公演開始時間は1400時。
一方、台風14号の関東最接近予想時間は1800時。
カテコや台風の増速を考えると、微妙な状況です。(^^;)
雨に濡れるのはいやだし、電車が止まる可能性もあるので、
車で行くことも考えましたが、
都内には意外と冠水しやすい場所が多いようですし、
往復には風の影響を受けにくい地下鉄が使えるので、
やはり電車で行くことにしました。
そのかわり、自宅最寄り駅のコイン・ロッカーに、
重いけれど防水性能は抜群の、イギリスで買った舶用コートを事前配備。
* * *
初台の新国立劇場、真上から見ると、
地下鉄の出口から劇場エントランスまでは屋根に覆われていますが、
設計した奴、西風が強い時の荒天というのは考えてないな。(uu;)
* * *
Kを観た直後というのを差し引いても、
新国のファンは男性も多いようですね。
* * *
ビントレー新芸監の船出の舞台、楽しんできました。(^^)
タイトルは「ペンギン・カフェ」ですが、内容はトリプル・ビルです。
終演後のミニトークでも語られていましたが、
まず古典と近代バレエの橋渡しであるバレエ・リュスの作品からひとつ、
その後継者の代表としてバランシンさんをチョイス、
そして「私はこういう者です、どうぞよろしく!」というわけです。
★フォーキン「火の鳥」
舞台と衣裳を新調した「新制作版」とのこと。
プログラムの解説によると、初演時のゴロヴィンの舞台装置は、
保管状態が悪く使えなくなってしまったため、
(コンテナに入れて野ざらしだったのかな。(^m^))
ツアーでの輸送を念頭に軽量化したものを、
ゴンチャローワが新たに作ったそうですか、
今回新国が制作した舞台装置と衣裳は、
両者のデザインを取り入れたものだそうです。
京劇ダンサーのようなメイクと衣裳の川村さんが、
舞台を右に左にと駆け抜けます。つり目メイクが新鮮。
その様子をこっそりのぞき見する福岡イワン王子の衣裳は、
「イワンの仔馬」の王様のよう。(^o^)
物語が進むにつれて、1ダースの囚われの姫様、
召使いの男女、アラジンの魔法使いのような出で立ちの衛兵、
魑魅魍魎そして魔王カスチェイと、舞台上にダンサーたちがひしめきます。
新生新国バレエ団をよろしく、というところでしょう。(^^)
火の鳥にあやういところを救われた王子は、
魔王の命の元、巨大タマゴを発見すると、
おっとっと、あぶないあぶない、とさんざんひっぱったあげく、
床にたたきつけます。...性格の悪い奴だな。(^m^)
呪いの解けたツァレヴナ姫との結婚式場面で物語はおしまいとなりますが、
カテコでは、なぜかみな堅い表情。笑顔になればいいのに。
ビントレーさんがこの作品をもってきた意図はわかるのですが、
新国ダンサーの魅力を観客にアピールするという点からすると、
新芸監、わかってて選んだのかな? とちょっと気になります。
猥雑なモブシーンは新国の弱いところで、迫力に欠けるからです。
やはりこの手の作品は、ボリショイかロシアのローカル・バレエ団、
でなければ昔の東バ、今のKで観たいな。
★バランシン「シンフォニー・イン・C」
今回はおもいっきり前方席でしたが、
バランシンのフォーメーションは、やはり上からの方が楽しいですね。
でも、綺麗でした。(^^)
40人以上が入れ替わり登場し、まさに新国ダンサー総動員ですが、
こうして眺めていると、移籍組の長田さんが重用される理由がよく分かります。
腕使いや空間の利用の仕方が、あきらかに他の人とは違う。
そして小野さんが、また進化していました!
これまでの「かわいい」から「美しい」ダンサーに。
踊りも長田さんに負けていません。(^^)
男性では、やはりマイレンさんがダントツ。
福岡さん、冨川さんもいい感じでした。(^^)
新国の舞台は、たしか高さや奥行きはあっても幅が意外となく、
「火の鳥」で群舞の踊りが小さく見えたのは人口密度のせい、
と自分に言い聞かせましたが、(^^;)
第1章と第2章のコリフェと群舞たちの踊りは、いまひとつ魅力に欠けます。
それに比べると、第3章、第4章のコリフェと群舞は、
雑なところはあるけれど、観ていて楽しい気分にはさせてくれました。(^^)
★ビントレー「ペンギン・カフェ」
音楽好きのビントレー監督が1988年に発表した作品で、
ペンギン・カフェ・オーケストラの作品から8曲を選び、
それぞれに今は亡き動物種を主役に置いて、
「生物の多様性」の大切さを訴えた、タイムリーな演目です。(^^)
...ペンギンは絶滅してないでしょ、と思われた方、
厳密にはペンギンではなく、その原種のオオウミガラスだそうです。
冒頭、カクテル・グラスを載せた盆を手に、
蝶ネクタイ姿のペンギン給仕が登場するのですが、
中身のさいとうさんの踊りに惚れ直しました!(^^)
その愛らしく、かつ目を惹く動きは、ロイヤルのダンサーのものとはまた違う、
彼女オリジナルとも言えるキャラクターを創作した、
と言っても過言ではありません。(^^)
オオツノヒツジの湯川さんも、セクシーで素敵でした。(^^)
これならビントレーさんがマミコ! マミコ! と言うのもわかる。
でも、ツァレヴナ姫はいまひとつでした。
彼女は古典に対して苦手意識でもあるのでしょうかねぇ。
古典から離れた作品ではのびのびと踊るのに、
プティパなどになると、とたん動きが萎縮してしまうのです。
最初からできない人なら仕方ないですが、
力量のある人だけに、もったいない。どこかでふっきれてほしいな。(uu;)
このほか印象に残ったのは、ケープヤマシマウマを演じた芳賀君と、
ウーリーモンキーの脇で踊ったピンクの衣裳2人のうち、
下手側の女性(大和さん?)。そのリズミカルな踊りを眺めていると、
観ている側もつられてにこにこしてしまいます。(^^)
* * *
指揮はバーミンガムからのゲスト、ポール・マーフィさん。
オケは東フィル。こちらも良い演奏でした。(^^)
よりによって、合同ガラだけが、なぜ!?
* * *
時計を3時間ほど巻き戻し...。
ほとんど濡れることなく無事劇場に着くと、館内放送が、
終演後にビントレーさんのミニトークがある、と告げています。
...天気予報によると、台風のピークは1800時頃なんだよなあ。
観覧後、携帯で雨雲レーダーを確認すると、
差し迫った豪雨の予兆はありません。
20分程度とのことだから、聴いていくかな。(^^)
* * *
まずはビントレーさんからのご挨拶。
「この数週間は、とてもエキサイティングな日々でした。
そしてたったいま、すべてのダンサーたちに、
素晴らしい舞台をありがとう、とお礼を言ってきたところです。
なぜなら、今回の公演は、様々な様式の踊りをとりこんだ、
とても難しい舞台だったからです。」
続いて、事前に集めていた質問票を元に、Q&A形式。
今後も随時、これをやっていきたいとのことでした。
Q
今回の作品を選んだ理由は?
A
日本のファンの古典好きはよくわかっています。
そのうえで、あえて20世紀の作品を知ってもらいたくて選びました。
そして、僭越ながら、私の作品も。(笑)
英国でも、日本と同様に古典が好かれていますが、
同時に20世紀生まれの短い作品も好まれています。
そこで20世紀バレエの代表と言えるバレエ・リュスからひとつと、
その後継者であるバランシンの作品を選んだのです。
Q
振付を考えるとき、表現したいことを、ダンサーにはどう伝えるのか
A
振付家の仕事は、創作が50パーセント、
意図をダンサーに伝えるのか50パーセントと思っています。
そのためには日々のコミュニケーションが大切ですが、
言語が違うと、なかなか難しいものがあります。
そこで老体に鞭を打ち、私も踊ってみせたりしています。
Q
ペンギンが好きなので、大阪から観にきました。
ペンギンは、人間をどう思っているのでしょう。
A
ペンギンがこの作品を観たら、悲しく思うことでしょうね。
なぜ、地球を汚染するのか。どうして動物を滅ぼすのか。
ペンギンは、同じ質問(人間はペンギンをどう思う?)を、
人間にすると思いますよ。
Q
羊はどうやって前を見るのですか。
A
マミコ(湯川さん)とムツコ(遠藤さん)に、
今回は、君たちはいちばん難しい役に当たってしまった、と話したのですが、
たぶん、マスクを被るまでは信じていなかったと思います。
羊は鼻、網になったところから見ています。
ステージの照明は、全体に当たっているときはいいのですが、
スポットライトはとてもまぶしく、羊の鼻のように網越しになると、
見えるのはパートナーのみで、床もオケピも見えません。
自分の位置がわからないのです。
そのためパートナーは、羊とともに大変な役なのです。
Q
新国のレベルは?
A
芸監のオファーがあったとき、
悩んだのは時間的に両立できるかどうかだけでした。
今、世界で2つ目のバレエ団の監督になるとしたら、
と問われたら、ここ以外に考えられません。
新国のダンサーたちは、心から踊りたがっている。
だから、そのための努力をいとわない。
こういうダンサーは、世界でも珍しい。
なんのために踊るかすら、わかっていないダンサーもいます。
でも、ここのダンサーたちはみな、踊ることを楽しんでいます。
Q
ここの男性ダンサーはどうですか。
A
力強いダンサーが何人かいます。
また、私の作品は、男性ダンサーたちにとって
魅力があるのかもしれません。
私は、男らしい男性ダンサーが好きですね。
Q
ここでないと観られない作品をやってほしいのですが。
ここの群舞を生かす作品など。そしてザハロワさんをまた呼んでほしい。
A
もちろん、古典もやります。ゲストも呼びますよ。
でも、この素晴らしいハコに相応しい作品を、と思っています。
また古典ではないものもやりたいと思っています。
でないとここは、ただのミュージアムになってしまう。
20世紀のバレエをやってこそ、19世紀の作品も生きるのです。
いろんな作品をやることで、ダンサーたちの質も向上する。
あのボリショイですら、新鋭の振付に注目しているのですよ。
劇場の未来を見据えた作品を上演していこうと考えています。
* * *
帰り道の、お師匠さまのつぶやき。
「今の方針のままでいいと思う。
ここでしか観られないものをやってほしい。
古典はKとか余所で観るからいいよ。」
たしかに古典は海外のバレエ団もやってくれるし、
良い良いと言われる群舞も、小林の方が優雅で魅力的ですからねえ。
東バのベジャール作品のように、ここだけでしか観られない、
ここならではの、という作品を演じてほしいですよね。(^^)
そして、ここのダンサーたちが、
踊るの大好き、そのためには努力を惜しまない、という言葉を信じたい。
その彼ら彼女らのためにも、公演数を増やす手だてはないものでしょうか...。
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