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2016年08月08日12:26

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映画『青空エール』試写会レビュー[2016年8月20日公開]

★★★★★
 『陽だまりの彼女』『ホットロード』『アオハライド』『くちびるに歌を』などを手がけた青春映画の巨匠・三木孝浩監督の最新作。
 宮沢賢治の再来かとも言われる三木監督。そのみずみずしく、切ない恋愛の世界観を作り出してきた感性は、本作でも多いに発揮されています。青春ド直球の爽やかな感動作です。
  
 ただこれまでの作品は、演出が過剰すぎて、強引な展開になるところもあって、あまり好きになれない監督でした。ところが本作では、そんな力みが取れて、ごく自然に登場人物へ感情移入ができました。「今作が自身の集大成」と語るほどの、感動のこもった傑作だと思います。
 
 物語は、吹奏楽の名門・白翔高校を目指して入学してきた小野つばさ(土屋太鳳)は、憧れの吹奏楽部に入部しようとします。しかし楽器など演奏したことがない、全くのずぶの素人でした。
 トランペットが吹きたいという顧問の杉村(上野樹里)から、肺活量を鍛えないとと駄目出しを喰らってしまいます。それでも諦めないつばさは、何とか入部を認めてもらうものの、全国大会を目指すレベルの高い練習についていけず、何度も挫折しそうになります。
 
 そんなつばさを勇気づけてくれたのが、クラスメートで野球部員の山田大介(竹内涼真)でした。そんなつばさを勇気づけてくれる、クラスメートで野球部員の山田大介。お互い夢に向かって励まし合うふたりは、ある「約束」をかわします。それは、いつか甲子園に大介が出場し、つばさがアルプススタンドからトランペットで応援すること。
 つばさが、吹奏楽に憧れたのも、子供の頃に聞いた白翔高校吹奏楽部による野球大会での応援演奏に感動したからだったのです。
 
 そんなつばさの夢がすぐ叶いそうになります。1年生の夏、地区予選の決勝まで勝ち進んだ野球部を吹奏楽部が応援ことに。ところが途中出場した大介のミスで敗退してしまいます。グラウンドで立ち尽くす大介のために、つばさは一人でトランペットを吹いてしまい、謹慎処分となってしまいます。実は、いつの間にかつばさには、大介へのほのかな想いが芽生えていたのでした。
 
 心配して自宅へ訪ねて来た大介に、つばさは自分の想いを抑えきれずに告白しますが、フラれてしまいます。大介は、仲間の夢を潰してしまった自分が許せなかったのでした。 ふたりは“両片想い”のまま、それぞれの夢を追いかけるあまり、あっという間に、高校生活、最後の夏がやってきます。夏の大会を目前にして、大介は練習で深刻な怪我を負ってしまいます。一方つばさも、二大会連続優勝を逃したプレッシャーのなかで、レギュラーの座を、自分が指導した1年生に奪われてしまう事態に。
 つばさと大介の恋の行方は?そしてふたりの夢のたどりつく先は?
 
 
 誰かを応援すること、夢に向かって全力をつくすこと、人を好きになること。「まっすぐな気持ち」の美しさと強さを思い出させてくれる作品でした。
 自分ひとりでも余裕がないのに、だれかを本気で応援することは大変なこと。それでもだれかにエールを精一杯送ることは、結局自分を励ますことになるのだという台詞には、とても共感できました。

 高校入学時、人前で自分の気持ちを話すことが苦手だったつばさが見つけたのが、音楽でした。"頑張っている大介くんを見ていたら、自分も一生懸命、応援したくなる。この言葉にできない気持ちも、音には込められる”とつばさは気づき、トランペットの練習に打ち込むのでした。
 
 そんなつばさの直向きさを見せられると、高校時代に部活に打ち込んだ人はもちろん、そうでない人も、あのときの「空気」が鮮やかによみがえり、きっと感情移入してしまうことでしょう。そして「気持ちは届く!」と勇気をもらえることでしょう。
 
 いつも下ばかり見て、すぐ泣いてしまう引っ込み思案なつばさを土屋太鳳が好演。思わず「守ってあげたい」と思いたくなるキャラでした。そんなつばさが、大介と出会い、吹奏楽に打ち込んでいくなかで、次第に夢に向かって折れない心を掴んでいく変化も見事に演じていました。
 今回初の指揮者役として上野樹里が出演します。部員の生徒に対して厳しく指導するキャラは、「のだめカンタービレ」のファンとしては、凄いイメチェンに感じました。あののだめちゃんが指揮棒振るなんてね、彼女も今や人の妻。時代の流れをしみじみ感じましたねぇ。
 
 あと毎週見ているTBS日曜劇場『仰げば尊し』も高校吹奏楽部の物語。こちらも楽器初心者の悪ガキを部員に抱え込んで悪戦苦闘中ですが、吹奏楽のビギナーの苦労や全国大会で優勝する難しさは、本作の方がより強く感じさせてくれました。ぜひドラマのほうもご覧になってください。

●Introduction
高校デビュー』『俺物語!!』の原作者・河原和音による人気コミックを、『アオハライド』などの三木孝浩監督が映画化した青春ドラマ。初心者ながら吹奏楽の名門校に入学した女子高生と、同級生の野球部員が互いへの気持ちを胸に、共に励まし合いながら甲子園を目指す姿を描く。主演を『orange−オレンジ−』などの土屋太鳳が務めるほか、『仮面ライダードライブ』シリーズなどの竹内涼真、NHK連続テレビ小説「まれ」で土屋演じるヒロインの弟を演じた葉山奨之が顔をそろえる。

ストーリー:甲子園のスタンドで野球部の応援にいそしむ吹奏楽部にほれ込み、名門・白翔高校に入学した小野つばさ(土屋太鳳)は、野球部の山田大介(竹内涼真)と出会う。互いに甲子園を目標に頑張ろうと約束を交わすが、トランペット初心者のつばさはなかなかうまくいかず、くじけることもしばしば。そんな彼女を励まし、同じクラスでもある大介にいつしか惹(ひ)かれていくつばさだったが……。
[2016年8月20日公開]

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