シネマカリテで「ブリーダー」。これが最後のカリテ・シネマ・ファンタスティックコレクション。今回はあまり見られなかったな。映画はニコラス・ウィンディング・レフン監督が99年にデンマークで撮った作品で、映画祭上映の時から気になっていた。登場人物たちを足から映し、テーマ曲をかぶせるファーストシーンから好調。
夜中にB級映画を鑑賞する男たち。主人公は若きマッツ・ミケルセン演じる映画オタクのビデオショップ店員。一目ぼれした女性客を不器用にデートに誘う。好きな映画は「悪魔のいけにえ」などと言い出すのがおかしいが、約束を取り付ける。しかしデート現場から引き返してしまう。
主人公の友人は、同棲している女性に妊娠を告げられ、ストレスを募らせる。女性の兄はチンピラで、ガラスに映った自分のファイティングポーズを見て悦に入る。
母親になる心構えができている同棲相手や、しっかりと仕事をしている場面がある女性客と違い、男たちは大人になり切れない。友人は同棲相手に暴力を振るい、それによって兄との関係が悪化する。実際に人が銃撃される場面を見た友人は、銃を購入。この安易さ。そして兄の友人への報復が、あまりに恐ろしい。この暴力の連鎖は、今の方が実感がある。
仲間を失った主人公が、初めて女性と向かい合おうとする。そこに流れる女性ボーカルのジョン・レノン「ラブ」。このラストが良かった。
もう一つ面白いのは、主人公の映画オタクぶり。陳列されたVHSテープをワンカッをトで撮る演出から始まり、客に好きな監督をまくしたてる場面では、フェリーニもコルブッチもデオダードも同列。日本代表は黒澤明と本多猪四郎。ここは共感してしまった。オタク同士がフレッド・ウイリアムソンとスティーブン・セガールのどちらが上か討論する場面も楽しかった。
こんな映画が見られるとはありがたい。今後も続けてほしい企画だ。
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