mixiユーザー(id:58808945)

2016年08月22日21:03

212 view

吉田沙保里の言の葉

「金メダル以外は皆一緒ですよ。」(吉田沙保里、女子レスリング選手)

 
 ロンドン五輪で旗手に選ばれ、リオ五輪でも全日本選手団の代表を務めた選手である。一見大変な自信に聞こえるが、その実、彼女は55kg級でアテネ、北京と2連覇を達成しているだけでなく、同クラスのレスリング世界選手権で9連覇以上。この記録は世界記録タイである。

 自宅でレスリング道場を開いていた父親から手ほどきを受けてここまで来たが、それも3歳のときからだという。正にレスリングの英才教育を受けた人だったといえる。しかし彼女にスポーツのエリート臭さは全くない。北京五輪で金メダルを取ったときも、

 「4年後のロンドンも勝ちたい(金メダルを取りたい)。」

 とあっけらかんと言った。この他意のなさとメダルを取ったことに対して、
当たり前の態度で少しも誇らしげなところが無い。そんなところが多くの人から好感をもたれているのかもしれない。

 翻って最近のスポーツの報道を見れば、五輪に限らず、気になるところが幾つかある。

 ある大会で連盟の人がこんなセリフを言った。

 「準優勝チームも最後の最後までよく戦いました。最後は紙一重の差で負けてしまったけど、準優勝おめでとう。」

 これを見て、違和感を覚えるのは自分だけではあるまい。

 準優勝チームに対し、「健闘をたたえる」ならばまだ分かるが、「おめでとう。」はないと思う。吉田選手の言う通り、金メダル(優勝)とそれ以外とでは雲泥の差があるのだ。実際金メダルと銀メダルとでは世間の関心度がまるで違う。

 「なでしこジャパン」も一度は優勝したから彼女たちの待遇が明るみに出たことだが、決して恵まれた環境で練習をしていた訳ではないことが分かってきた。あれほどの実力を持ちながら、以前は飛行機など、エコノミークラスで移動を余儀なくされていたと聞いた。

 スポーツが依然として、文化ではなく、娯楽に過ぎないと思われてしまっているのも勝負の世界に対する認識の差に拠るものではないかと思う。実に吉田選手は日本のスポーツ界の痛いところを鋭く衝いた言葉を放ったと思わずにはいられないのである。

 現に「日本新記録です、しかし予選落ちでした」という悲しい報道がスポーツで目立つ中、諸外国のコーチ、監督に日本人が現役時代の何倍もの年収で活躍しているのはどういうことか。諸外国では文化のひとつと認められていることの証左ではないのか。吉田選手は悔しの銀メダルだった。今回の彼女の悔し涙もまたお涙ちょうだい的な報道に強烈なパンチを浴びせた。

 惜しくも銀メダルだったが、彼女の勝利への熱き姿勢はスポーツ報道の在り方にきっと良い影響を与えてくれるはずだ。

 最後までお読み頂き、ありがとうございました。

4 6

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する