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2019年01月11日21:20

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「世界を変える美しい本」

 昨夜、調子に乗って日記を書いた後、規模から言ったら日本で有数の大浴場へ。
 露天風呂の前に塩サウナがある。室内で頭のてっぺんから足の裏まで身体という身体全部に塩をすり込み、10分くらい過ぎると汗が滴り流れて塩粒のざらざら感が消え、さらに5分
我慢しているうちに体内の毒素が出たような感覚になった。濃い塩水が顔を流れるわけだから、目は開けていられない。亡くなった友人としばしば箱根の日帰り温泉施設「天山」に通ったことを思い出す。天山には塩蒸し風呂という塩サウナがあって、息苦しくなるものの出て塩を流すと爽快だった。俺はこうして生きていて、彼は死んだというのがなんだか不思議に思えた。
 塩まみれで洗い場へ行って、タオルで全身を軽くこすってからシャワーを丹念に浴びた。そして、なんだか身体によさげに思える赤茶けた鉄泉風呂に浸かり、身体を洗い流さずに浴室を出る。宿泊者には無料でムームーみたいな館内着を提供されているので、温泉で多少べとついたとしても問題ない。
 部屋に戻って、懸案だった生原稿を最後まで読んだ。
 窓から夜の海が見える、沖合に大型の船が3隻停泊しているのでかろうじて闇が海であることがうかがえる。1時間に1度、iPhoneを手にするものの、他にやることもないので集中力が涌いて、最後まで読み通した。
 寝る前にまた大浴場へ行って、熱海より10倍濃いらしい露天風呂に浸かった。全身を湯に浸した瞬間、「うー」と声が出てしまい、先で浸かっていた入浴客から怪訝な顔をされてしまった。
 入眠剤は使ったものの、あっと言う間に眠って、朝8時に起床。起き抜けにひとっ風呂浴びてから、部屋の中でチーズパンを1個、コーヒーとともに食べた。入浴疲れで食欲が湧かず、朝食バイキングはパス。
 今日これからがこの小旅行のメインだ。
 静岡県長泉町にある「ベルナール・ビュッフェ美術館」の別館で開催中の「世界を変える美しい本」展を見に行くために、私は駿河健康ランドに泊まったのだった。
 去年の秋、インドの手作り絵本出版社「タラブックス」とこの展覧会の紹介記事を読んだ。会期は11月10日から1月14日まで。
 インドの民俗画家の手による絵、紙漉きから版画の手法による印刷まで手を抜くことなく絵本を作る出版社、それがタラブックスで、その全容を伝える初の展覧会だった。会期が長期間なので安心しきっていたのだが、だんだんと終わりが近づいて来て、ようやくあと3日という時点で訪ねることになったのだった。
「ベルナール・ビュッフェ美術館」は当たり前のことながら、ビュッフェの絵が集められた美術館である。個人美術館かと舐めてかかっていたのだが、行ってみて驚いた。建物も収蔵も半端な規模じゃない美術館だった。いまの特別展示は初心者でも分かりよいように、年代別にビュッフェの作品を展示していて、軽く絵を眺めては解説を読むというのを繰り返していると、あっと言う間に30分くらいが過ぎてしまった。
 で、ようやく念願の「世界を変える美しい本」展だ。こちらは気合いを入れた。解説も一言一句、読んだ。
「この世にあるすべての木は物語をもっている」
 タラブックスの出版物でもっとも売れた絵本「Tree」の作者がインタビューで残した言葉だ。
 この警句を少しいじって「この世にあるすべての人は物語をもっている」と想ってみたら、私たちの世界はこの2文でほぼ完璧に語り尽くせる。もちろん、ミトコンドリアもヘビも犬も猫も地球には存在するが、それは木と人の間に書き尽くせないほど多くの生物がいて、木と人の間に含まれていると解釈できるのだ。
 母なる神を描いた絵、果実を売る少女、神聖なバナバの葉っぱ……。
 タラブックスの主要な絵本すべてが集められ、自由に読めるようにもなっている。
 子ども館にも作品は展示されていて、たまたま誰もいなかったので、床に寝そべってみた(そのフロアは靴を脱いであがる規則があった)。絵までは距離が遠くて何も見えないに等しかったけれど、この静けき空間をぐるりと一周眺めてみたら、心底くつろげた。
 帰りのドライブはちょっときつかったけれど、2日間で300キロの一般国道をクルマで走り回って、海をいっぱい見て、絵も堪能して、新年そうそうにいい経験を得ることができた。
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