｿｶﾞﾋ)に見ゆる 沖つ島 清き渚に 風吹けば 白波騒き 潮干(ｼｵﾌ)れば 玉藻刈りつつ 神代(ｶﾐﾖ)より 然そ尊き 玉津島山」
続いて、反歌二種が918番と919番になっています。
「沖つ島 荒磯(ｱﾘｿ)の玉藻 潮干(ｼｵﾋ)満ち い隠(ｶｸ)り行かば 思ほえむかも」
「若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴(ﾀﾂﾞ)鳴き渡る」
こちらは参議藤原麻呂(ﾌｼﾞﾜﾗﾉﾏﾛ；695〜737)と推定される藤原卿(ﾌｼﾞﾜﾗﾉﾏｴﾂｷﾐ)の歌で、巻七の1222番に収録されています。
「玉津島 見れども飽かず いかにして 包み持ち行かむ 見ぬ人のため」
他にも和歌浦を詠んだ万葉歌は多いですが、殆どは「詠み人知らず」です。
巻七 1215
「玉津島 よく見ていませ あをによし 奈良なる人の 待ち問はばいかに」
巻七 1217
「玉津島 見てしよけくも 我れはなし 都に行きて 恋ひまく思へば」
天平神護元(765)年の称徳天皇行幸の際には、南浜に「望海楼」が営まれ、七日間の滞在が成されましたが、紀州藩の儒学者仁井田好古(ﾆｲﾀﾞﾖｼﾌﾙ；1769〜1848)は「望海楼」を奠供山の南麓の市町にあった物とし、文化10(1813)年に好古が撰文した望海楼遺址碑〔和歌山市指定文化財〕にはその事が刻まれています。
望海楼遺址碑は、元は奠供山麓の市町川沿いに建てられていましたが、明治33(1900)年に明治天皇が観艦式のため和歌浦に来臨された際、御召艦の装甲巡洋艦浅間から良く見える様に鄭供山山頂に移されました。
また、天保３(1832)年に仁井田好古が撰文した奠供山碑〔和歌山市指定文化財〕が本殿右手に保存されています。
奠供山の名が古い祭式に由来する事が記されています。
天保２(1831)年か翌年には元紀州藩主の権大納言徳川治宝(ﾊﾙﾄﾐ)が奠供山の整備を行い、山上に拝所を建てています。
明治43(1910)年には旅館望海楼が奠供山に観光用エレヴェーターを開設し、翌年には夏目漱石も乗っていますが、僅か５年で廃止されてしまいました。なお、漱石は大正２(1913)年の『行人』で、このエレヴェーターを「所にも似ず無風流な装置」と評しています。
奠供山は妹背山よりも標高が高いので眺望は見事です。
新和歌浦方面です。
片男波方面です。
紀三井寺・名草山方面です。
不老橋とあしべ橋(新不老橋)です。
《続く》
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