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2018年09月21日12:01

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キンモクセイ

10月になると、キンモクセイが匂いはじめる。
まるで恋のような、幸せな空気に包まれる。一番好きな季節。

中高生のころは、ずっと自転車通学で、朝は坂道をブレーキかけずに、なおかつさらにペダルを踏み込んで降りていく。それで、いつか急に右から渡ってきた女子2人が避けきれず、衝突したことがある。
「キャー」という声。これわたしには出せないんだよなあ。この状況で妙に感心しながら自転車を起こす。
ただ「どうしよう」と繰り返し、大したケガじゃないのを確認して謝って、また自転車に乗って行った。

帰りも変速器をあげて立ちこぎで上る。疲れたら、降りて自転車を押していく。後ろから誰かが追い抜いていくと、ふわっと風が起きる。
10月の少し温かい午後。ああ風が吹いたなあ、それだけで目で追うこともなく、でも気配で気づいている。

恋というのは、どうにもできなくなってから始まるようだ。いつもいつも。
もう会えなくなってから、眠る前に、たった1年足らずの思い出を繰り返し繰り返し、そしてだんだん歪んでいって、新解釈が加わって、少し泣いて、

会いたいのに、もう普通には見られなくなって、殆ど無視みたいになってしまう。
体育館で並んでいて、少し詰めたら隣同士になって、気配だけ感じて横は見ない。自転車で追い抜かれても、風が吹いたなと思うだけ。
ハンドボールの試合を見てて、シュートが格好いいのに今更気づいて、そして卒業。それでおしまい。
それでもとても幸せな、そのころの思い出。

意外とバレてない(多分)。誰にも話さない。親にも妹にも友人にも。何もなかったように、フェイドアウトしていった。
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