焦点:日本敗れ潜水艦「ごうりゅう」幻に、仏勝利の裏側
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■札束外交に呑み込まれた豪州
オーストラリアのマルコム・ターンブル首相が4月26日、次期主力潜水艦はフランスとの共同開発を行なうと発表したことは波紋を呼んでいる。当初、オーストラリアは中国海軍の活動の活発化を見て、コリンズ級と呼ばれる潜水艦の代替えに4千トン以上の大型潜水艦の導入を検討していた。白羽の矢が立ったのは次の三か国。
◆ドイツ・・・216型潜水艦
◆フランス・・・未提示
◆日本・・・2011年以降、そうりゅう型。
日本は2011年に武器輸出三原則の緩和を行なった。これによってオーストラリア政府も日本のそうりゅう型を検討に入れた。
安倍首相と蜜月関係にあったトニー・アボット元首相は次期潜水艦を国内で建造すると公約したため、そうりゅう型やドイツの216型を入れれば公約に反することになる。しかし、アボット元首相は経済観点だけでなく、国防の事は軍事的視野から判断されねばならないと表明。
去年の段階ですら、日本のそうりゅう型は確実視されていた。
しかし、決まったのは現実にはフランスとの共同開発だった。
ターンブル首相は中国共産党員と親戚関係にあり、親中派ではあるが、豪州の権益に反することは強く反発する態度を一貫して取っていただけにこの報に日本では豪州の裏切りだとする声が根強い。
ターンブル政権の親中ぶりはここへ来てバイアスが見られる。アメリカ海兵隊が巡回で寄港するダーウインの港の一部を中国の人民解放軍に近しい中国系の企業に何と99年間もの長期租借を許可したというのだ。
敗戦した訳でもないのに、帝国主義時代ではあるまいし、99年も銭で租借してしまう国があるのだろうか?
結果的に見ればオーストラリアは中国に札束で呑みこまれたと云われても抗弁出来まい。
■フランスとの共同開発は上手くいくだろうか?
中国の立場からすれば、日本のそうりゅう型潜水艦が豪州で配置されたらこれは怖いものである。実を言うとフランス海軍には第一次、第二次世界大戦と潜水艦の実戦経験が全く無い。多分中国は実戦経験が無い国との共同開発など上手くいくはずがないと思っているから日本製は入れるなと圧力を掛けたのではないだろうか。
意外に聞こえるかもしれないが、兵器というのはその土地その土地の影響を受けやすい。特に海中での作戦行動が主となる潜水艦となれば当然のことだ。実際、韓国軍がドイツの潜水艦を採用しているが、当時故障だらけだったという。ドイツ海軍は実戦経験もあり、第二次世界大戦中のUボートはよく知られている。しかし、ドイツ周辺海域の海流は寒流なのに対し、韓国近海は暖流である。こういう違いはかなり大きい。
それを考えると、フランスとの共同開発の潜水艦。それほど良い出来になるとは考えにくい。
公式には日本は海外での現地生産の実績に乏しいから、とされている。しかし去年の経済産業省の資料では既に海外生産比率で24.3%に達している。実績が無い、というのは嘘である。
■ターンブル首相の表明3日前にあった暗闘
実はターンブル首相がフランスとの共同開発を決定したことを表明する3日前、シドニー時事がフライングで発表してしまった。これに対し、連邦警察は機密漏えいの疑いで調査に乗り出したとABCが伝えている。警察が真っ青になって調査しているくらいだから、政府の威信に関わる事件と捉えているのだろう。
これを見てお粗末だと思ったのは自分だけではあるまい(笑)。政府発表前にテレビ局に情報が漏れていたのである。
或る意味日本はこのような情報保護が甘い国に技術が漏れなかったことは幸いと思わねばなるまい。そもそも豪州は天然資源があることに胡坐をかいて、日本のような技術革新を怠って来た。実際、豪州を本社とするグローバル展開している製造業は皆無に等しいどころか、オーストラリアから撤退気味なのだ。そのような国と軍事で組んでも果たして日本製並みのクオリティ、耐久性、精度を維持出来るのか甚だ疑問だ。
それにしてもターンブル政権の面目を丸潰れにしたこの事件、犯人は誰なのだろうか?自分はアボット前首相か支持勢力のような気がしてならないのだが。寧ろそちらの方が気になる。豪州の政権は親日、親中政権がまるで交代するように出て来ている。
ポール・キーティング(1991〜96)・・・親日。APECの提唱者。
ジョン・ハワード(1996〜2007)・・・親日。この時第一次安倍政権と日豪同盟が事実上成立。
ケビン・ラッド(2007〜2010、2012)・・・親中。ただし反日というほどではなく、日本の親中政治家(特に福田元首相)とは親しい。
ジュリア・ギラード(2010〜2013)・・・親日。女性首相。福島第一原発事故直後来日。
トニー・アボット(2013〜2015)・・・親日。彼の時に潜水艦の導入が話題に。
マルコム・ターンブル(2015〜)・・・親中。特に中国共産党員と親類。
これを見ると政権交代いかんではまた大揺れが予想される国かもしれない。
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