『グリーンブック』
<ストーリー>
1962年、ブルックリンのナイトクラブで働く用心棒のトニーは天才黒人ピアニストのドクター・シャーリーの南部へのコンサート・ツアーに運転手として雇われる。粗野で下品な白人のトニーと知的で冷徹なシャーリーの旅は最初はぎこちなかったが・・・
<コメント>
なるほど、と感心したのはこの映画がユーモラスに彩られ、始終笑えるシーンが絶えないことだ。確かに二ヶ月に及ぶコンサート・ツアーなのだから緊張ばかりはしていられないだろうし、緊張と緩和というのはもっとも笑える状況といえるからそういう意味ではコメディ映画ばかり撮ってきたピーター・ファレルが決して気張らずに自分の特徴を生かしたままで演出したのは正しかったように思える。全編に渡って使われるシャーリーがトニーに向かって言う「前を向け」という言葉が最初の方と後半では異なっていくのはコメディ演出でもあるのだ。
人種差別が当然とされた時代に最も差別が過激な場所にコンサート・ツアーに赴く黒人ピアニストと彼の運転手となったイタリア系用心棒の友情というとなにか作ったような物語に思えるがなんとこれが実話であり、作中に出てくるトニーの手紙も実物から引用されているというのには感心する。プロデューサーがトニーの実の息子であり、シャーリーにもインタビューして脚本を書いた(でも、映画化するのなら自分が生きている間はダメだと言われた)というからにはそれがそのまま作品の厚みとなっている。
それにしてもやはり主役の2人を演じる役者の巧いこと。ヴィゴ・モーテンセンはデンマーク系なのにイタリア系にしか見えないし、マハーシャラ・アリは冷徹のように見えながら内面で揺れ動く心が後半で溢れ出すという部分が実に感動的。
クライマックスでそれまで抑えていた二人のエピソードや感情があふれ出して観客を納得させる見事なファンタスティックな映像を見せてくれるし、エンディングに付け加えられたエピソードにも納得。
グリーンブック
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