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2010年06月26日23:56

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三浦友理枝@アプリコ大ホール

今日はぐいりぃ家イチオシのピアニスト三浦友理枝嬢のリサイタル。
久しぶりのコンサートだ。
きっちりしたコンサートとしてはラ・フォル・ジュルネ以来だし、フルサイズのものととなると、4月の半ば以来ということになる。このときも友理枝嬢だったな。。。

場所は大田区のアプリコ大ホール。
大ホールということで音量をちょっと心配したのだが、その必要はなかったようだ。響きのいいホールで、奥行きのあるいい音で鳴っていた。ただ、ちょっと響きすぎかな、という気がした。贅沢だな。。。

01.バッハ:フランス組曲第2番
02.ドビュッシー:月の光
03.ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
04.フランク:前奏曲、コラールとフーガ
<休憩>
05.ショパン:幻想即興曲
06.ショパン:24の前奏曲
<アンコール>
07.ラヴェル:水の戯れ

彼女のピアノの素晴らしさについてはもう何度も書いているので、繰り返すのはやめておく。
と言いつつ、最低限のことだけは言わせておくれ。
音の粒立ちがいい。一音一音の輪郭が明瞭だ。強靭な左手による低音の迫力もすごい。高音の美しさもさることながら、全く濁らない低音の鳴りのよさも特筆すべき。しなやかにメロディーを歌わせる歌心も持ちながら、実は相当の技巧派でもある。曲に対するアプローチは理知的。現代音楽にも強い。さらに、ピアノを弾いているときの姿勢がいい。

彼女は本当の演奏家だ。

実演で聴くのが初めてなのはフランクの『前奏曲、コラールとフーガ』。彼女とフランクというのがちょっと意外だった。前奏曲は極めて美しい曲だが、コラールもフーガも理詰めの曲。こういうのも見事に弾くんだなあ、という印象。想像以上にいい演奏だった。

バッハは前回聴いたときと同じように、キビキビとしたかなり高速な演奏。ペダリングを控えめにして、終始美音で鳴らしきっていた。左手の打鍵が強いので、バッハのポリフォニー書法がよくわかる。特にクーラントやジーグといった速い曲が巧い。今回は9分少々。

フランス近代は彼女の得意とするところ。
『月の光』も『亡き王女のためのパヴァーヌ』も有名曲だが、情に流されない清廉な演奏だ。徹底的に甘く弾くことも可能で、そういう演奏も少なくないが、彼女の演奏はちょいビターである。『亡き王女』ではだからこそ哀しみが際立つし、『月の光』では冴え冴えとした空気感が心地いい。

プログラムのメインはもちろんショパンの24の前奏曲。
全曲を彼女の実演で聴くのは3度目だ。
この曲を収めた最新アルバムはレコード芸術誌の特選盤に選ばれている。確かに数多くの名盤の中にあっても手を延ばすに値する盤に仕上がっていると思う。
しかし、実演はさらにすごい。一曲一曲丁寧に仕上げられるCDと違って、一気呵成に走り抜けるような勢いがある。そのぶん有無を言わせぬ説得力がある。ことに終盤に向かって畳みかけるような迫力は圧巻だ。最終24曲の強力な左手によってもたらされる音塊は一種のカタルシスとも言える。
ショパンが彼女の演奏を聴いたらなんと言うだろうか。
「彼女はこの曲のことをよくわかっているよ」と満足そうに言うのではないか。そんな気がしてならない。

ショパンは甘くてとか、ショパンは軟弱でとか、そう思っている人にこそ彼女の弾くショパンを聴いてもらいたいと思う。磨き抜かれた美音による凛としたショパンはきっと印象を変えてくれることだろう。

アンコールには「これを聴かなきゃ帰れないよ」という曲。
得意なラヴェルの中でも最も彼女に合うだろうという曲。美音の要求されるラヴェルの中でも最も純度の高い美音の求められる曲。昨年から何度聴いたかわからないが、至福のときだ。。。

ところで、大田区は彼女の地元だという。
さらに20日に誕生日を迎えたばかり。29歳になった。年齢を隠さないところも彼女らしい。

ずいぶん前のことになるが、蒲田には数年間通っていたことがある。
コンサート前に少々街を散策。ずいぶん様変わりしているが、その頃にあった店がそのまま残っているのは嬉しい。
ちょっと懐かしさを感じた。仕事に夢中になっていたとき。いいこともそうでないこともいろいろあったが、嫌いな街ではなかったんだな、と今日思った。

さて、次は来週の土曜、佐倉にて彼女を含めた川久保賜紀嬢と遠藤真理嬢のトリオだぞ、と。
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