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2017年01月25日22:04

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どうしても書き残しておきたい

<いまや荒木経惟といえば、「大股開き教」の教祖サマだが、大阪の一信者であるカメラマン・独多宇一さん(二九)が、このほど荒木ばりの写真集『にんじん』をめでたく出版した。
『にんじん』はモノクロ五十二ページで
「一人の女性のすべてを覗きみる形で、写真ルポをしたかったんです。彼女の日常をトータルに観たいとネ。だから当然彼女の深奥に潜む性だってあばきたかった。これボクの本音です。そして荒木さんのような攻撃的な撮り方に一歩でも近づきたかった」
 と独多さん。
 モデルは当時、大阪・中之島の某大手銀行に勤務の洋子さん(仮名、二四)。
 くどくどと御託を並べるより、とりあえず『にんじん』のページを繰ってみよう。
 四ページ、出勤途上。ワンピース姿でいかにも清楚。
 七ページ、勤めを終えた後、息抜きでディスコへ。
 十ページ、海が好きな彼女は和歌山の産湯海岸へ。ワンピースの水着姿。
 二十ページ、桜宮のラブホテルで、生まれてはじめてのヌード撮影。
 二十九ページ、しなやかな指で胸を揉みしだくドアップ。
 三十ページ、指はパンティの中。オナニーが始まる。
(中略)
 洋子さんは語る。
「何かあの頃、ふっきりたいといった心境でした。人間関係にしても仕事にしても。『古いモノをこの際全部捨てたら』と、独多さんにモデルを勧められた時、あの人のためというよう私自身のためにやろうと思いました」
(中略)
 独多宇一さんは1年前まで写真家じゃなく、学友社(家庭教師の斡旋を主とする会社)の社長・XXXX(原文は実名)であった。写真に関してはズブの素人さんだったのである。
 が、独多さんは高校以来「人間、それも女性をとことん覗き見たい」という志向で、まずは昭和五十五年、小松左京率いる創翔塾の門下になった。これが契機となり、夜の世界への彷徨が始まっていく。
(中略)
 学友社でバイトの世話をした洋子さんに声をかけ、今回の覗き写真集となった次第である。
 府立大和川高校以来の親友、朝比奈保さん(二九)は、独多さんを「彼は宣伝販売員、家庭教師、測量助手といろんな仕事をしてきたが、他方で一貫して節穴から社会を覗くことを趣味としてきましてネ(笑)。覗きの最たるものがカメラだったんでしょう。(中略)もっとも高校時代、生徒会長として、建設的な運動をしたり、反戦フォークを歌ったりで根は真面目で社会派。今でもそうだと信じています」
 高校の同窓生で、現在は独多夫人のXXX(原文は実名)さん(二九)の意見も、ほぼ朝比奈さんと一致する。
「彼の趣味に気づいたのは、まだ私たちが泉北ニュータウンの団地住まいの新婚一年目だったの。ちょいちょい部屋を暗くして、双眼鏡を持って団地の各家庭を覗いているのです」
(後略)>

 この下手くそなヨタ記事はその後も延々と続いている。独多さんはもちろんのこと、彼を知る人に取材をした。色町飛田の売春婦にもインタビューをしている。独多さんが写真撮影の許可を取れた女性だったからだ。
 当時、私は週刊大衆の記者で、自費出版でエロ写真集を出しただけの"好事家の民間人”をとっ捕まえて、延々4ページに亘ってこのような記事を書いた。昭和56年のことだ。
 彼はその後、本当にカメラマンへの道に進み、一時は関西のスポーツ新聞に入社して風俗面の記者としてエロ記事を書きまくった。
 先月の4日、大阪から上京した独多さんと会ったとき「そう言えばボクな、まだ『にんじん』を持ってるで。大衆に書いた記事原稿も捨てず、にんじんの見返しに挾んで置いてんねん」とくだけた関西弁で話した。
 知り合って何年になる? 計算してみないとわからない。
 12月に会ったその日、独多さんは来年(2017)4月に本を出すことが決まった。2016年の初春から彼は風俗写真や記事から少し離れた創作をしてみたい、と意欲を示した。やれやれ、と私はけしかけ、その後も彼が上京するたびに会って、相変わらずエロな話ばっかしていたのだった。
 先月のエロ話は、私が突拍子もない質問をしたところで、火がついた。ビジネスホテルでフロントに電話をかけて呼んでもらうマッサージは、いやらしいこともやってくれるのか、という実に低俗な問いだったのだが、それから30分近く、独多さんはまるで子どもを諭すがごとく、”スペシャルマッサージ”に持っていく極意を講義し、実体験についても詳細に語ったのだった。
 いつだって私たちの会話はあまりに馬鹿げた内容だった。
 
 昨夜、寝る前にL'Arc-en-CielをYouTubeで見ていた。90年代半ばから私はL'Arc-en-Cielの世界観とボーカルのhydeが好きで、昨日は「花葬」を飽きずに2回聴いた。
 https://www.youtube.com/watch?v=tE0WMoJuTYY
 歌詞にギリシャ神話のタナトスをベースにした作品が多くて、「花葬」はその色が最も濃く歌われている。

 瞳 あけたまま 腐食してゆく身体
 あざやかに失われる この意識だけを残して
 春を待てずに

 朝、ラズリとじゃれていたら、電話がかかってきた。週刊大衆の記者である友人からだ。
 何を言ってるのかよく聞き取れなくて、もう一回繰り返してくれ、と頼んだ。
 彼が喋っている内容は、日本語として理解出来た。「ウソだろ? 冗談!」と言ってみたが、陳腐な質問であることは分かっている。「よりによって、またか」と思った。
 2013年の夏、私の「相棒」みたいな週刊大衆時代の本間君が亡くなった。私はたった1年で週刊誌の記者を離れたこともあって、その頃から付き合いのある人間は6、7人しかいない。いちばんよく会っていたのが、私の取材が契機となってエロカメラマンになった独多さんだった。
 ようやく実ろうとする本が出る春を待たずに。
 悔しくて、涙が出そうになった。
 電話をくれた友人の勧めで、独多さんのスマホに電話をした。彼の長男が出た。
 電話を掛ける前、当然、葬式に行こうという気持ちだった。が、今日の午後3時に大阪の八尾で本葬を終え、家族葬であることを知った。時計を見ると午前10時半を少し回ったところで、到底八尾に3時までには着かない。
 葬式のことなんてどうでもよかった。
 どうしてまた、春を待たずして、髪一本の予兆すら俺に見せず逝ってしまったのか。
 希望を胸いっぱいに春を迎え、夏になる頃には念頭の初心を忘れてダレてしまい、秋の夜長には中古DVDを買っては気に入った映画を繰り返し見て、冬を告げる木枯らしが吹いてきた頃になると「まあええわ。けど来年はええ年にせ。ちょっと頑張ってみるわ」と私に言うのが友だちとしての義務だろう。
 スマホの連絡先に故人が一人増えた。
 記憶は消さない、電話番号も消さない。

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