〜露骨な包囲網の中にあっても光る部分がある〜
■タンク/ルーミー&ジャスティは他社から盗んだアクティヴさ、「出藍の誉れ」というべきか■
話題はスズキ・スイフトだが、いずれmixiのニュースで報じられるはずだから、そのブログはまたの機会にさせて頂きたい。
トヨタは2016年の晩秋にbBに代わるコンパクトワゴンとして、タンク/ルーミーというクルマを、子会社のダイハツはトールというクルマを、そして提携しているスバルは懐かしの「ジャスティ」という名で姉妹車の販売を開始した。
スタイルは一目瞭然。スズキ・ソリオとパッと見はうりふたつ。詳細を見れば違うところは多々あるのだが、これまで5ナンバーサイズのトールワゴン市場はソリオの独り勝ちだったのを潰そうとしているのは明らかである。何しろトヨタ全店でタンク/ルーミーは選べるのだ。
ライバルのソリオを徹底的に研究している。何しろ10mm長いロングホイールベースに、10mm短い全長、後席のリクライニング角度もソリオが56度に対し、こちらは70度。後席で寝転がるには良いかもしれない。
尤も個人的にはこの程度のサイズのクルマで寝転がる必要など無いと思っているのだが。
デザインも顔つきがソリオの場合、若々しくトッぽいのに対し、ライバルのルーミー兄弟は凶悪。尤もbBもそうだったが。
この2台、違いはあるのか?それを確かめてみた。
■この2台はエンジン&トランスミッション対決■
トヨタのこの手の商売は全くよくやるよ・・・というしかないが、話をソリオに戻そう。
しかしそんなトヨタの「常習」とは裏腹にスズキは燃費問題もあったが、スズキはめげずにリファインを重ねている。ライバルが出た時点ではまだマイルドハイブリッドしかなかったが、このほど、遂にフルハイブリッドが出たのだ。元々マイルドハイブリッドでも燃費ではソリオが有利だった(ソリオ・マイルドハイブリッド・27.8km/L)が、フルハイブリッドでその差はますます広がった。JC08で32km/Lに達している。お借りした限りだが、東京郊外の巡航で24.1km/L、小田原厚木道路で燃費運転無しで35.2km/Lだった。これだけ走れば実用十分ではないか。
軽量化も見逃せない。1LDコンセプトと称するライバルのルーミー/タンク&トールの1Lの直噴ターボのグレードは車重1100kgなのに対し、ソリオはフルハイブリッドですら990kg。地味に軽量化を重ねている。正直110kgも違うと幾ら1.5L並のトルクを発揮すると謳っていても、この重量差ではかなりの部分が相殺されてしまう。実際かなり軽快だ。個人的に下駄にしているトヨタ・ヴィッツとほぼ同等の重量のはずだが、こちらの方が軽快。ゼロヨン勝負した訳ではないが、パワーウエイト・レイシオからしたら、明らかにルーミー兄弟よりもソリオが加速でも優勢。全高が1700mmもあるのに、街中では全く不安を感じさせない。
ではマイルドハイブリッドはフェードアウト?と思ったが、そうではなかった。
マイルドハイブリッドと際だって分かりやすい違いにトランスミッションとの違いがある。マイルドハイブリッドはCVTだが、今度は既にアルトターボRSにも採用されている5速AGSと称する2ペダル5ATが載る。スズキに言わせると、今の技術ではフルハイブリッドだとCVTが載らないので、敢えて5AGSにしたという(確かにソリオのエンジンルームは小さめ)。しかし単に載せるだけでなく、5ATの継ぎ目を円滑にするため、モーターを駆動させるように設えたのだから凄い。言われなければCVTと差が無いほどだ。
ここでマイルドハイブリッドの存在意義が出て来る。
降雪地では矢張り4WDが欲しいところだが、四駆を載せようとすると今度はスペースが足りない。ということで、四駆のハイブリッドが欲しい人はマイルドハイブリッド、ということになる。当分この部分が解決するまではマイルドハイブリッドを選ぶ意味がありそうである。
尤もスズキには既にバレーノに搭載されている1L+3気筒ターボエンジンもある。こちらはルーミー/タンク、トール、ジャスティの1Lターボ(98馬力)を圧倒する111馬力。こちらを載せようと思えば出来たはずだ。しかし敢えて自社開発に拘った。その意気は買いだ。
■車幅の「狭さ」がソリオの武器
ソリオの武器は車幅である。多少大きくなってしまったとはいえ、車幅は1625mmである。今や
このサイズはトヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーンよりも狭く(1665mm)、勿論ライバルのルーミー兄弟の1670mmよりもずっと小さい。意外にもこのサイズが3ナンバーだらけの日本の道では重宝しそうだ。
ソリオは初代ではエンジンではシンプルな1グレードだったが、ハイブリッドが2つ加わったことになる。Sシリーズがフルハイブリッド、Mシリーズがマイルドハイブリッド、そしてGがガソリン車というラインナップ。
この「狭さ」で5人乗車分のスペースを確保している。このパッケージングは凄いものだと感心させられる。スズキのディーラー氏が「スズキのニッチ(隙間)カーです」と仰せだったが、謙遜が半分と、わずかな狭い道でも入れるクルマです、という車幅の狭さに自信を持っているのが窺えた。荷物室のユーティリティの凄さについては雑誌などの書かれている通りである。スポーツバイク、MTB車の前輪を外さずとも2台乗せられるほど全高に余裕がある。
スズキは生活者視点で開発するのが得意なメーカーで、ソリオもそれを裏切られることはない。話題度ではルーミー兄弟の方が上でもソリオの方が未だに魅力的な部分を残している。
■トヨタがクルマ好きから嫌われる理由■
翻ってルーミー兄弟。考えに考えて造りこまれたソリオと比較すると自分というものが無いクルマだと思わざるを得ない。
以前mixiニュースでこのクルマが取りあげられていた時、
「クルマ自体には興味が無いが、このエンジンが次はどんなクルマに積まれるのか興味深い」
と消極的なコメントを書いたが、あれから日も経ち、その通りになってしまった。
トヨタは往々にしてこういうことをやる。プリウス、ヴィッツ(いずれも初代)のような独創的なクルマを造れるだけの力はあるのに、どうもパクリ癖が止められない。
〜トヨタのパクリ作戦の「戦歴」〜
◆アルテッツア vs BMWの3
BMWの3に対して「皆さん、こんなに安くBMWチックなクルマが買えますよ。」とアルテッツアを出した。このサイズは確かに乗りやすかったものの、結果はBMWのプレミアム性には及ばなかった。
◆bB vs ホンダ「不夜城」、S−MX
モーターショーでホンダの「不夜城」というコンセプトカーそっくりなクルマとしてbBを出した。さぞやホンダは腸が煮えくりかえったことだろう。排気量の低く、税制でも有利なbBが勝利したが、2代で消滅。
◆カローラ・ランクス/アレックス vs アウディA3
アウディA3のリアコンビネーションランプのそっくりなクルマにカローラ・ランクス/アレックスというクルマを出した。最上級グレードのセリカのエンジンを積んだものはVWゴルフGTIも斯くや・・・と言われたほどの加速性能だったが、プレミアム性を付加には至らず。この代でオーリスと選手交代。
◆マークII vs メルツェデスのC
最後のマークIIのリアランプのデザインもまたメルツェデスのCと酷似したデザイン。亡くなった徳大寺有恒さんは最後のマークIIに「一体こんなデザインにハンコウを押した主査は何を考えているのか」と呆れていた。結果的にこのマークIIで最後となり、マークIIがR系スカイラインに勝利し、マークIIも消滅。
◆ウィッシュ vs ホンダ・ストリーム
ミニバンではホンダ・ストリームを初代のウィッシュでは真似た。2代目のストリームのCMでは分かる人には分かるように、「ポリシーはあるか!」とやり返した。勿論この文言は個性的な男に対してではない。トヨタに対して言っているのだ。ストリームは戦いに敗れたのではなく、ホンダ社内で「下剋上」が起き、もっと上のクラスのジェイドにその座を明け渡した。
◆アルファード vs 日産・エルグランド
まだ終わらない。今度は日産・エルグランド潰しのため、アルファードを出す。アルファードのフロントグリルが中庸なトヨタ車の雰囲気とは異質に面妖で凶悪なのはそのためだ。詳細を見てみれば、初代アルファードのトーションビームよりも当時のエルグランドの方が足回りは上等だが、買う人間はそんなことは歯牙にも掛けないのだろう。この「下品合戦」はトヨタが勝利。
そしてまたしても・・・。
まるで万引きの常習犯が「どうにもやめられまへんなぁ」と云わんばかりにパクリを繰り返すようでは幾らハードとプロダクトの出来が良くても生粋のクルマ好きから好かれることはないだろう。
ソリオに対する露骨なやり方を見ていると、トヨタのパクリ癖はちょっと深刻な問題ではないだろうか。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。
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