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2015年12月23日00:10

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「母と暮せば」@渋谷シネパレス

吉永さんと二宮くんが親子ってどうなのexclamation & questionと思いつつ、2004年『父と暮せば』(黒木和雄監督 宮沢りえ×原田芳雄)が素晴らしくて記憶に残っているので、こちらもやっぱり気になって。土曜の朝一の回へ行って来た手(チョキ)

1948年8月9日、長崎。一人で慎ましく暮らしている助産婦の伸子(吉永小百合)。夫と長男は戦死し、次男の浩二(二宮和也)も3年前の原爆で亡くなった。浩二の恋人だった町子(黒木華)はそんな伸子のことをずっと気にかけ、今でも足繁く通ってくれている。そんなある日、伸子の前に浩二が幽霊となってひょっこり姿を現わす。以来、浩二はたびたび現われては、伸子と思い出話に花を咲かせるようになる。笑いの絶えない楽しい2人の会話だったが、最後は決まって町子の幸せへと話が及んでいくのだったが…。

井上ひさしさんの原作である『父と暮せば』は戦後の広島を舞台にした父と娘の物語で、戦争で父や友人を失い自分だけが生き残ったことに負い目を感じながらひっそり暮している娘の前に亡くなった父が現れるお話。長崎を舞台にした物語が描きたかったという井上さんの遺志を、山田洋次監督が受け継いで作られたのが今作だそうで、こちらは原爆で死んだ息子が生き残った母の元に現れるお話。戦争ものであるけれど、時にはユーモアを交え、ファンタジーであり、ホラー要素もちょっとある不思議な味わいの作品だった。

直接的な悲惨なシーンはないが、山田監督の戦争に対する想いは色濃く反映されている。浩二が大学で講義を受けている時、強烈な光の直後、ガラスのインク壺が一瞬でぐにゃりと溶ける。この場面だけで原爆の凄まじさをまざまざと観客の目に焼き付ける。また、浩二が"自分が死んで町子が生き残ったのは運命だ"と言うと、母の伸子が"運命ではない。人間が計画的に行った悲劇なのだ"と激しく反発する。この2つのシーンだけでも山田監督の真っ直ぐで強い反戦メッセージがしっかりと伝わってきた。

吉永さんはまあ、良くも悪くもいつもどおりだよね。でも、いつもをキープできるっていうのもある種の才能なのかな。死んだ息子が突然現れても、すんなり受け入れて嬉しそうに話しちゃうところとか、なんだか可愛くてほんわかしてて、似合ってたけどね。対する二宮くんはもう文句のつけようがないexclamation ×2おしゃべりで朗らかでちょっと甘えん坊の母親大好きな浩二を好演。憎たらしいくらいうまいよね。で、それをうまいでしょって感じにみせないからすごい。戦略的になのか、あまり多くの作品に出ないのもまた価値を高めているのかもウインク

華ちゃんがまた抜群ぴかぴか(新しい)愛する人を失い、職場の仲良しの同僚も失い、自分だけが生き残った負い目を感じて生きている町子。残されたものの苦しみや悲しみ、でも前に進まなくちゃいけない、でも幸せになっていいのか、そんな葛藤を豊かな表現力でみせてくれた指でOK

伸子に気があり、ちょくちょく顔を出しては闇物資を持って来てくれる"上海のおじさん"役の加藤健一さんも味があってよかったし、伸子の家の隣に住む広岡さんもいかにもなおばさんっぷりが見事で、この二人の人間味や逞しさが救いでもあった。

その他、浅野忠信、本田望結、小林稔侍、辻萬長、橋爪功といったベテランや個性派が脇を固め、がっちりとこの物語を支えている。望結ちゃんのシーンがまたなんとも切なかったなぁ泣き顔

誰しも忌まわしい過去はできれば思い出したくないだろう。大切な人を失った悲しみを抱え、自身が後遺症などで苦しんでいる人もたくさんいると思う。でも、戦後70年経った今、どんどんと過去が遠くなっていく中で、このような作品は作り続けられ、語り継がれていってほしいと思う。
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