前記三作に通底するのは、世界は巨大な幻影や陰謀でコントロールされている、という感覚ですね。『Xファイル』の場合は、そこにもろに宇宙人やUFOが関わってきます。それはお伽噺の世界などではなく、国家規模や超国家規模のあらゆる巨大陰謀の根底に、その問題が潜んでいるという設定です。(実際、アメリカ政府は宇宙人情報を隠蔽してますし…) だからこそ、主人公のモルダーはUFOや超常現象は“普通に”信じてしまうのに、ドラマのキャッチコピーは“TRUST NO ONE ”(なにものも信じるな)であり、“THE TRUTH IS OUT THERE”(真実はそこにある)なのでしょう。
たいがいの人が当たり前だと思っている実社会の秩序やコネのほうが、実はつくられた共同幻想や陰謀なのであり、ひとたびそこから足抜けしようと試みた者には、その枠の中のものにいくらTRUSTしてみたところで、罠に堕ちていくだけ。そこから一歩も二歩も、外や奥に踏み込んだ世界にこそ真実がある。
これは「世間虚仮」とする原始仏教や、「この世は悪の造物主の箱庭」とするグノーシスの立脚点とも、非常に近いものです。そこから、不撓不屈の魂の戦いが始まるのです。
嘘でもいいから騙し続けて安心させて欲しい、という、ムード歌謡の女心の歌詞みたいな民心には、とうてい理解できない世界ではあります。