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2016年08月25日11:27

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映画『セルフレス/覚醒した記憶』試写会レビュー[日本公開:2016年9月1日]

★★★☆☆
 生命医学の進歩で、SFの世界でも「記憶の移植」がポピュラーになってきました。本作以外にも邦画で『秘密』が公開中です。『秘密』では冷凍保存された遺体から記憶を移植するシーンに、いくらSFでもそこまでは無理があるかなと思っていたら量子物理学が趣味という技術者に聞いてみたら、科学的には可能になるだろうとの予測でした。脳というものは、メモリーのような機能を持っていて、記憶された過去については死後にも何らかの痕跡が残っているそうなのです。

 話は戻って、もし「記憶の移植」が可能としたら、皆さんは、傷つき古くなった身体を脱ぎ捨てて、若くて新しい肉体に着替えることを望むでしょうか?
 本作は、全く新調した肉体に移植すると開発者は、依頼者の富豪に説明します。遺伝子を培養して作り出された肉体に、電気信号化した脳の情報を送りこむという近未来システムなのだと。

 不老不死が人類の永遠の願いであるあるなら、病にかかり、年老いるたびに転送を繰り返せば、それがかなうことになります。 私たちはこの禁断の誘惑に勝つことができるのでしょうか?

 なぜ禁断かというと、問題は「若くて新しい肉体」をどう調達するかということだったのです。もしそれが新品の肉体ではなかったとしたら? 本当は前の持ち主がいて、その人物の記憶が残っているとしたら?

 本作は、今までSF作品が扱ったことのない斬新なテーマを、ミステリアスに描きます。移植後に記憶が戻っていく元の肉体の持ち主と秘密を保持しようとする開発した秘密組織の間で起こる激しいバトルも加わります。
 一つの肉体に、前の記憶と新たな移植された記憶が宿ってしまった主人公。前の記憶に残っている妻とかわいい娘を組織から守るなかで、最終的にどちらの記憶を選択して生きていくことにするのか問われていくヒューマンドラマでもありました。

 物語は“NYを創った男"と称えられる著名な建築家ダミアン・ヘイル(ベン・キングズレー)が、余命半年と宣告されるところから始まります。
 偉大な知性とカリスマ性をあわせ持ち、政界や財界をも操るダミアンでさえ癌には勝てませんでした。支配的な父を嫌うひとり娘のクレア(ミシェル・ドッカリー)との仲も修復できず絶望するダミアン。そんな彼に、天才科学者のオルブライト(マシュー・グード)が、遺伝子操作で作った肉体に頭脳を転送しないかともちかけます。
 莫大な料金と引き換えに68歳のダミアンは死に、若い肉体の新たな人生が始まります。けれども、ある日薬を飲み忘れたダミアンは、あまりにもリアルな幻覚を見るのです。彼の新たな肉体はクローンではなく、マーク(ライアン・レイノルズ)という妻と幼い娘がいる特殊部隊の兵士だったのでした!
 真実を知ったダミアンとマークの妻マデリーン(ナタリー・マルティネス)は、オルブライト率いる秘密組織に命を狙われます。果たして、組織の正体とは? 今、知能×パワー=〈最強兵器〉に生まれ変わった男の、たったひとりの闘いが始まるというもの。

 評価としては、生まれ変わったダミアンが、マークとしての記憶を取り戻して、組織と多多数本題に入るまでが、少々冗長気味だと思います。その分、組織との闘いのアクションシーンが短めで、物足りません。そのためスリルが感動へと変わるはずのラストシーンも今一つ、食い足りなさを感じてしまいました。
 マークとして家族を大切に慎ましく生きるのか、ダミアンとして名声と富に囲まれて生きるのか、ストーリーはラストアンサーに向かって突き進むものの、やはりリアム・ニーソン主演『96時間』のように、主人公が徹底して家族を守るシーンをしつこいくらい見せつけてこそ、主人公のラストの選択が重みを増すというものです。

 それでも激しいバトルシーンが続く本作。元特殊部隊員という設定のマークを演じたライアン・レイノルズは、様になっていました。『デッドプール』で一躍人気になったけれど、今後はもっと本格的なアクション映画で活躍を見たいものですね。ちなみに奥さんは無事鮫から難を逃れることができた『ロスト・バケーション』のブレイク・ライブリーです。

 ニューヨークの不動産王ダミアンを演じた名優ベン・キングズレー。ただ黙って立っているだけで、どん底から頂点に駆け上がった男の凄みを全身からにじませていました。

 研究のためにはタブーも犯すマッドサイエンティストのオルブライトには、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のマシュー・グード。英国イケメン俳優の中でも卓越した演技力を持ち、冷たい狂気をはらんだ瞳が恐ろしいほど美しいかったです。

 
●Introduction
『デッドプール』などのライアン・レイノルズが主演を務め、『白雪姫と鏡の女王』などのターセム・シン監督がメガホンを取って放つSFアクション。余命半年と宣告された資産家が新たな肉体を得て復活したものの、思いがけないトラブルに巻き込まれる姿を活写する。復活前の主人公を、『ガンジー』などの名優ベン・キングズレーが好演。明晰な頭脳と高度な戦闘能力を持つハイブリッドの男が繰り広げる孤独な戦いに興奮。

ニューヨークの超セレブの建築家ダミアン(ベン・キングズレー)は、ある日余命半年を言い渡される。一人娘との関係もぎくしゃくしたままの彼は自らの運命を呪うが、天才科学者オルブライト(マシュー・グード)がダミアンにある提案をする。それは遺伝子操作で新たに創造した肉体に、68歳のダミアンの頭脳を転送するというものだったが……。
[日本公開:2016年9月1日]

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