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2009年10月11日23:29

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フォーレのアヴェ・ヴェルム・コルプス

フォーレという作曲家が好きである。
抜群のメロディー・センスと絶妙な転調、フランスのエスプリを感じさせる曲調。その曲の多くは親しみやすさとともに奥深さを感じさせる。
いちばん有名なのは静謐なレクイエム。パヴァーヌのメロディーもよく知られている。
あのラヴェルの師としても知られる。

よく知られている作曲家と比べてみると。。。
歌曲の多さではシューベルトに匹敵する。
ピアノ小品の巧みさではショパンに通じる(サロン音楽と揶揄されるところも似ている)。
晩年に素晴らしい室内楽が集中しているのはブラームスと同じだ。
甘美なメロディメーカーということではメンデルスゾーンがライバルか。
しかし、軽妙で洒脱な面もあるのがフランス的というところだろうか。

ただ、残念ながら日本では軽んじられているように思う。

先に挙げたレクイエムが特別なわけではなく、いい曲がたくさんある。晩年の室内楽はどれもが職人技の発揮された素晴らしいものだし、夜想曲や舟歌といったピアノの小品も極めて詩的で美しい作品だ。フォーレの曲にはハズレがないと言いきってもいい。

さて、そんなフォーレのまさに秘曲と言うべきものが『アヴェ・ヴェルム・コルプス』だ。
これはイエスを称える一種の讃美歌ということができよう。このテキストに付けた曲ではモーツァルト晩年の曲が有名だ。というより、『アヴェ・ヴェルム・コルプス』といえばモーツァルトというふうに思われているのだろう。確かにモーツァルトの曲は素晴らしい。
しかし、フォーレの曲も負けていない。女声合唱とオルガンによって奏でられる音楽はこの世のものとは思えない美しさなのだ。昔からフォーレが好きだったこともあって、しかもこの曲はほとんど知られていなかったので、とても思い入れがあるのだ。今もそうだが、当時も録音はそう多くなかった。

あれは昨年だったろうか、アウラのコンサートのフライヤーに「フォーレ:アヴェ・ヴェルム・コルプス」という文字を見つけたのは。
もちろん、それまでに披露されたことはない。フォーレのその曲が好きなのにもかかわらず、ミスプリじゃないの、と思ってしまった。『アヴェ・ヴェルム・コルプス』といったらモーツァルトじゃないの? フォーレだったら『ピエ・イエス』だろう(アウラの1stアルバムに収録)、と。
そのくらい知られざる曲だったのだ。
ホントにフォーレをやるんですか、とプロデューサーに訊いた覚えがある。
「やはり、知ってましたか」とニヤリとされたのだ。それで「ああ、フォーレなんだな」と思ったものだ。
アウラはもちろん女声5声のアカペラで再現している。オルガン・パートはアルトが実現している。このアウラのバージョンがまた素晴らしく美しいのだ(最新の4thアルバムに収録)。まさに天国的だ。
それもフォーレの原曲が素晴らしいからだ。

久々に原曲を聴いた。録音を探すのが一苦労だ。それでもいくつか現役国内盤がある。
ジョン・オールディス&グループ・ヴォーカル・ド・フランスの盤が容易に入手できる。EMIから『ラシーヌ雅歌』TOCE-14188として廉価盤でリリースされている。曲を楽しむには十分な演奏だ。有名曲は『ラシーヌ雅歌』くらいしかないが、知られざる宗教曲を収録しているという価値のある盤だ。ジャケットがクリムトだというのは、どうだかな、と思うのだが…。

原曲を知ることで、アウラ・バージョンの新たな発見もあるのではないかと思う。
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