観終えて暗くなった。それほどいい芝居だ。
恐怖を盾に嘘の告白を迫るやり方は、今も昔も変わらない。
特に人より少々裕福な僕は(別に自慢じゃないです)、人の多さの流れで全ての善悪が決まってしまうことに恐怖を感じる。
嫉妬だけで敵意を表す人が人々を先導し始めたら、逃れる手立てが全くないからだ。
本当、嫉妬が一番恐ろしい。
そして嫉妬の気持ちに飲み込まれた人は、善悪など関係なく、敵が壊滅するまで徹底的に攻撃してくるだろう。
この芝居はそういう芝居。
誰もが神に誓って皆行動する時代だが、攻撃するのに手段を選ばなくなった少女は、その神でさえ利用する。
何でも利用するのは、そうしないと自分の邪悪さや、それまで積み重ねた嘘が露呈するからだ。
だから裁判が終わり、しばらく経つと、その少女は失踪する。
嘘がどこで露呈するかわからないから。
ちなみにこの芝居、観るのは二回目(前は新国)だが、うそつきの少女たちのアンサンブルが常に圧倒的で新鮮だ。
少女たちが本気でだまそうとした時、それはもう無敵、と言っていいほど強力で、それは前回見た時の印象と全く変わらない。
芝居の最終的な力点は、信心深く正直に生きようとする人が、そのまことを貫くために殉ずる、ということだが、
見終えて時間が経った今なら冷静に、「自分なら嘘ついてでも生きたい」と思うが、
見ている最中は、嘘をつきたくない、嘘ついて生きるのは申し訳が立たないと思っていた。
それくらいこの台本は強烈だ。
どこかでやるときは、きっとまた観るだろうし、観るべきだろうと思う。
余談。黒木華が出てたからか、岩井俊二が関係者席に来ていたよ。
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