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2013年04月26日23:29

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シベリウス・チクルス最終回、インキネン&日本フィル@サントリーホール

フィンランド出身の若手指揮者ピエタリ・インキネンと日本フィルによるシベリウス・チクルスもこれで最終回。

01.シベリウス:交響曲第3番 ハ長調 作品52
<休憩>
02.シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 作品104
03.シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 作品105

とうとう終わってしまったか…。
曲数は多いが、今日がいちばん地味なプログラムだろうか。
ただ、やはり7番で締めるのは正解だったのだろうと思う。

3番は過渡的な作品と言われているが、すでに後の独自の宇宙を予感させるのに十分だ。3楽章構成で、終楽章がスケルツォとフィナーレを合わせたような性格をしている。全体的に穏やかな曲だが、その第2楽章の澄んだ美しさは筆舌に尽くし難い。
そして、この楽章の鍵は木管である。ことにフルートとクラリネットか。このオケの木管は巧いので期待していたが、その通りの演奏だった。今回のフルートの首席は真鍋恵子。この人のフルートはとても良い。
両端楽章はちょっと生真面目すぎたか。もう少しとぼけた感じがあっても良かったように思う。まあ、贅沢な注文だが。

あまりにも美しすぎる6番。もしシベリウスで1曲を選ばなければならないとしたら、迷うことなくこの曲を選ぶ。この曲を宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に喩えた人がいる。諸手を上げて賛成とまではいかないが、うまく言ったものだと思う。
自然のアニマを音にしたような曲。憧れと切なさに溢れている。そして祈りだろうか。静謐のシンフォニー。1番以来のハープが響きに彩りを添える。
この曲には透明度の高い弦の音が必要。このあたりの鳴らし方の上手さはインキネンがヴァイオリニストでもあることによるのだろうか。透明度の高さと、相反するような暖かさ。それを実現するのは容易なことではないだろうが、大健闘だったと思う。
おおげさな身振りの音楽に仕上げるのではなく、終始夢幻的なたたずまいを維持していた。
私はやはりこの曲が大好きだ。
演奏されることのさほど多くないこの曲を聴けただけでもこのチクルスには満足している。
ちなみに、私のプロフィール用の写真に使われているカクテルはこの曲をイメージして作ったオリジナルである。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1653952384&owner_id=3696995

インキネンはここでインターバルを開けずに続けて7番を演奏した。(開演前と休憩中に放送あり)
私としてはここでも休憩が欲しかったところだが。

ついにここまで来たか、の7番。
峻厳たるシベリウス山脈の中の最高峰がこれだろう。独創的な単一楽章のシンフォニー。
全てが有機的に絡み合っている。愛想のいい曲ではないが、あっという間の20分。
トロンボーンの音色が柔らかい。ここは乾いた音色で吹いて欲しいという向きも多かろう。この柔らかさというのはインキネンのシベリウスに共通するもののように感じる。
私はこの7番を聴くとき、好きな曲ではあるのだが、曲に近づききれないもどかしさというものを感じていた。それが孤高であるということなのかもしれないと思ってもいたのだが、今日は違った。その音楽に包まれている自分を感じた。その懐に入ってみると、なんと優しい音楽であることか。
これがインキネンのシベリウス演奏の到達点なのか。

作品番号が続いていることもあって、両方で1曲というアプローチ。
これはこれで悪くはないが、6番の余韻に浸りたかったとも思う。

インキネンの演奏は細部にこだわりつつも大局的に曲を捉えるというものだと思う。
独自の解釈で聴かせるというタイプでもないし、強烈な個性というものがあるわけではない。ただ、丁寧に音楽を作るという印象だが、表情付けは意外に濃い。なので、必ずしも万人受けする音楽ではないだろうし、それでいいと思う。
表現者である以上、賛否両論は望むところだろう。

いいチクルスだったと思う。
シベリウスの交響曲全曲を集中して聴ける機会などそうそうないだろうから、貴重な経験だった。
インキネンの指揮に高い集中力で応えた日本フィルの健闘も称賛すべきと思う。
金管セクションの充実ぶりも素晴らしい。ことにトランペットの客演首席のクリストーフォリは上手いな。

まあ、インキネン&日本フィルの演奏も良かったが、やはりシベリウスの曲は素晴らしい。
そして、自分はシベリウスの音楽がすきなのだなと改めて気付かされた。
補遺としてヴァイオリン協奏曲とか『タピオラ』とか4つの伝説曲とかやってくれないかなあ。。。

次回のインキネンは9月にワーグナー・プログラム。
う〜ん、どうしようかなあ。。。

日本フィルでは、10月に首席の真鍋恵子がフルート・ソロを吹く武満の『ウォーター・ドリーミング』を聴いてみたい。指揮はラザレフで、メインはスクリャービンの3番『神聖な詩』。
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