新聞屋さんからチケットを入手。でないとまず行かなかった展覧会。世界遺産を紹介(観光案内)するだけの展覧会はあまり興味がない。どうせ行かれないからと思ってしまうから(笑)でもこの展覧会には行って良かった。ポンペイ遺跡の歴史資料というより、美術品として優れていることに着目して展示してあった。「ポンペイ展」ではなく「ポンペイの壁画展」だったのだ。壁画の大きさに合わせて展示室をゆったりとって再現、古代ローマ邸宅や別荘の臨場感を出した第1章、第2章を楽しんだあとは、壁画の題材を読み解く第3章と4章は美術品として細部まで鑑賞出来る。満足。
六本木ヒルズはすごい人。同フロアの展望室で「セーラームーン展」をやっていた。壁一枚隔てただけなので喧噪が聞こえる。壁画展はガラ空きでシーン。1900年前のこんな貴重な壁画をケースもなしでかぶりつきで見る贅沢さ。混んでいなくて良かった。漆喰、フレスコの壁は湿気でやられてしまうよ。
http://www.tokyo-np.co.jp/pompei/
「ポンペイは、現在のイタリア、ナポリのあたりに実在したローマの古代都市でした。ローマ帝国全盛時代に、ローマのほぼお膝元として数百年間にわたり、栄えました。そんな中、紀元79年8月24日〜25日にかけてヴェスヴィオ火山の突然の大爆発により、一瞬で高熱の火砕流に街全体が飲み込まれ、街ごと全て、瞬時に消滅します。」
会場には、紀元79年8月24日午後の噴火を端に、繰り返し起こる火砕流に都市ポンペイとエルコラーノが一瞬のうちに飲み込まれているCGが流れていた。短時間に沢山の火山灰が降り積もったおかげで、火山灰がシリカゲルの役割を果たし綺麗に保存されたのだと言う。また、ポンペイより近いエルコラーノはすぐに高温の火砕流に飲み込まれたために木が炭化し、瞬時に埋没した。人々は逃げる間もなく一瞬で日常を断たれ、歴史を次世代に引き継ぐことが出来なかったけれど、こういった形で歴史に残るのというのはなんとも皮肉。人間の営みとは、歴史とは、、、と考えてしまうなぁ。
第1章 建築と風景
《赤い建築を描いた壁面装飾》
一般の裕福な家庭を彩っていた壁画。宮殿のような建築物が遠近法や陰影法で騙し絵のように描かれている。部屋を荘厳に、そして広く見せるのが目的なのかな。
《詩人のタブロー画がある壁面断片》
細かい。そして美しい。植物はまるでリバティプリントのよう
《エジプト青の壁面装飾》
エジプト青という水色が明るくて綺麗。縁文様や馬の尻尾が可愛らしい。
第2章 日常の生活
ポンペイには農園別荘が多くあり、葡萄が収穫できたそうだ。壁画には酒の神ディオニュソス(バッカス)に関連した主題が多い。カルミアーノの農園別荘の再現した一室は圧巻だった。
《植物の燭台》
《コブラとアオサギ》戦っている!
《犬のシュンクレトゥス》シュンクレトゥスという名の飼い犬。
動物たちも可愛い。
《戦車競走》の馬も生き生きして良かった。
18世紀の人たちが切り取って額に入れ飾っていたらしい。
第3章 神話
ローマ人にとって、ギリシャ文化の教養を持っている事はステータス、よってギリシャ神話を描いた壁画も多い。後世の絵にも繰り返しかかれた題材、1世紀から79年まで描かれたもので見るのは新鮮だったし、想像以上に精緻、リアルなのにはその文明の高さに改めて驚くしかない。
中でも1室に飾る次の3点が見事。1世紀後半第4様式、エルコラーノで発見
第4章 神々と信仰
《トロパエウムを掲げる有翼のウィクトリア》
トロパエウムとは戦勝記念柱のことでトロフィーの語源となっている。ウィクトリアはヴィーナスの事。ウェヌスはアフロディテのことで、それもまた赤い背景色が映える。
《踊るマイナス》
マイナスは酒神ディオニソスの信女。あちこちの壁画に登場していて、18世紀に何度も複写されたほど人気だとか。オリーブの冠、右手にタンバリン、左手に細い杖、杖の先はキラキラ、アンクレット、透ける衣で宙を舞うすがたはディズニーの妖精のようで愛らしく美しい。
《フェニックスと二羽のクジャク》
と思ったら、こんなヘタな壁画もある。クジャクはともかく、とても不死鳥にはみえない。
7月3日まで。予備知識なくても楽しめます。
ログインしてコメントを確認・投稿する