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2020年01月25日23:04

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カラヴァッジョ展

天才画家なのに、犯罪者。後半生のほとんどを逃亡のすえに39歳の若さで亡くなった異色の画家、Michelangelo Merisi da Caravaggio
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610 年)は、西洋美術史上最も偉大な巨匠の1人。彼の劇的な明暗法(キアロスクーロ)によって浮かび出る人物表現とその写実性は、バロックという新時代の美術を開花させる原動力となった。とりわけ17世紀前半、彼の画法はイタリアのみならずヨーロッパ中の画家たちによって継承され、カラヴァジズムという一大芸術運動に発展し、ラ・トゥールやレンブラントを含む数多くの画家たちに大きな影響を与えた。

2016年に東京の国立西洋美術館でカラヴァッジョ展をやっていて話題になっていたけれど観に行けなかった。とくに見たかったのが「法悦のマグダラのマリア」だったが今回あべのハルカス美術館で観ることができてよかった。

本展はカラヴァッジョの10点の作品と、その他はカラヴァッジョと同時代やカラヴァッジョの系譜をくむ画家たちの作品だ。中でもジュゼペ・デ・リベーラの一連の聖人画はとても見応えがあった。
カラヴァッジョの友人でもあったオラツィオ・ローミ・ジェンティレスキ「聖母子」とその娘で女流画家のアルテミジア・ジェンティレスキの作品「スザンナと長老」もよかった。

恥ずかしながら私はカラヴァッジョのことは元々あまり知らなくて(バロック美術にあまり興味なく)、知ったのは2016年の森村泰昌の回顧展「自画像の美術史」においいてである。

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この展覧会で彼はカラヴァッジョに扮してカラヴァッジョの有名作品のパロディーをたくさん作りだした。森村氏はカラヴァッジョの独創性と聖俗紙一重の世界観をすごくリスペクトしていると感じた。

私も、紅顔の美少年や聖マリアを描いたかと思うと、生首とか血なまぐさい絵を超絶技巧で描くカラヴァッジョという人物とその背景に興味をそそられた。

彼は人物を描くとき、必ず生きたモデルを使ってポーズをとらせたそうだが、実際絵の臨場感がすごい。画像は写真のようにリアルで精密でまるで映画や演劇の一幕を観ているようだ。

カラヴァッジョは静物を描かせても天才的にうまい。

今回「ハートフォードの画家」という名で1点だけ「花瓶の花、果物および野菜」という静物画が出展されているが、カラヴァッジョのものと言われている。
静物画はヨーロッパでは近代に至るまで伝統的に価値の低い絵画ジャンルとみなされていた。イタリアでは特にそうしたジャンル別ヒエラルキーがはっきりしておりルネサンス以降独立したカタチで描かれることは稀であった。北イタリアのミラノで修行したカラヴァッジョは北ヨーロッパで発展しつつあった静物のモチーフを早くから作品に取り入れ革新的な画風を発展させている。
カラヴァッジョは当時「静物を描くのは人物を描くのと同じ価値がある」と宣言してはばからなかった。
彼の静物画に「果物籠」という代表作があるが、卓越した明暗技法によりあたかもそこに在るかのように生き生きと描かれた果物は北方の写実精神とともに彼の宗教画にも共通してみられる。他方虫にくわれた果肉や枯れ葉の描写は束の間の快楽がもつ儚さ(ヴァニタス)という寓意を教えている。
カラヴァッジョ以降こういった静物画のジャンルはフランスでは「ナチュールモルト」(死せる自然)、スペインでは「ボデゴン」(風俗厨房画)と呼ばれ発展していった。

◆「歯を抜く人」(日本初公開)
彼と同時代バロック絵画の代表的な画家にゴヤがいるが、ゴヤの絵との類似点もみられる。
歯を抜かれて苦しむ人を見ている大衆の表情がリアルで、オランダのレンブラントやヨルダーンスの絵を彷彿とさせる。

◆「リュート弾き」(日本初公開)
この絵の少年は陶器のような肌で完璧な容姿をしており、リュート(楽器)の描き方もCGみたいに精密で生身の人間感が薄い。新古典主義のアングルの絵を思い出す。

◆「法悦のマグダラのマリア」Mary Magdalene in Ecstasy
なんといってもカラヴァッジョの10点の中で特別な存在の絵。
絵の題にecstasy という言葉がついているのもそそられるが、美術史を勉強していると必ず出てくる革新的な絵なのだが、この絵はどこか美術館でみられるのではなくて個人蔵だということにも驚いた。
白目をむいて懺悔と恍惚の表情をうかべるマグダラのマリアの頬にひとすじの涙。実物をこの目で見られて感動した。

ほかにカラヴァッジョの作品は「聖アガピトゥスの殉教」(首から血が噴水のように吹き出し、瓶の中にたまっていく)、「聖セヴァスティアヌス」(矢が刺さった肉体を男たちにしばりあげられている)、「執筆する聖ヒエロニムス」、「「悲嘆にくれるマグダラのマリア」、「洗礼者聖ヨハネ」
手続きの不手際で「ホロフェルネスの首をもつユディト」が来日しなかったのは残念だったが、カラヴァッジョは生涯に描いた作品がわずか60点というからそのうちの10点も日本でみられるのはまたとない機会だと思う。まだの方はぜひ。
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