カナダで開催されているファンタジア国際映画祭で今年、大島さんが女優賞を獲得したこの作品
渋谷でやっていなかったので、スルーかなと思っていたが、もう1本新宿で観たい作品があったので、思い切ってはしご。あまり期待していなかったけど、これは行って正解だった
福ちゃんこと福田辰男(大島美幸)は、ボロアパート"福福荘"に住む塗装職人。真面目でバカがつくほど人のいい福ちゃんはみんなの人気者。しかし、女性恐怖症で恋愛とは無縁の人生を送っていた。親友のシマッチ(荒川良々)が用意してくれたお見合いも福ちゃんにはありがた迷惑でしかなかった。そんなある日、福ちゃんの初恋の人であり、彼の女性恐怖症の原因にもなった杉浦千穂(水川あさみ)が福福荘に現われる。中学時代の事件のことを謝りたいという彼女の突然の訪問に困惑する福ちゃん。それでも、カメラマン修行中という千穂に頼まれ写真のモデルになってあげた福ちゃんは、いつしか彼女への恋心を再燃させていくが…。
大島さんのおっさん役がまあナチュラル
それは単に体型や坊主頭といったビジュアルだけではなくて、やりすぎず、でもちゃんと役を生きているからだと思う。どんな演技派女優だってこの役は相当ハードルが高いだろうし、例え他の誰かがやってもこんなに心を掴まれなかったと思う。大島さん、あっぱれ
今年の女優賞ノミネートを私が選べるなら、今のところ「小さいおうち」の松たかこ、「そこのみにて光輝く」の池脇千鶴、「私の男」の二階堂ふみ、「小野寺の弟・小野寺の姉」の片桐はいり、そして、この作品の大島美幸を推したい
まだ観ていない「紙の月」の宮沢りえにも期待
と、話が逸れた。笑
福ちゃんがとにかく愛おしくて、観ていてほんわかした気分になれて心地よかったなぁ。人に優しくて面倒見がよくて、とっても懐が深い。中学時代のトラウマのため、恋に奥手で不器用なところがあるけど、傷つけられた痛みを知っているから、人の気持ちがちゃんとわかるんだよね。心の狭い私は福ちゃんみたいに大らかになれたらなぁ、なんて思った
福ちゃんと関わる面々が個性的なんだけど、単なる賑やかしとしてではなくて、それぞれの事情や性格がきちんと描かれているのがよかった
福福荘の住人も大蛇と暮らす東大卒の孤独な馬淵(芹澤興人)だったり、下着泥棒の前科有の野々下(飯田あさと)だったりと癖が強いけど、そういった脇の登場人物である彼らの不安や寂しさもちゃんと伝わるよく練られた脚本
だったと思う。
笑いどころもいっぱいでまさに人情コメディの王道と言えるんじゃないかな。福ちゃんと千穂が何気に入ったカレー屋で店の主人(古舘寛治)のポリシーで水を出してくれず、大揉めするシーンとか、ありえないけどちゃんと全体に溶け込んでいて、バカバカしさと意表を突く展開に大笑い
藤田容介監督は脚本も自ら手掛けているので、今後の作品もオリジナルだったらいいなぁ、と期待
女っ気がまるでない福ちゃんを心配する親友のシマッチ(荒川良々)、シマッチの奥さん(黒川芽以)、福ちゃんのお見合い相手(山田真歩)、福ちゃんの職場の新人で夢は演歌歌手のみのる(徳永ゆうき)、大物カメラマンの沼倉(北見敏之)、千穂がたまたま入った喫茶店の女主人(真行寺君枝)とバラエティ豊かな出演陣。皆いい味出してて、絶妙なキャスティング。
特別大島さん贔屓ってわけじゃないから、割とフラットに観たつもりだけど、この大島さんは観て絶対損はないと思う。でっかい声で大笑いする姿には思わずこちらもつられちゃうし、あの笑顔のパワーも無敵だよね
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