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2020年01月07日12:30

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「強健術」案内124

今回より『体格改造法』に解説される「強健術」を見ていきます。この「強健術」は、前々著『心身強健術』に発表された型を発展させ出来たもので後の「気合応用強健術」と呼ばれるようになります。これに対して前著『強い身体を造る法』に発表された「強健術」は後に「簡易強健術」と呼ばれるようになります。それでは具体的な方法を見て行きたいと思います。

前腕筋鍛錬術
◎氣合殊に腹力を以って前腕筋を鍛える法
(イ)拳の握り方を規定通りにして(食指と中指とを掌上に曲げ、其の前へ拇指を折って寄せ附け、第四指を拇指爪の上に捲き附けてこれを押さへ、小指を確り握り締めるのです。左様すると前腕諸筋肉の緊張力が同等になります)。両腕は寛かに体側に垂れて居ります。(拳の握り方は各運動を通じて同一です)。

これは、おなじみ「集約拳」の解説です。

(ロ)両足は直角に開いて立って居ります。(爪先の幅を二等分した点と、踵の幅を二等分した点とを結び着けた直線を、足の中心線と申します。両足の中心線が、踵の後方で相交じった処が直角をなすと云うことです。ですから両踵の間はどれ程離れて、角度には変わりはありませぬ)踵と踵との間は、約五寸位離して居ります。

「爪先の幅を二等分した点と、踵の幅を二等分した点とを結び着け」てそれを「足の中心線」として、その線の延長線が直角に交わるように正確に足の角度を規定するのはこの「強健術」からとなります。これまでは、ここまで正確に足の直角を規定することはありませんでした。「強健術」の改良が進んでいることを感じさせます。

(ハ)全身何れの筋肉にも、力は入れませぬ。けれども体は真直(まっすぐ)。
(ニ)首を垂れてジッと心を沈めます。
(ホ)呼吸が穏やかに精神が落ち着いたら遽かに急激な充分の緊張を腹直筋に与え、同時に頸部筋肉に力を入れて、グイと首を持ち上げます。
(ヘ)此の瞬間唇をウンと結び、両岸をパッと確り見開いて、視線をキッと虚空に定めます。其の位置は両眼の水平線より、稍々高い所です。
(ト)間も無く、腹筋と頸部筋肉との力を抜いて、目付きを赤ん坊のように無邪気に致します。そして虚心坦懐に呼吸はスウスウと極めて静かに楽しく、鼻から通います。これを『自然本体』と申します。静の極です。(以上運動前の姿勢)

たれた首を挙げ、「腹直筋」に力を入れ目を定めるのは、「瞳光の不睨」を決めるための準備動作です。そして「腹筋と頸部筋肉との力」を抜き目つきを無邪気にして、立位の「自然体」、「自然本体」で立ちます。

(チ)上体は、柔軟なまま真直ぐにして姿勢を崩さず。
(リ)其のまま左足を、中心線に従って、斜め後方に引き、もと左足の踵のあった位置に、左膝をつけます。重心がスッカリ左膝に落ちる様にします。(準備姿勢)
(ヌ)右腕を軽く左腰前に持って来て、左手先を右手首にソッと添えます。(掌は両方共下に向けて置きます)
以上までは、右前腕筋緊張の準備姿勢で少しも力を入れませぬ。
(ル)右足を一歩。横に真横に、股を開いて踏み出すと同時に(右足内側は左膝のついて居る直線状にある様にしたら、一分の隙もない正確な形となり、脚の力は最強のものを起こすことが出来ます。
(オ)右腕を左前腰から、顔の前を通って大きな円を描き、右体側に引きつけます。此の際右拳をキッと確り握りしめますと、前腕筋は自然と緊張致します。恰も『拳は南山の猛虎を博つ』の勢いがなくてはなりませぬ。
(ワ)右腕を右体側に引き付けた時、右手首に添えた左手でウンと握りしめて、右前腕筋の緊張を助けます。
(カ)右上腕は右体側に密接し、右前腕はこれと直角。右掌は上方に向いて居ります。

この部分が前々著『心身強健術』に発表された「強健術」と最も異なる部分です。『心身強健術』では右手に左手は添えずに、右手だけを直角に持ち上げ「前腕筋」を緊張させましたが、今回は右手に左手を添え上から押さえることによりさらに「前腕筋」の緊張を高めています。
また、この反対の手を鍛える手に添えて半円を描く方法は前著『強い身体を造る法』に初めて発表された「前腕筋鍛錬術」で用いられた方法です。この新たな方法を、今回の型に導入することにより、今回の「前腕筋鍛錬術」は大きく進化することになります。

(ヨ)前腕筋の大緊張9(9と記し10と記したのは緊張の度の割合を示したものです)と腹筋の極度の緊張10と同時に、腹の底より渾身の元気を籠めて。『エイッ』と掛聲をする。

ここで解説される「前腕筋の大緊張9」、「腹筋の極度の緊張10」という割合も、前著『強い身体を造る法』で初めて厳密に「腹力十部各部筋肉九部」と定めた力の配分であり、後に「中心力」、「部分力」の力の配分といわれるようになる「強健術」の重要な力の入れ方です。

(タ)掛聲を終わったら、呼吸を計って、先ず右足を元の位置に引きつけ、左足も元の位置に戻して、徐(おもむ)ろに立ち上がり『自然本体』に帰ります。
(レ)体の上下と共に、空間に定めた視点(実際の目標を定めたら、体を下ろしても視線はそれに注いで居るのです。但し見詰めませぬ。)を変えませぬ。

型を行っている間は、この「瞳光の不睨」を行います。

(ソ)以上で右前腕筋一回の運動であります。左前腕筋の運動方法も同一です。左右交互で回数は二回です。
(備考)腰を下ろして脚を側方に踏み出した時―踵を踏み附けるや否や、其の力で腹筋を緊張させ、其の瞬間の勢いを利用して前腕筋を緊張させるのですが、前腕の主要筋肉は指に連なっているのですから、拳を確り握りしめて、始めて充分に其の目的を達する事が出来るのです。

『体格改造法』に発表される型は、前々著『心身強健術』に発表された「脚の踏附」によって「腹筋を緊張」させるのが特徴です。その原理等につきましては、刊行予定『聖中心伝−肥田春充の生涯と強健術−』(青年編)「第四章 軍隊時代 第九節 腹力と脚について」 をご覧下さい。

▲上体は何時でも正しく、前方に向いて居らねばなりませぬ。
▲前腕と腹筋意外は悉く弛めて居たいものです。上体を伸び上がるのも良くありませぬ。
▲臀部は踵に附くのではありませぬ。腰は真直ぐに立って居るのです。
▲膝を附いた方の足は爪立って居ります。爪先を寝かすと姿勢は大層弱くなります。
▲緊張させる前腕筋は、顔の前を通って引きつける時、上から下へスウッと力を入れます。そうすると自分の力と、腕の重さと、引力の働きと、この三つを、動作の上に利用することになります。(体格改造法 P.141〜145)

これは前著『強い身体を造る法』に初登場した、重力による腕の重みなどを最大限に生かした「力を垂直に用いる」方法の応用であり、『体格改造法』に発表された「型」は、前々著『心身強健術』に発表された「型」に、前著『強い身体を造る法』で新たに発表された方法をミックスしたものであることがわかります。

本運動の目的は、前腕筋肉の緊張と、下腹部の緊張にして、掛声による氣合を重んずるものなれば、最も勇ましく、強く、腹のドン底より、確り発声して、四辺の空気をビリビリと振動せしむる意気あるべし。(この場合発声の要領は、第七(本来は八)練修法の斜腹筋鍛錬術に明らかなり)。声弱ければ、前腕の力も従って弱く、遂に南山の猛虎を打ちて、其の脊梁骨を粉砕したりとの豪壮なる信念を得られざるべし。詩に云う。『拳は南山の猛虎を博つ』(体格改造法 P.196)

以上で「前腕筋鍛錬術」の解説は終わります。これまで見てきましたように、この「型」にはこれまでの「強健術」の「瞳光の不睨」、「自然本体」、「脚の踏附」、「利動力」、「中心力と部分力の力の配分」、「有声の気合」などの方法が導入され大きく発展したことが分かります。

(写真は『前腕筋鍛錬術』を行う春充)
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