先週末１９日の東京株式市場は、奇妙な値動きだった。特に大引けの値段を見て、「これは何だ！？」と叫びたくなった。
◎日経平均大幅安なのにＴＯＰＩＸは２０００回復の上に続伸
日経平均は、４２４．７０円安の３万円割れ、２万９７９２円０５銭で引けた。１．４％の大幅安である。これほどの大きな下げ幅は、３月４日の２．１％安以来のことだ。
何かがあったに違いない。全面安だろう、と思った。ところが、僕の保有株の終値を見ると、上げ下げマチマチで、全面安にはほど遠い。
実際、東証一部に上場する全株の平均株価であるＴＯＰＩＸ（東証株価指数＝写真）は、逆に３．７０ポイント高、９日連騰の２０１２．２１で引けている。
ちなみにこれまで日経平均がバブル崩壊後の高値を更新する中、戻りの鈍かったＴＯＰＩＸは、１８日に１９９１年４月以来、３０年ぶりに２０００の大台を回復していた。この日は、連日でバブル崩壊後の戻り高値を更新した。
◎昨年来高値も２５５とラッシュ
ＴＯＰＩＸが示すように、値下がりが６２６銘柄に対して値上がりは１４９１銘柄（他にプラスマイナス変わりなしが８１銘柄）、と値上がりの方が断然多く、７割近くが値上がりしているのだ。
それを示すように、この日、昨年来高値を付けたのは２５５銘柄もあったのに対し、昨年来安値はゼロである。
日経平均株価とＴＯＰＩＸの値上がり・値下がりが逆向きになることはたまにはあるが、これほど乖離したことは僕の長い投資歴でも記憶にない。
つまり日経平均株価は、マーケットの実態を映していなかったのだ。
◎日銀の金融政策会合でのＥＴＦ買い変更が原因
この謎は、翌日の日経新聞の記事を見て分かった。この日、１９日に日銀の開いた金融政策決定会合で、日銀が買うＥＴＦで、日経平均連動型を除外し、すべてＴＯＰＩＸ連動型とすることが決まったからだ（写真＝金融政策決定会合に出席するため日本銀行本店に入る黒田東彦総裁）。
前に述べたように、日本株式の筆頭株主は日銀である（３月１８日付日記：「日本一の大株主、日本銀行の保有日本株の功罪」を参照）。
その日銀が、それまで一部、すなわち一部上場株の１割強の日経平均の２２５銘柄だけで構成される日経平均連動型のＥＴＦ購入を止め、ＴＯＰＩＸ連動型に一本化すると決めたのだから、これまで過度に買い上げられていた日経平均構成銘柄が売られるのもやむをえない（なお上掲１８日付け日記で、日銀の購入するＥＴＦをＴＯＰＩＸ連動型のみとするように書いたのは、僕の不適切であった。お詫びして訂正します）。
◎ファーストリテイリング、たった１日で５９１０円も安
その顕著な例が、東証一部最高値のファーストリテイリングである。同株は、この日、後場で急落し、実に前日比５９１０円安（率にして６．１０％安）の９万１０２０円まで売られた。１カ月前には１０万円を超えていたのに、それから１万円も安くなっている。最低単元の１００株しか持っていない保有者も、１カ月で１００万円の損失（！）である。
ファーストリテイリングだけではない。日経平均構成銘柄で大きなソフトバンクグループも、この日２．４６％安で、１万円の大台を割り、９９６９円と沈んだ。
◎銀行株、特にメガバンク３行は昨年来高値を更新と快調
東証一部全体の銘柄の値動きを示すＴＯＰＩＸが騰がったのだから、日経平均構成銘柄の値がさ株が売られた見返りに上昇しているはずである。
果たして、これまでほとんど市場から見放されていた銀行株が軒並み高値をつけた。
三菱ＵＦＪが１２．４円高、三井住友８３円高、みずほ２３．５円高で、メガバンクはいずれも昨年来高値を更新した。
しかしメガバンク３社が、昨年来高値を更新するほど業績が大幅に改善しているわけではない。
逆にファーストリテイリングやソフトバンクグループがこれほど売られるほど、業績が悪くなったわけでもない。
◎ファンダメンタルズを映さないテクニカル的な動きに動ずるなかれ
このように、マーケットは常にファンダメンタルズを反映するとは限らず、１９日のようにテクニカル的な動きを示すことがあるのだ。だがそれは、１日、２日程度の動きに過ぎない。長期投資家にとって、こんな動きは、余裕でかわしているだろう。
ちなみにこの日の勝者を挙げるとすれば、日経平均連動型ＥＴＦ売り、ＴＯＰＩＸ連動型ＥＴＦ買いを組み合わせた投資家である。いたとすれば、この日は年に１日あるかないかの絶好の稼ぎ場だった。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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