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2014年11月19日23:01

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永遠 -とわ-

いよいよピンク・フロイドのまさかの新作がリリースされた。
実際には今日リリースなのだが、いち早く昨日ゲットしてきた。
通常盤、DVD付属盤、Blu-ray付属盤がある。ここは迷わずBlu-ray付属盤を選ぶ。このBlu-rayにはアルバム丸ごとハイレゾで収録されている。となると本体CDの立場はどうなるのだろうか。
まあ、ハイレゾ環境がなくても、ほかに収録された映像やアルバム未収録音源をDVDよりもいい状態で、という人もいるだろう。

それはともかく、ホントに出たのだなあ、と感慨深い。
夢ではなかったのだ。

デヴィッド・ギルモア(g,vo)がピンク・フロイドとしての活動に積極的でなかったことや、リック・ライト(key,vo)が鬼籍に入ってしまったこともあって、すでにピンク・フロイドは終わったものと認識していた。

それでいいと思っていた。

ロジャー・ウォータース(b,vo)との確執も雪解けを迎え、ピンク・フロイドは本来の在るべき姿に戻るのではないか、数年前まではそんな期待が募った。しかし、それは叶わなかった。
そしてリック・ライトのいないピンク・フロイドはピンク・フロイドではない。
彼が亡くなってしまい、ピンク・フロイドの完全復活はなくなってしまった。20世紀ロック界の巨人はそうして終焉を迎えたのだ。

それでいい。

しかし突然の新作発表。
20年前の前作から漏れたマテリアルを生かし、デヴィッド・ギルモアとニック・メイソン(ds)が新作として創り上げたのだそうだ。1曲を除いてインストゥルメンタルになっている。そしてリック・ライトのキーボードもほぼ全編で聴ける。
そこにはロジャー・ウォータースはいない。さらに完全新作というわけではない。
それでもこれは紛れもなくピンク・フロイドの新作である。
そうとしか言いようがない。

もはや時代を動かす力はない。
しかし長い歴史の果てに辿り着いたのは達観したかのような境地。
強いメッセージ性で一時代を築いた彼らではあるが、斬新なサウンドもウリにしていたことを思い出す。そしてメビウスの輪のように最後に行き着いたのが独自の音響世界だったというのにも感慨深いものがある。
アンビエント風なインストゥルメンタルと聞いていたが、どこがアンビエント風なのだ?
そう言うにはその音世界はあまりにもエモーショナル。BGMには適さない強い求心力を持つ音楽は全く以て彼ららしい。言葉はなくともその音に込められたメッセージを、彼らの作品を熱心に聴いてきた人ならば感じ取ることができるだろう。そして言葉がないゆえに自由に解釈し受け取ることができる。
ロックの行き着く先はこういう世界なのかもしれない。
激しいビートも、鋭いリフも、そして言葉も、それらを削ぎ落としそれでもなおロックであり続ける。
やはりこれはロックの未来形を提示した問題作なのだ。

デヴィッド・ギルモアのギターが官能的な音色で泣きまくる。実は彼が最高のブルース・ギタリストであることを思い出す。
リック・ライトはフェンダー・ローズ、ハモンド・オルガン、ファルフィサ・オルガンなどのヴィンテージ・キーボードを駆使し、現実とも幻想とも判断つかない空間を作り上げる。今は亡き彼の演奏が聴けるだけでも感涙ものではないか。
ニック・メイスンはいつものようにゆったりとしたビートを繰り出す。彼の独特のタイム感覚もなくてはならないものだ。
ほとんどがこの三人のみの演奏で構成されている。外部ミュージシャンの起用は必要最低限に抑えられているようだ。

真の意味でプログレッシヴだったバンド、ピンク・フロイド。
そしてこれをもってピンク・フロイドの歴史は幕を閉じた。
『The Endless River』、邦題は『永遠(とわ)』。
そのタイトルも象徴的だ。
最後の曲のエンディングがアルバムの冒頭につながる。輪廻するかのようにアルバムは終わらない。

いろいろ批判もあるだろう。
ピンク・フロイドに何を求めるかによって、このアルバムの受け取り方は変わると思う。
そうだとしてもこれが彼らからのサプライズ・プレゼントだったことには変わりはない。
もうピンク・フロイドが新作を出すことはないだろう。ピンク・フロイドとしてステージに立つこともないだろう。

それでいい。

ピンク・フロイドは永遠の眠りに就いた。
しかし彼らが遺した作品は永遠に輝き続けるのだ。
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