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2021年04月14日15:26

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映画『アオラレ』試写会レビュー

映画『アオラレ』試写会レビュー(5月14日(金)日本公開)


 ラッセル・クロウが演じるストーカーは迫力たっぷりで一見の価値があると思います。当初ラッセル・クロウはストーカーされる側かと思っていたら、なんとストーカーする側でした。サクッと楽しめた90分でした。
 登場時驚いたのは、彼の太りようです。こんなクマのような人物にどこまでもしつこく追われたら、怖さ倍増でしょうね。
 
 舞台はルイジアナ州ニューオーリンズ。レイチェルは15歳になる息子(カイル)と一緒に暮らしていました。そんなある日、車でカイルを学校に送り届けた帰り道、レイチェルは前を走っていた車が青信号になっても動き出さないという事態に遭遇したのです。レイチェルはクラクションで信号が変ったことを伝えようとしたが、それでも車は動かなかったため、やむなく追い越すことにしました。ところが、前の車の運転手は追い越しに逆ギレし、真摯な謝罪を求めてレイチェルを追いかけてきたのです。運転手の行動は徐々にエスカレートしていき、レイチェルは想像を絶する恐怖を味わうことになったというお話しです。。

 事件に至る状況をもっと詳しくお話しすると、レイチェルは息子、弟、弟のフィアンセと同居していたのです。そして彼女は夫と離婚の調停中でストレスが溜まっていました。 そんな中、息子を学校に送り届けるため運転していると案の定、渋滞に捕まって身動きが取れなくなった。遅刻したせいでクライエントからは首を宣告された。こんな状況で落ち着いていられる人はいませんね。
 次々と不運に見舞われたレイチェルは、イライラしたまま青信号になってもなかなか動き出さない自動車に思わず何度もクラクションを鳴らして催促してしまったのです。

 これがきっかけで運転手は激高し、レイチェルに対し謝罪を要求し、煽り運転を始め、どこまでも追いかけてくるようになったのです。のだった。

 問題なのは、その男の煽り運転はエスカレートぶり。次第に物語はおあり運転の範疇を超えて、まるで『13日の金曜日』のジェイソンのように、男は自分を妨害するものを次々惨殺し、レイチェルの友人や家族にまで危害を加えようとしたのでした。

 そんなわけで後半になると、やりすぎ度が増していき、B級ホラーみたいな展開になっていく作品です。
 日本で煽り運転が社会問題になっていることから「アオラレ」という邦題を付けたのかもしれません。でもラストに近付くともはや、煽り運転という範疇を超えて、殺人鬼が自分を怒らせた被害者と被害者家族をなんとしてでも殺そうとするスリラー追いかけっこ映画に変貌していきます。

 見どころは、煽り運転がメインになっているだけに、カーチェイスシーンが、本家アクション映画も脱帽の迫力あるシーンが続きました。男の執拗さは、レイチェルの携帯を奪ったことから、レイチェルがどんなに逃げても、追いかけてくることにあります。彼女が恐怖でおののくところに快感と満足を感じるようなので、そのためには手段を選びません。警察なんてお構いなしで白昼堂々ひき逃げ、不法侵入、放火、殺人などやりたい放題で、早い話がリアリティーがないところがいかにも映画的なんです。やはりこの辺はある程度誇張しないと、映画的にはつまらないだろうと思います。

 やがて男の狂気は、レイチェルの周囲に及んでいきます。レイチェルの携帯を頼りに、男がレイチェルの離婚弁護士に会ったところ、いきなり殺してしまうあたりから、男の狂気は暴走を始めるのです。いきなりといっても、予告するシーンはありました。それは男はオープニングで元妻を殺して、家に火をつけているシーンが描かれることです。あの衝撃的な冒頭シーンを見せつけられたら、この男が怒りにまかせて、何でも行ってしまうことなんて不思議に感じられなくなるでしょう。
 ただそんな男が、そのときに運転していた同じ車に呑気に乗っているのに捕まってもいないってニューオーリンズはどれだけ無法地帯なのかとは思いました。普通なら、速攻で警察官に射殺されていてもおかしくないことをやらかしていたのにです。

 ありがちなのは、男の犯行動機を精神異常者としてステレオタイプ的に描いてしまうことです。けれども本作は、冒頭のオープニングクレジットで、アメリカの現代社会に漂う狂気とイライラを描きだしました。いまアメリカの現代社会には、レイチェルのような不景気で仕事に恵まれなくなって生活不安となり、感情的になっている健常者が多く存在するのです。つまり精神異常者でなくて、今のアメリカ社会なら誰もがこの男のように、何かのきっかけで狂気に走ってもおかしくないほど、イライラが充満しているのだということが本作の主張のようです。

 そんなイライラに満ちた男をラッセル・クロウはブクブクに太って役作りに臨み、怖さ満点に上手く演じていました。
 本作のいいところは、冒頭で述べたように、90分でサクッと終わるところです。短いので気軽に見れるし、テンポは悪くないので、ストーリーが極端でバカバカしいと思った人でも最後まで退屈せずに見られることでしょう。

 本作のような映画ならではのリアルさを越えたお話しであったとしても、実際にアオラレ体験をお持ちの人なら、映画の中だけでは納まらないかもしれません。きっとその時の恐怖が蘇って、映画の中の虚構が虚構に思えなくなるなり、思わずその時の恐怖感を思い出してしまうのかもしれません。きっと夢の中まで追っかけてくることでしょう(^^ゞ
 
 今話題の煽り運転が、何も日本国内だけのものではないことを実感しました。そして、渋滞したとき、前の車へ安易にクラクションを鳴らすものではないことを、肝に銘じた作品となりました(^^ゞみなさんも運転の際には気をつけましょう。

公式サイト
https://movies.kadokawa.co.jp/aorare/


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