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2021年04月27日10:53

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映画『約束の宇宙(そら)』作品レビュー(日本公開:2021年4月16日(金))

映画『約束の宇宙(そら)』作品レビュー(日本公開:2021年4月16日(金))

 シングルマザーのフランス人宇宙飛行士サラ(エヴァ・グリーン)が、火星探査ミッション“プロキシマ”のクルーに選ばれます。しかし1年間の乗船任務を前に、7歳の娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)と離ればなれになったサラは、ロシアでの訓練中に不安を募らせていくのでした。
 SFとは異なる手法でロケット打ち上げまでの日々の中での夢との闘いと葛藤、そして親子の絆を描くヒューマンドラマです。女性の視点で映し出す“宇宙と母性”が新鮮。
 
 
 ドイツの欧州宇宙機関(ESA)で訓練中のフランス人宇宙飛行士、サラは、火星探索への最終準備を1年間にわたって進める宇宙ステーションのクルーに選ばれた。甘えたい盛りの7歳の娘を元夫に預け、打ち上げまで、ロシアとカザフスタンの施設に隔離されることになります。
 
 同乗するアメリカの宇宙飛行士(マット・ディロン)や訓練教官らは、いかにも女性の能力を値踏みする風だが、サラは負けていません。遠心加速器での強い重力に耐え、過酷なキャンプでは男性クルーと打ち解けるようになれます。

 宇宙飛行士に選ばれた当初は、大喜びのサラでしたが、夫と離婚後、一緒に暮らすステラと長く会えなくなるつらい心との葛藤に直面するのです。電話口で母の不在を寂しがり心を閉ざすステラ。しかしサラにはどうにもならなりません。そこで過酷な訓練の間にサラはステラにひとつの約束をするのです。それは「打ち上げ前のロケットを見たい」というステラの願いでした。サラは約束を果たすため、出発直前、掟破りの行動に出るのです。
 
 宇宙開発を題材にしているが、壮大なSFではありません。宇宙飛行士としても母親としても重い責任を背負った主人公の葛藤を通して、仕事と育児の両立、夢を追うことの代償といったテーマを描く普遍的なドラマなのです。
 NASAならぬ欧州宇宙機関の協力のもと、実際の訓練施設や発射基地で撮影を実施。 ケルン、モスクワ、カザフスタンにある実際の訓練施設や宇宙基地を使った撮影はリアル感が満載でドキュメンタリー映画のようです。
 そんなリアリズムを基調として、飛行士たちの過酷なトレーニング風景をカメラに収めた映像世界には、母娘それぞれの感情が揺らめく詩的な瞬間も刻み込まれていました。

 過酷なトレーニング、宇宙飛行士の会話からも、男性主導の社会で、女性、しかも母親が宇宙飛行士となる過程とその困難さが浮かび上がきます。
 この物語の後半をどう見るかで、観客(男性)のパワハラ度、セクハラ度が測定できるかもしれません。「これだから女ってやつは…」なんて言う人は失格ですね。宇宙に持ちこめる靴箱大の私物入れにサラが詰め込んだものを見れば、母なる地球への慈しみが、きっと分かることでしょう。テレシコワが女性として人類初の宇宙旅行を行ったのが1963年。エンドロールに映し出される歴代の女性宇宙飛行士の勇姿に、監督の宇宙開発における“進歩”を根底から問いただすものを感じさせてくれました。
 
 英雄的に描かれがちな宇宙飛行士を生身の人間として体現したエヴァ・グリーンと、感受性豊かな子役の演技も秀逸です。アリス・ウィンクール監督。1時間47分。

追伸
 ラストの掟破りの行動に出るシーンは、母親としての愛情の強さを感じさせて、感動的。でももう少し親子の間の葛藤と解放感が見たかったです。作品は打ち上げまでだけど。その後の帰還後に親子が再会するところも見せて欲しかったですね。

公式サイト
http://www.yakusokunosora.com/



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