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2015年10月16日00:23

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コブツアー 2


 眠い目をこすりながら食堂へ朝食をとりに行くと、窓の外は暗く灰色の雲に閉ざされ、時折強い風とともに真黒な雲が枝先をかすめるように飛び去っていく。幸い雨はまだ落ちてきていないようだが降り出すのは時間の問題だろう。出発前の天気予報ではまったく雨の心配がなさそうに見えたので、今回は雨具の用意が無い。最悪コンビニでカッパを調達するくらいで何とかなるだろうとの甘い見通しは裏目にはまったようだ。ましてここは標高1000m、コンビニなどあるわけがない。おまけに先週から長引く風邪の症状も思わしくなく、無理をすれば身体に大きなダメージを残しそうだ。今日は適当に叩いてすぐに切り上げてしまおう。


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 米屋さんの先導で出発。4人とも雨具は無いが現場は宿から15分程度、ずぶ濡れになったら帰って着替えれば何とかなるだろう。到着する前から車のフロントガラスには雨粒が落ち始め、ビーティングネットを組み立てたあたりから本格的な降りになり、ブッシュに突っ込むと叩きつけるような土砂降りとなった。この時点でお世話になった米屋さんとお別れする。
 乾燥しすぎだったから恵みの雨となるはずも、これだけすごい降り方だとさすがに採集どころではない。瞬く間に全身ぬれ鼠になるが、何とか1頭でも落としたいと藪の中を這いまわる。昨日の経験から一見美味しそうに見えるササ原に点在するハイイヌガヤは無視し、背丈の高い灌木帯の中に分け入り、何とか1頭を落としたところでギブアップ。すでに全員が車のところに集まり撤収の準備だった。わずか40分ほどの時間で会ったが、すでにパンツまでずぶ濡れ状態。ビーティングネットも絞ると水が流れ落ちてくる。

 そうそうに宿に引き上げ、温かい風呂に飛び込んだのは言うまでも無い。昼まで部屋の中でウダウダ過ごし、昼食用の握りメシを食べ終えた頃には雨も小雨状態になったようだ。せっかくだからともう一度同じ場所を目指すことになった。



 天気はやや回復気味か、小雨の合間に時々ガスが晴れ、遠くに米子の町並みから日本海までが見渡すことができた。しかし下草の濡れた状態で藪こぎビーティングをすれば降っているのとまったく同じで瞬く間にずぶ濡れとなる。風も有り立ち止まると寒いのでひたすら歩き採集に集中する。いつかゆるゆる採集の気分も忘れ去り、かなりの真剣モードとなる。広い採集ポイントだったが、さすがに3回目ともなればどこにいるのかほぼ判断がつくようになる。樹木の濡れ具合や気温、風あたりなどを考慮し、効率の悪いところはほぼ無視して良さそうなポイントだけを集中して叩く。順調に個体数を増やし、20を超えたと思われるあたりで採集を打ち切った。雨中の採集で体が冷え、また雨に濡れたズボンが足にまとわりついて思うように足が上がらず、何度も倒木につまずきツルに足をとられてよろめいてしまう。
 3‐4時間の採集ですっかり疲れ果ててしまった。何とか雨はやんでいるが強い風が濡れた身体から急速に体温を奪っていく。


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 再び温泉につかって体をほぐし、上から下まで服をとりかえる。明日もう1回戦やったら帰りの新幹線はドロドロの姿のまま帰らなくてはならない。

 夕食時には各地に散っていたメンバーも戻り始め、その日の成果の披露となるが、どちらもかなり厳しい様子だった。島根半島に出掛けたT、Kコンビは地元虫屋案内つき、かつトラップ附きという大名採集ながら、かろうじて1頭が採れただけという厳しさだったようだ。前日から隠岐に出掛けていた新潟コンビが遅い時間に到着。こちらも二人で6頭と厳しい戦果だった。さすがにこの日は皆さん体力を使い果たして早めの就寝となった。

 
 あっという間に最終日となる。出発前に宿の玄関先で集合写真を撮った後、それぞれの採集地、あるいは遠い帰路につく。我々前日と同じ4人は再びDH高原道路を岡山方面に移動し、岡山県に入ったところで採集。先日と同じポイントだが、一雨あっただけいくらかは採集しやすくなっているはずだ。
 まだ小雨が降る中、それでも時折明るい日差しがのぞくほどに天候は回復。最後の採集ながらここでまたずぶ濡れになると帰りの着替えが無く、ちょっと頭を悩ます。幸いネキさんとKさんから予備の上着とズボンを貸して頂け、下着まで濡らさなければ大丈夫となった。とりあえず一番可能性の高そうな谷筋まで降り、さらに谷に沿って下るとクマザサ中に背丈の高いキイチゴの大群落を発見。ここで採れなければ今日はボウズと覚悟を決め、ビーティングとルッキング併用の精密探索を行う。抜群の条件ながらコブはおろか食痕さえ見当たらない。1時間ほど格闘の末とうとう採集することができなかった。気がつけば全身またずぶ濡れ、パンツまでビショビショであった。
 ここでの成果は4人でわずかに1頭。昨夜のじゃんけん大会の覇者Kさんがその勢いのまま、道路脇で落とした1♂が唯一の成果となった。


 そもそも私にとって秋のセダカ採集はスポーツと思っている。分布調査でどうしてもそこで採りたいのなら、5‐6月に倒木や立ち枯れの探索(できれば夜間)の方がはるかに確実性高く、また秋コブなら事前にトラップを掛けるなど対策が必要だろう。私としてはたくさん落ちる場所より適度に落ちてくれる程度の採集が一番面白い。気温や天候、乾燥具合など諸条件を考慮し、今日はどこにいるだろうと想像しながら叩く。そして狙い通りネットにコブが転がり落ちてきた時の形容しがたい達成感。これだけの理由でコブ叩きがやめられないのだ。



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