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2010年09月29日22:09

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メイバーンの名盤

ハロルド・メイバーン(Harold Mabern)は本当にいいジャズ・ピアニストだと思う。

古くはハンク・モブレーの名盤『Dippin』(1965年)に参加したしたことで知られている。中でも『レカード・ボサノヴァ(ギフトの別名)』のジャンピーなピアノが有名だ。
ソロ名義の作品はあまりなかったのだが、この10年くらいでヴィーナス・レコードに立て続けに録音をしている。ナット・リーヴス(b)やジョー・ファンズワース(dr)とのトリオ作品が一際素晴らしい。
そして、1枚だけピアノ・ソロのアルバムがある。『Misty』と題されたこのアルバムは「どこを切ってもメイバーン」と言いたくなるくらいの名演だ。
アーシーでブルージーでファンキーで、というと典型的な黒人ピアニストのように思われるかもしれないが、さらにリリカルでチャーミングという個性が加わる。ジャズ・ミュージシャンは基本的にロマンチストなのだ。
冒頭のファンキーなノリ一発の『Dat Dere』を挨拶代わりに、続く『She』と『Smoke Gets In Your Eyes』の素晴らしくチャーミングなこと。そうかと思えば、『You Don't Know What Love Is』なんかはジャンピーでファンキーな仕上がりになっている。
失礼な話だが、あのいかつい顔の巨漢から紡ぎ出される音楽とは思えないほどだ。だって指なんか鍵盤の幅より太いくらいなんだよ。っていささかそれはおおげさか…。
先日話題にしたスティーヴ・キューンのような緻密さはないが、その代わりハートウォーミングな優しさがある。おおらかで、ちょっぴり切ない。難しいことは考える必要はない、リリカルでメロディアスな語り口に任せればよいのだ。

やっぱり大好きなピアニストだと思う。

もう6年くらい前になるだろうか。JzBratで先に記したトリオのライヴを観たことがある。黙って立っているとギャングのボスといった風貌だ。体もでかけりゃ手もでかい。それなのに綺麗な音色のチャーミングなピアノを弾くのだ。
終演後、握手をしてもらったら、グローブのような手だった。。。全てに関してでかいが、態度だけはでかくなかった。気のいいじいさんという感じだった。

ちなみに、このときのライヴにはアルト・サックスの矢野沙織嬢が招かれていた。彼女の2ndアルバムにメイバーン・トリオが付き合った縁なのだろう。
開場を待っているときに浴衣姿のおねえさんに「こんにちは」と声をかけられた。誰かと思ったら沙織ちゃんだった。「お、浴衣でサックス吹く?」と言ったら、「大丈夫ですよ」とあっけらかんと答えていた。
確かに浴衣姿でアルトを吹いていた。。。
というわけで、このときにもらったサインはメイバーン・トリオ+沙織ちゃんという豪華版になったのであった。

そういえば、このとき私はジョー・ファンズワースのドラミングに驚愕したのだった。

さらに、たぬ〜はナット・リーヴスに「ぷりちぃ」と言われて頬を撫でられたのだった。子どもだと思われたに違いない。

なんてことを思い出した。

それにしてもこの『Misty』というアルバムは素敵だ。
ジャズ・ピアノの究極はソロなのかなあ、なんてことも思ってしまう。曲の性格上、しっとりとした演奏が多いが、スケールが大きい。
それにしてもあんな分厚い手とぶっとい指からこんな可憐な音楽が生み出されるとは不思議な感じがしてしまう。

長生きして欲しい。そして、また聴きに行けたらいいな。
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