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2019年03月17日22:47

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ポンコツ

 道を歩いていて、偶然懐かしい男に出くわした。その昔、某大手出版社の編集者だったS君である。今はクルマ専門誌の編集者らしい。僕が三十代の頃、まだ二十代だったS君とはよく遊んでいた。お互いにクルマ好きで、僕もS君もイタリア車のオーナーだったのが縁で、よく箱根のターンパイクへとそれぞれのクルマをかっ飛ばしてドライビングテクニックを競い合う仲だったのだ。
 
「兄貴、お久しぶりです! お元気でしたか?」S君にそう声を掛けられた。
「いや、3年ほど前に、クモ膜下やらかして死にかけたんだ」と答える僕。
「お前の方は大丈夫なのか? 当時より随分と太ったようだけど」僕もそう訊ねてみた。
「私も心房細動で、通院しながら働いている状態なんです」心なしか暗い表情でそう答えるS君。
「なんだよ、お前も心房細動なのか。実は俺もだよ。3ヶ月に一度は病院で精密検査してるよ」
「えっ、クモ膜下と心房細動のダブルじゃ、大変じゃないですか!? 兄貴も深刻なんですね」Sの驚いたような顔が僕の目の前にあった。
「どうってことないさ。死ぬときゃ死ぬ。健康で、いつまでも続きそうな人生よりは、ゴールがなんとなく予感出来る人生のほうが幸せってもんだ」言いながら僕は何故か笑っていた。
「・・・兄貴。相変わらず性格がヤクザモンですね」目の前のSの顔が、今度は呆れていた。

 かつて僕たち二人が所有したイタリア車も、今思えばなかなかのポンコツ車だったが、それに負けず劣らず僕たちもポンコツになったんだな、と実感した。・・・・滅びが進んでいるな、と思った。
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