シネマート新宿で山下敦弘監督「超能力研究部の3人」を見る。いわゆる「アイドル映画」と言われる作品だが、作りが異色。冒頭の字幕で、オーディションで選ばれたアイドル3人が、女優を目指すと出る。その3人が撮影現場にやってくる。メイキングかと思ったら、フェイクドキュメンタリーだ。それに映画本編が同時進行する。
演技がおぼつかない1人を、山下監督は徹底して追い詰める。けんかする設定の相手役に、撮影前に罵詈雑言を浴びせかけられる場面は、アイドルも半泣きで、現場もどんより。この甲斐あって撮影がうまくいくと、「なんでもそつなくできる」アイドルが、そのアイドルと険悪になる。さらにキスシーンを巡って、事務所の男と山下監督が対立し、これまた現場がどんより。本編の映画の楽しさとは正反対なのだ。映画としては面白いが、ファンはどんな気持ちになったのだろうか。
後半、撮影の休みを利用して、メイキングを撮っているスタッフと、3人がご飯を食べに出かけるが、店が休みだったアクシデントから、一気にアイドル映画らしくなる。アドリブが入ったらしき海で遊ぶ場面の気持ちよさ。そしてバスの中で歌う場面から、劇中で「喝采」を歌う場面につなぐのは、はじけていてよかった。
終盤はドキュメンタリーと映画の区別がつかない。草の上で話している場面は、劇中かと思ったらドキュメンタリー。UFOが飛び交う劇中ラストも楽しい。
主演の乃木坂46については何も知らないが、私に関心を持たせた時点でアイドル映画としては成功。そして脚本はいまおかしんじ監督。同じコンビの「苦役列車」と違い、川瀬陽太さんらピンク映画の男優たちが印象的に出ている。とくに佐藤宏さんが、またも快演しているのがうれしい。
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