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2024年04月14日06:02

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週記699 中くらいのストーリー

 大企業に中くらいのストーリーが欠如している、そんなことを考えました。

これはDXのような変革をしたいけどできない組織が抱える課題のようにも思えます。

ストーリーとは何か、なぜストーリーがないことが現在の企業と社員の間の問題になっているか、以下で考察していきます。

 企業には、そしてそこで働く社員は、大中小の様々なストーリーに囲まれながら動いています。

 企業における大きなストーリーとは、事業理念です。

よく、ミッション・ビジョン・バリューあるいはパーパスという言葉でも表現されます。

よく会社のホームページや就職活動のページに書かれ、社内外の人間の目に触れる言葉はこの大きなストーリーになります。

企業に就職しようと思う人はこの大きなストーリーから会社の思想を読み取って応募を考えたり、社員は大きな意思決定をする際の指針として大きなストーリーを見ます。

 一方、小さなストーリーというのは、職場の中、上司と部下からなる小さなチームの中で共有されているもので、目的とか目標とか言われているものになります。

この小さなストーリーはほとんどの場合、目の前の仕事が主語になり、とても具体的なものです。

部下と上司の間で共有され、チームとして行動する際の価値判断の基準として運用されていきます。

 企業の中ではこのような大小のストーリーが関係者に共有されながら運営されています。

一見それでうまく行っているような気がしますが、私は、“中くらいのストーリー”が企業において欠落していることが、企業内の自律性を落として、人に起因するさまざまな経営課題を産んで、そして組織変革を阻んでいると考えています。

 では“中くらいのストーリー”とはなんなのか?

相対関係として表現すれば、大きなストーリーよりも具体的に向かうべき方向が描かれていて、小さなストーリーよりも長い時系列が秩序立って整理されたものと言えます。

あれ、それっていわゆる事業戦略っていうものじゃないの? と思われるかもしれませんが、個人的には区別するべきものだと考えています。

なぜなら、事業戦略があれば組織が変革できるわけではないからです。

中くらいのストーリーは、組織の自走化という軸で重要な要素だと私は考えています。

 中くらいのストーリーはどのような課題を解決できるのか、これを考えるために、大きなストーリーと小さなストーリーで解決できていない問題を書き出してみます。

実はよくよく考えてみましたが、中くらいのストーリーそのものを言い表すことは難しいことがわかり、であれば、他のストーリーの抱える課題を考えることで輪郭を浮かび上がらせることが良いと考えたからです。

 大きなストーリーはシナリオのないオープンワールドのゲームそのもののようなものです。

人によっては何か熱中できる自分だけのストーリーを見つけて楽しむことが出来るだろうし、そうでない人は途方に暮れて近くにいる人と戯れることしかできません。

大きなストーリーでは立つべきフィールドは提示してくれますが、何をすべきかの方向は示してくれません。

 一方、小さなストーリーはゲームでいうクエストのようなものです。

具体的で数多くありますが、小さく現実的で具体性のあるストーリーがゆえにすぐにクリアできる、あるいはクリアできずに諦めざるを得ない場合もあります。

クエストだけをこなして行くことは、時として時間を切り売りしているような虚しさを生みますし、より良いクエスト(待遇、報酬、クエスト自体の内容など)が社外にあるとわかると転職したくなる人も多いでしょう。

 大企業においては大きなストーリーを理解して楽しめないまま部署に配属されると、すぐさま小さなストーリーに基づく仕事がスケジュールに入り込んできて、クエスト的に与えられる仕事をこなしていくルーチンにはまっていき、自発性や自律性を失っていく、そういう社員やそれが嫌で転職する社員を多くみてきました。

仕事に関して、大きなストーリーでは方向づけすることは難しく、小さなストーリーに頼ると自発性や自律性を失ってしまうーーこれが大小のストーリーのか変えている課題といえます。

 では、中くらいのストーリーに求められることは何かというと、方向を示しつつも、行動の自由は保証するもの、ゲームに例えるならシナリオを与えることだと私は考えています。

シナリオが与えられると、冒険者たちはそのシナリオの筋書きを頭に置きながら自由に大きなストーリーの世界を歩き回ります。

たとえわからないことができて行き詰まっても、シナリオを思い返してみて、進むべき道に関して”推論を立てる”ことができますので、誰に言われるまでもなく試行錯誤を通じてゲームを先に進めていくことができます。

試行錯誤の一つ一つは小さなストーリーです。

例えば街中のタンスを開いてキーとなるアイテムを探したり、あるかもわからない遺跡を見に行ったり、そういった単体で見れば退屈で時間の無駄に思える作業も、シナリオの中に組み込まれていることで自然に、自発的に取り組んでいくことができます。

 仕事に例えるなら、DXを通じて関係会社含めたサプライチェーンの最適化をする、というのも中くらいのストーリーと言えるでしょう。

この例で言うなら、大きなストーリーは環境変化に強い企業になる、みたいな抽象的な話が有り、小さなストーリーとしては、BI(Business Interigence)を使った在庫の可視化や管理の高度化などがあります。

企業のDXで起きている失敗の殆どは中くらいのストーリー不在で、トップダウンで抽象的な大きなストーリーと、ボトムアップで作られるつながりのないたくさんの小さなストーリーが乱立することで発生しているように思えます。

大きなストーリーと小さなストーリーをつなぐ中くらいのストーリーがないから、大きな変革構想を進めることもできないし、小さな改善は単発で終わってしまいがちになり、社員と経営層の失望とともに変革が頓挫していく、そんな様子を私は数多く見てきました。

組織の変革局面において最も重要なのは、状況を正しく理解したうえで、中くらいのストーリーをきちんと作れる人がいることなのかもしれません。

以上、雪の降るある日の通勤にて。

【最近のGratitude】
・Blossom
 Walking along the rainy promenade, I suddenly noticed that the cherry blossoms had begun to bloom. The path, once dominated by leafless, withered trees, was suddenly brought to life with vibrant colors from the blossoming flowers, filling me with an indescribable joy.
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