3.11　不幸の代償

3.11

またこの日がやってきた。日本人なら絶対に忘れない日が・・・・


2010年の11月、ボクは明治神宮大会で東北高校の試合を見た。相手はのちに楽天に入団する鎌田投手を擁する注目の金沢高校だった。

東北の主将は4番でエースの上村君・・・・負けん気の強そうな彼を中心としたこのチームは３−０で勝利した。

試合内容は両チームともにミスが多く圧勝というわけではなかったが、来春に向けて期待の持てる明治神宮大会の１回戦だった。

そしてボクも当然期待していた。しかし・・・・・・



その後の話は誰でも知っているだろう。

3.11


選抜の開幕まであと２週間もない中でのこの絶望的な悲劇は、まだ18歳にも満たない彼らには、その人生にどういう影響を与えたのだろうか・・・・・

強豪私学なら練習試合が解禁される3月中旬からは九州や沖縄で合宿を張り、その地域の強豪と試合をしながら調整するプロみたいなチームもあるなか、当時の東北高校野球部は多くのものを失いながらもボランティアを続けた。当然出場辞退も検討された。

しかし、彼らの出場を一番望んだのは被害にあった地元の人だったという。すべての人たちが不幸のどん底にあっても、東北高校の甲子園に期待をかけたのだ。

甲子園では初戦で散った。直前まで練習もままならず臨んだ試合では、大垣日大に初回に5点を奪われ７−０で敗れた。

日本中が注目する東北高校に対して、逆にヒール役となる選手に持てる力を発揮させた大垣日大の名将阪口監督の手腕にとても感心した記憶がある。

ボクはこの時、日本という国は本当に素晴らしいと思った。

多くの人が亡くなりすべてを壊された絶望に打ちひしがれた人たちが、野球なんかやってる場合ではないとは言わなかった。野球なんかやってる場合ではないと思っていた高校生はその思いを受けてできる限りの戦いをした。そして、その対戦チームは委縮することなく全力を出すことこそが相手に対する敬意の表れだと示した。

この試合に勝った大垣日大にも負けた東北にも同じだけの価値があった。試合結果は大差だったが、勝った大垣日大に少しは手加減してやれよという声も、負けた東北にこんな時に野球をやっている批判もなかった。


あれから４年となる。ボク自身はあの時家に帰れず会社で一夜を過ごしたとか、娘の進学のための引っ越しができなかったとか、そんなどうでもいいようなことしかなかったし、ボクの知り合いも甚大な被害を受けたという人もいなかった。

だが・・・・・



3.11



この日の重さはすべての日本人にあるはずだ。そんな中で・・・・



今でも復興は遅々として進まないと聞く。それなのに、中東諸国の人道支援のために２億ドルもの我々の税金が使われていたことを今年初めて知った。

また我々の税金から支払われる補助金を交付された企業からその権限を持つ閣僚がまるで見返りのように献金を受け取っていたことも・・・・



あの時の東北高校の甲子園出場はあの時の被災地の人々が決めたのだ。被災地の人たちが後押ししたのだ。あんな苦しい人たちが、甲子園で思いっきり戦ってくれって・・・・・


だから思う。これからの復興も被災地の人たちが決めるべきだ。

オリンピック誘致の演説で総理大臣が述べたことに嘘はなかったのか、中東国への支援と被災地復興の金額をともに明らかにすべきでないのか、東電という企業だけにその責任を押し付けて政府の責任はないのか・・・・

被災地の人たちはもっと声をあげていいと思う。自分のことよりも高校生の野球を重んじた彼らは・・・・・


3.11


2015年3月11日は男女のサッカーの試合がある。男子はオリンピック年代、女子はフル代表だ。


U22男子の日本代表の監督は手倉森さん・・・・あの時の仙台の監督である。そしてスポーツの持つ力で勇気づけたいと言う。

震災とは直接関係なくとも、いつも関わって力にしようとする人・・・・
震災と直接関係あるのに、そこをさけて自身のことしか考えない人・・・・

2種類の人がいる。


3.11


日本が一つになって立ち上がった。世界が日本に祈りを捧げてくれた。その年に生まれたキズナと名付けられたサラブレッドは2年後にはダービーを取った。


あれから4年だ。日本は一丸となっているだろうか。世界が祈りを捧げてくれたことに恥じない国家であるだろうか。

日本が一つになろうとした。世界が一つになろうとした。国家や民族を超えて、多くの人々が日本のために祈ってくれた。

でも、今はどうだろう・・・・

今、世界で起きていること、日本で起こっていること・・・・・



あの衝撃的な不幸はこれから日本が、世界が向かおうとしていることの代償となっているだろうか・・・・・・・


ボクにはそうは思えない。そしてそれがとても悔しくて悲しい。