今週末19日ソワレの表題公演を、ライブ/アーカイブ配信するという。
アーカイブと言っても翌日日曜日いっぱいだが、それでもありがたい。配信の長所は、なんと言っても何度でも観られるアーカイブだからだ。リアルタイムで観たければ、劇場に足を運ぶ。
https://www.k-ballet.co.jp/contents/504301
見どころは山本くんのロミオと杉野くんのティボルトだが、踊りの技術的には古典の王道作品ではないし、表情造りも豊かで見た目にも違和感はないから、飯島さんのジュリエットも楽しめるかもしれない。また配役はまだ発表されていないが、ジュリエット父(キャピュレット)は、今のランシエくんだったら案外いけるのではないだろうか。
そういえば、光藍社がヒューストン・バレエを呼ぶという。
https://www.koransha.com/ballet/houston/
残念ながらここの全幕作品を観た覚えはないが、所属ダンサーたちはガラ公演で時々見かけ、上手いという印象を持っていたので、そこのプリンシパルだと言うから飯島さんには最初ちょっと期待していた。
しかしあの程度のレベルでもプリンシパルになれるということは、その後世代交代が進み、今は低迷期なのかもしれない。もしそうだとしたら、アメリカから呼ぶのであればサンフランシスコの方が良かったのではないだろうか。ただしサンフランシスコの近況も知らないから、絶対とは言えないが。
あるいは逆のパターンもなくはない。優秀な若手が学校から上がってきたり、優れたダンサーが移籍してきたことで、飯島さんが居づらくなったのだとしたら、むしろヒューストンには期待が持てる。さて、どちらのパターンだろう。(笑)
配信と言えば、先日の「クラリモンド」と熊さんインタビュー。その後プログラムも入手したので、あらすじを確認してみた。
クラリモンドがやってきた理由については特に記述はなく、彼女の妖気を感じたセラピオンの十字攻撃に瀕死となるクラリモンド。その前の吸血でロミュオーも死にかけていたが、最後の力を振り絞って血を与えようとするも、彼を助ける方を選んだクラリモンドはそれを拒み、朝日を浴びて灰になる。
吸血鬼に血を吸われたら1回でもアウトか眷属になるはずだし、そもそもクラリモンドはロミュオーに会いたくて来たんじゃないんかい。(笑) 原稿料をいくらもらっているのか知らないが、解説記事は典型的な提灯記事なので、参考程度にとどめておこう。
熊さんのインタビューは、おおむね既知の内容だったが、ふたつほど印象に残ったものがある。
あ、その前に、読唇術のできる人、いないだろうか。次回作について尋ねられた熊さん、声をださずに口をもごもごさせていたが、それ自体が彼のジョークだったのだろうか。(笑)
熊さんが怪我から復帰した一時期、ものすごいマッチョになっていたことがあった。断裂した腱をカバーするため筋肉を増量したのだろうと勝手に思っていたが、まさか薬剤の副作用だったとは。
もうひとつは車の話。写真の出ていたディーノは、フェラーリマニアでなくとも知っている有名な車で、もはやクラシックカーを超えて美術品に昇華しつつあるが、感銘を受けたのはそちらではなく、熊さんの「(車は)お預かりしている」「人間は死んでも(整備さえしっかり続けていれば)車は残る」「僕は(車が)違う人の手に渡るまでの番人」と言うくだり。いままで漠然と思っていた事柄を、明確な言葉にしてもらった気がした。
車好き、特にスポーティな車に乗っている者は、カスタマイズの方向性として、さらなる性能アップに走りがちだが、うちの爺さんは登場当時、こんなものを市販していいのか、というほど突き抜けた性能で、もはや素人が街中で操れるものではなかったから、ならばとその性能を維持する方向で整備を続けてきた。
付き合い始めてからそろそろ四半世紀も視野に入るようになり、車は走ってなんぼと思っているから走行距離もそれなりにいっているが、丁寧なメンテを続けてきた甲斐もあって、ディーラーやショップの整備士さんたちも驚く状態を保っている。
また何十万台、何百万台も大量生産された車は1世紀近くたたないと希少価値は出ないが、爺さんは元々の生産台数が2000台程度と少なかったこともあり、走行距離の少ない同型車はオークションで2000万円の値を付けていた。爺さんはそれなりに走りこんでいるからそこまでの値段は付かないが、嬉しかったのは高値が付いたことではなく、車の歴史に残る一台になることが明らかになったことだった。熊さんの言葉ではないが、私が死んでも、爺さんは次のドライバーがステアリングを握り続け、野山を駆け巡ることだろう。
そう思うと、「お預かりしている」「番人」という熊さんの言葉が、ストンと心の中に納まった。
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